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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中学 卒業式
61/119

61 符丁

 


 さて、あれが善なる存在と仮定して、それが望む事は何だろう。

 波乱は望まないとなると、求めるものは平穏か。

 つまり、世の中が平穏なら良いって事だよな。

 世は全て事も無く平穏であって欲しい、なんて思ってんじゃないのかな。


「ミツヤよ、お前の求める事はなんだ」

「え、いきなりなんだよ」

「山本はどうだ」

「え? 夕食の事? 」

「佳代さんどうかな」

「え? アタシはえへへへへぇ」

「オレはな、世は全て事もなく、平穏であって欲しい」


 うおおお、真っ赤に染まりやがった。

 まさかこれって合言葉か何かかよ。

 しかもあのヤバい奴とのそれだとすると、いかん、これはマズった。


「あれ、どうしたの? 2人共」

「緊急規定」

「対象拘束」


 流せ流せ……くそ、拙い……混合版の……【魔反カウンタ】はふうっ。


「まさか、返されるとはね」

「済まん、推測がヤバい筋だったようだ。他意は無いんだ」

「けど、知ってたって事だよね」

「それは分かるさ。存在開始して既に数千年だし」

「まさかそこまでとは」

「後な、特権を借りている。下の世界体験勝手、聞いた事無いか」

「うっ、そ、それは」

「ミツヤの時間、止めてんのか」

「部外者だからな」

「世界内存在だからだろ」

「そうとも言うな」

「佳代さんは仲間か」

「知ってたのね」

「腐女子を名乗るのも良いが、もうちょっと色気に反応してくれよ。そんなオシベを見るようにされてもな」

「色々甘かったみたいね」

「さっきの台詞は単に、あの人が善なる存在なら何を望むか、ってのを想像しただけだ」

「接触したのか、あの方に」

「とてつもない存在感を感じたよ。恐らく本気になったらオレは、一瞬で消滅させられるとね」

「それは合ってるな」

「ねぇ、ホントに管理潰したの? 」

「本当だ」

「何かされたからよね」

「色々とな」

「つまり、上からのちょっかいでの反撃になるのね」

「何も無いのにいきなり攻撃とかするかよ。当時、オレは管理って名前すら知らなかったんだから」

「知らしめようとして、反撃受けて消し飛んで、情報取られて散々な管理ってか」

「まあ、新米ならそんなもんでしょ」

「あれで新米かよ。倒すのに相当苦労したってのに」

「いやぁ、普通は超越者が倒すとか無理だから」

「つまりこの世界には通報者が居るんだな」

「気付けないでしょ、アタシ達より熟練だからさ」

「気付きたくない相手なら居るぞ」

「え、まさか」


「立ち位置で分かるだろ。シルフとオレの両方に関係しているのはたった1人だ。ただ、気付きたくは無いがな」

「そうか、そう言う事なら問題はあるまい。オレはこのまま潜って眠るが、お前はどうする」

「そうね、アタシも最近連続だから、ここで休暇にするわ」

「そういうのは役得になるのか」

「そうとも言えるし、保険とも言える」

「まあ、サボりみたいなものよ」

「それが許される職場か」

「興味があるなら後々ね」

「ああ、もっともっと熟練した後だな。こんなビギナーじゃ足手まといだろうし、せめて勧誘されるぐらいは力を付けんといかんだろうな」

「資格はありそうだがな」

「とにかく、あの台詞はただの推測だから、別に合言葉を知ってる訳じゃないから安心してくれ」

「いや、だから、もう遅いって」

「お前、それ、肯定してるぞ」

「あ……でも、どっちみち」

「心配無いさ。重要なら外に出す気は無い。てかこれ、ただの符丁だろ、仲間か敵かの」

「御自らお決めになられた符丁だからな、特別にして至高なのだよ」

「それであんな顕著な反応か、それは逆に貶めてないか。もっと普通に流さんと、宣伝しているのと同じだぞ」

「言われちゃったわね」

「ああ、まだ浅いか」


 こりゃまたとんでもないな。

 その成熟度たるや、そこらの人間の比じゃねぇな。

 オレみたいな半端者の言でも、簡単に認めやがる。

 こんなのがあの存在の手下なら、ますます逆らう気にならんな。


 その理由も無い訳だし。


 やれやれ、参ったな。

 この件はオレもフタをしとこう。

 そうしないと体験がますますつまらなくなる。

 斉藤さんにも普通に相対出来なくなりそうだしな。

 それは困るからフタだ。


 さて、寝るか。



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