65 入学
高校デビューという訳でも無いが、中学で苛めていた奴らじゃ入れない学校という事もあり、心機一転を狙ってのスーツ姿。
元々、服装は良識に委ねられ、特に学生服には拘らない校風と、上流階級の子息も通っているという噂もあり、チラホラと同じような服装の奴らも見かけていた。
なのでもう、スーツ姿のままで通おうって事になったのだ。
山本は学生服のほうが良いと言うので、オレとミツヤだけだけど。
と言うのも、以前の旅行で買ったスーツを使わないと、成長期で使えなくなるともったいないと、ミツヤも着用すると言うのでそうなったのだ。
京都のそれなりの店で買ったスーツなので、見てくれは悪くない。
ミツヤは知らないだろうが、これでも色々込みで1人50万は出している。
なのでそこらの量販店の吊るしなんかとは、仕立ても違うはずなのだ。
こっそり内ポケットにミラサンを忍ばせるのは、帰りの寄り道の為。
それさえ着ければそこらの幹部候補……なんて、雰囲気が無いと無理だけど。
ただならぬ雰囲気はオレが出すので、それプラスサングラスでそれなりに見てくれると……良いなと。
本来、答辞はやはり言われたが、山本に交代の話を承諾させた。
どうしても嫌なら次点の者と言われたが、3位じゃダメですかと聞いたのだ。
自分は口下手だが、その心情を汲んでくれる友に代弁という形にしたいと訴えた事で、何とか山本に決まった。
後、確かにトップ入学ではあるものの、たまたまヤマが当たっただけなので、本来の実力を遥かに凌駕した結果となり、自分も驚いている。
これからも精進はするつもりだが、恐らくテストではそこまでの点は無理だと思う。
成績が落ちたのではなく、たまたま入試が良かっただけと思ってくれと、一応は予防線を張っておいた。
下手に騒がれたり、変にライバル扱いされるのは困るので、テストではそれなりでやろうと思っているからだ。
今度はさすがに落ちこぼれは装わず、クラスでも中間ぐらいでやろうと思っている。
それを教師に色々言われるのは嫌なので、ヤマカンでの合格を仄めかしたのだ。
それがどういう結果になるかは知らんが、何とか平穏に過ごせたら良いと思っているのだが、果たしてどうなるかな。
ところが、クラス分けで変な事にいきなりなってしまった。
進学校でもかなり上位なこの学校の特色として、特待生クラスというのがある。
その年によって人数は変わるが、今年は3人しか居なかった特待生クラス。
そこに何故か送り込まれたのだ。
1-S
こんなクラス表記を見せられて、教室に行ったらオレを含めてたった3人。
どうなっているんだこの学校はと、オレは本気で転校を考えたぞ。
先生が来るまで待機と言われ、ちょっとふてくされてミラサンを着用して斜に構えていた。
「君がトップかい」
「ヤマカンだ」
「あの記述、解いたんだよね」
「まさかあれがこのクラスの? 」
「どうやらそうらしいよ。うちの兄貴もあれに引っ掛かったって言ってたし」
「解くんじゃなかったな。オレは普通で良いのに」
「その心配は要らないよ。ここではただの説明だけだ。きっとAクラスに混ざるから」
「じゃあ何で分けるんだ」
「ちょっとした優遇と言うのかな。あれは学長からの挑戦って名前らしいんだけど、そのご褒美らしいんだ」
「そんなのこっそりやってくれれば良いのに」
「クスクス、本当に目立つのが嫌いみたいだね」
「テストは中間点の予定だ」
「それはまた徹底してるね」
「そのご褒美とやら、どうなるんだ」
「この学校には寄宿舎があるのは知ってるかい? 」
「いや、知らないな」
「そこの特別の部屋が使えるようになるんだけどね」
「じゃあ関係無いな。オレは通いだから」
「使わないのかい? かなり豪華だと聞くよ」
「家のほうが気楽でいい。それに、引っ越したばかりだしな」
「じゃあその権利は放棄だね」
「それだけか」
「後は学食の特別メニューが選べるとか、模擬試験を優先的に受けられるとか、修学旅行では個別の通訳が付くとからしいね」
「全て不要だ」
「じゃあ語学も得意だったりするのかな」
「4つあれば充分だろ」
「うわぁ、それは凄いね」
「旅行では損するぞ。特にツアーに不備があったりしたら、貧乏くじになっちまう」
「え、そんな経験でも? 」
「英語の使えない通訳、もちろん日本語は分からない。ツアー客は他はカタコトが1人、となるとどうなると思う? 」
「うわ、それは災難だね」
「ツアコンがやれるぐらいに詳しくはなったが、全く楽しめなかったぞ」
「成程ね。だけど、言葉が分かるのはいいね。僕も色々学んでみようかな」
「英語と? 」
「実はイタリア語を少し」
「Si prega di diventare amici 」
「わお……喜んで」
いきなり友達が出来ちまった。
だけど頼むからもう勘弁してくれよ。
暴れないからさぁ、監視はもう止めてくれよ。
オレは平穏に過ごす事を身上にしているんだからさ、ちょっかいは出さないでくれよ。
どうして周囲にストライプが多いんだよ。




