06 危惧
そうして登校日……
「お前、残りの夏休み、どうすんだ」
「夏期講習かな」
「おいおい、遊ぼうぜ」
「オレはお前みたいに賢くない」
「何処を狙ってんだ」
「家の近く」
「あそこ、そんなにレベル高く無いだろ」
「お前にとってはな」
「偏差値、いくつだよ」
「45だ、悪いか」
「うっく……けどよ、あそこは70だぞ」
「だから必死にやってんだろうが」
「無難なとこにして遊ぼうぜ」
「卒業したら終わりになるのと、高校でもつるむのどっちがいい?」
「はぁぁ……それを言われると辛いぜ」
「まあ、お前なら他にいくらでも友達いるだろうけど、オレには唯一の友だしな」
「他の奴? そんなの居るはずがねぇだろ」
「あれ」
「あれじゃねぇよ。オレにはお前が唯一の友なんだぞ」
ううむ、意外だ。
ミツヤって友達付き合い多いのかと思ってたけど、オレと同じだったんだな。
そう言えば、クラスの中でのあいつはオレ以外と話もろくにせず、休み時間になったらオレの席に来て放課後の事なんか話してた。
特にゲームの話になるとあいつの独壇場で、新作のネトゲがどーのこーの、ゲーセンの最新ゲームの攻略がどーのこーのと……
オレはゲームとか特に興味は無いけど、あいつとつるんでゲーセンに行き、あいつがやっているのを見るのが楽しかった。
夢中になってゲームをやり、燃え尽きた頃にジュースの差し入れ。
健闘を称えてゲームの感想。
そういう何気ない時間が楽しかったのだ。
それでもオレも何かやろうと思い、クレーンゲームでいくらか消費するのが毎回のパターンで、下手の横好きだと思われていたり……
だから景品が取れる事など滅多に無かったが、それなりに楽しめていたと思う。
3年になって進路が決まってからは付き合いも悪くなったが、それでも帰り道の道草には付き合う事にしていて、買い食い仲間としていくらか消費する日々。
1500円の小遣いの事は知っているので、1日割50円のはずが数百円だったのが不思議だったのかも知れない。
それでレース場でオレだと思ったのかな。
ああいうアルバイトだからと納得し、それの確定の為の詰問だったのかも知れないな。
だけどな……前にも思ったけど、本当に危険なんだ。
だからこそ、これは誰にも言えないオレだけの秘密。
数日後、サイトを見ていたらネットバンクなんてものを見つけた。
これはもしかして……レースの支払いとかもやれたり。
サイトを見ていると別に未成年でも構わない様子。
仮想だろうと何だろうと、やっているのは銀行業務だからか。
早速、そこに申し込みをして口座を獲得。
郵便貯金を300万にして、ネットバンクに100万投入で、手持ちは20万。
鍵の掛かる引き出しの中の20万はオレの小遣い不足分を埋める資金。
端数は財布の中……20万あれば卒業までの補填金に足りるだろう。
志望校は家の近くだが、あいつがあそこに決めたのは家が近いからじゃない。
恐らく、学校の方針のせいだろう。
放任と言うか自主性を重視すると言うか、制服すらも自由らしい。
確かに制服がありはするが、それを着て登校するのも自由であり、余りに酷い格好じゃなければ教師も何も言わないらしい。
それと言うのも芸能科があるせいで、そういうお堅い規則にしてないらしいのだ。
小さな頃から芸能界で馴染んでいる奴とか、どうしても遅刻早引け私服で登校になってしまう。
そんな場合、そいつだけの特権みたいになるからと、学園長の方針でそう決まったらしい。
そういう学校だからあいつも自由にやれると思ったんだろうな。
新設校なので余計に規則が少ないようで、あれが出来てからと言うもの、オレの目標にもなっていたんだが、偏差値を知って諦めかけていた。
だがあの能力の開発をやるにつれ、テストの回答もぼんやり見えるようになってきた。
さすがに全問だときついので、それからはその能力は使っていない。
家で問題集を解く時に、タマゴ持参で解く修行をしたぐらいだ。
だが、入試に向けてタマゴを10ケース入るような、大型の水筒を用意する事にしている。
水筒なら何を飲んでいるかとかバレないだろうし……まあ、匂い消しは必須だし、食い物も欲しいが。
腹がガボガボになるのがネックなのと、あんまり大量の場合、お腹が緩くなるのも困る。
確かに時々大量摂取でも何とかなってるが、やっぱりあんまり身体には良くないような気もするし。
第一、普通ならあれ、高脂血症の原因になるよな。
だから毎日だと命に関わると、以前にミツヤに話したのも嘘じゃないと。
どうにも言い訳っぽいけどな。