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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中学 卒業式
60/119

60 観察

 


 結局、校門を出る前にあいつらは軒並み捕縛に至る。

 それと言うのも顧問のほうに音声が流れ、それに従って通報になったからだ。

 スイッチを切るのを忘れていたオレのミスだが、やっちまったものは仕方が無い。


 素直に諦めて帰宅した。


 しかし、帰宅しなかった者達がいる。

 それはかつて【暗示インプリント誘導ナビゲート】を食らった者達の事である。

 彼らはまさに誘導されるように繁華街に赴き、そのまま服を脱いでいく。

 男も女も同じように脱ぐので、そこらで派手な騒ぎになっていた。


 そうして始まる路上大乱交。


 ヤの付く自由業の方たちは、それに乗じて参加する始末。

 すっかり三つ巴の乱交となり、機動隊まで出動しての大捕り物になっていた。

 就職内定や進学が決まっていた者達は、軒並み取り消しとなるばかりでなく、その将来は暗い。

 気付いても自分がそんな事をやらかした記憶は無く、従って反省の色は全く見えない事になる。

 彼氏彼女の未来がどうなるかなんて、そんな事はどうでもいい。


 そもそも、もう忘れているのだから。


「たらいも」

「ここに本当に? 」

「ああ、家賃無し、家庭教師だけ」

「じゃあ、実利ってこれの事とか」

「学費とか生活費とか色々な」

「それも凄い話だね」

「あ、佳代さん、口座作れた? 」

「ネトギンね、ちゃんとあれも入会したから」

「クンカクンカしても良いからな、オレのパンツ」

「うへへへへぇ」

「コージはそういうの平気なのかよ」

「別に気にならん。たっぷり堪能してくれ」

「はぁぁ、それが最高の報酬よ」

「風呂上りはバスタオル1枚でうろつくからな、好きにスケッチでも鑑賞でもしてくれ」

「わお、やったね」

「僕も良いからね」

「あわわわ、いいねいいね」

「うぐ、オレもカマワンッ」

「ミツヤ、無理してないか、カタコトになってるぞ」

「恥ずかしくないのかよ」

「いやな、オレ、家で素っ裸で寝る事もあってな。だから取り繕ってもきっと、竿とか見られると思うんだ」

「うへへへへぇ」

「そのキモい笑いをやめろよ」

「良いさ、別に。ツラと名前を変えてくれるなら、薄い本のモデルにでも何にでもなってやるさ」

「わお、理解あるね。おねーさんは嬉しいわよ」

「ミツヤ、風呂上りに絡みのモデルやるか」

「マジかよ」

「やってやって、スケッチするから」

「晩飯が豪華ならな」

「うん、交換条件ね。バッチリ仕上げてあげるから、期待してるわよ」

「成程、そういう訳かい」

「ああ、美味い飯が食いたいなら、身体で払え」

「うんうん、この方式、大賛成。腕によりをかけてご馳走を作るからさ」

「ちなみに何もしないとお茶漬けになるぞ、ミツヤ」

「いえ、おかゆぐらいは作るわよ」

「くそぅ、やってやる、やってやるとも」

「楽しそうだね、そういうのも」

「今しかやれない事だろ。おっさんが3人とか、キモいだけだ」

「あはははは、確かにね」


 そしてこれからここで過ごす事になる。

 個室はそれぞれに決め、リビングは基本的に下着でうろつく事を推奨とする。

 つまり、オレ達が肌を露出する事で食事の待遇が良くなると。

 オレは風呂上りに何も付けずにうろうろし、早速スケッチが始まった。


「うげ、お前、パンツぐらい履けよ」

「オレは風呂上りは大抵これだぞ」

「マジかよ、しかもでけぇし」

「それは関係無いだろ。それとも使って欲しいか? 」

「いいねいいね、そーいう会話、気分出るわぁ」

「ミツヤ、風呂入れよ。何ならオレが背中洗ってやるぞ」

「1人で入る」

「出たら絡みするぞ、今夜はすき焼きらしいから」

「してくれたら国産牛肉、しないなら輸入牛肉」

「うぐぐぐ」

「オレは山本と国産を食う」

「あいつも承知したのかよ」

「肩を組むぐらいなら構わんとよ」

「それぐらいならオレも」

「そのうち、キャビアを自前で用意してもらうぞ」

「え、え、え、それってちなみに? 」

「ディープが見たいならご馳走しろ」

「うわぁぁぁぁ、ゾクゾクするわぁぁぁ」

「フルコースを作る自信があるなら、ミツヤを口でイカせてやろう」

「ゴクリ、ううううう」

「お前、もしかして男色の気が無いか? 」

「その程度の事でおたつくのか、情けねぇぞ、ミツヤ」

「しかしよ」

「オレはミツヤこそ、病み付きになりそうで怖いんだけどな」

「なるかよ、そんな事」

「ミツヤの貞操を賭けても良いが、オレはそれが心配なんだ」

「変な事を言うなよな」


 あれも恐らく違う味がするはずだ。

 だからな、それを知ってお前がどうなるかが問題なんだ。

 血液よりは難易度が低いからな、そっちに走らない保障は無いんだよ。

 オレは既に割り切ってるが、ミツヤは果たして別の種族と割り切れるか。


 山本は心配無い。


 あいつは既に割り切っている。

 そうだよな、上の存在さんよ。

 あいつは元々、あんな雰囲気じゃなかった。

 なのに最近、そうなった。

 つまり、憑依か何かをしたって事で、オレに対するアクションと思った。

 だから水を向けた結果、話に乗ってきた。

 必要があるからそうしたんだろうし、それは超越者の監視任務。


 推測ではあの敵わない相手の手先の可能性が高い。


 またぞろ管理を消されては敵わんと、監視が付いたって事だろう。

 まあ、向こうが何も言わないって事は、言って欲しくないって事でもある。

 必要が無ければオレもとぼけているし、あれば通信で何とかなる。

 手の内に入っても当たり前に過ごすって事は、それだけの腕前があるって事だ。

 そんなの相手にこちらからアプローチを掛けるのは、そりゃ無謀ってもんだ。


 更に言うなら佳代さんもちょっとな。


 腐女子って触れ込みは良いが、色が無さ過ぎるんだよな。

 いかにガキでも男の裸を見てその反応は、さすがに人間の女じゃないだろ。

 2人の間で通信でもやってんのか、たまに色が変化するんだよな。

 しかも共に黄色のマダラと来たもんだ。

 そりゃ疑惑を持つなというのが無理ってもんだ。

 表面はにこやかに、なのにオーラは黄色。

 なのに話に乗ってくるとなると、何かの思惑でしかない。


 まあこういう思考は【表層シェルフェイス】の底じゃないとバレるだろうけどな。

 仮想人格はミツヤとじゃれてるが、底ではこうやって検証をしているのさ。

 こういうのはあの星で散々やったんだし、たった150年の研鑽でもこれぐらいはやれる。


 だからあんまり舐めるなよな。



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