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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 3学期
58/119

58 合格

 


 私立の発表の後に県立の入試があるらしく、私立合格で受ける必要が無くなるらしい。

 なのでもうじきそれが分かるようになるとかで、クラスの奴らも戦々恐々の中にある。

 そんな中、オレ達はカンニング名人の二つ名で……


「進学校の入試もカンニングで完璧だぜ」

「おうよ、バッチリとカンニングやったぜ」

「お前ら、どんな方法でやってんだよ」

「それは言えないな。バレたら取り消しになるだろ」

「あーあ、オレも知りたいぜ」

「アンタ達、そんなのずるいわよ。訴えてやるんだから」

「方法が分からなければただの言い掛かりだ。それでも良いならやってみろよ」

「失格になって嘆いても知らないからね」

「そちらこそ、起訴になっても良いんだな」

「ふん、そんなのやれるはずがないじゃない」

「オレはそんな連絡が来たら、うちの顧問弁護士に連絡するからな」

「中二病じゃ起訴は無理よ、あははははは」


 中二病でも起訴はしたいってか。


 あれ、違ったかな、忘れたなぁ。

 まあいいや、そんな事はどうでもな。


 とにかく、そんな言い掛かりに対しては毅然とした対処をさせてもらうぞ。

 今まで散々、舐めた態度を取って来て、すっかりその気になっているようだけどな。

 オレの手抜きを本気と信じるのは良いが、別にテストを本気で解かないといけないという法律がある訳でも何でもない。

 そんなのを盾には取れないから、学生気分で好きにやればいい。

 実社会の厳しさは、出頭要請で知るがいい。


 そして私立の合格発表があり、オレとミツヤは合格になる。


 そうなるとあの女は半狂乱になり……落ちたらしい。


「覚悟しときなさいよ、訴えてやるんだから」

「トップ合格を訴えるか、大問題になるぞ」

「カンニングでトップとか、そのほうが大問題よ」

「くそぅ、オレは15位だったぜ」

「まあまあ、高校で頑張って、大学入試で再度勝負だぜ」

「ああ、今度は負けねぇぜ」

「もう大学入試の話かよ」

「そいつらはもうじき犯罪者よ。カンニングだし」

「いい気なものだ。そんな事を信じているのかい、君」

「何よ、山本君は秀才なのに、こんな奴らの事を酷いと思わないの? 」

「君は記述試験、どう解いたんだい? 」

「あれは、ちょっと、難しくて」

「青山君はどうなのかな? 」

「あれは酷いね。何かのイタズラだろ。あんなの高校の範囲だろ」

「解けたのかい」

「あはは、こいつ、大学入試で偏差値77だとよ」

「こら、ミツヤ、バラすなよ」

「もう良いだろ。卒業手前なんだしよ」

「やはりそうなんだね」

「そんなの嘘よ、カンニングなんだから」

「済まんな山本、苛め対策だ」

「それでかい、納得だよ」


 あの女は頑なに不正を信じているが、他は半々と言った感じになっている。

 まあ、あいつだけで良いか、【暗示インプリント】はよ。

 しっかりと思い込んで破滅まで突っ走れ。

 他は思い留まるみたいだし、意趣返しはお前だけにしてやろうな。

 クラスを代表して破滅するがいい。

 しかし、トップは少し拙かったな。

 面接の時に答辞の辞退を言わないと。

 あれをするぐらいなら滑り止めの県立に行くとか言ってやろ。

 その為には県立も受けないとな、クククッ。


「ミツヤ、県立、受けるぞ」

「うえっ、何でだよ」

「お前ぇぇぇ、止めろぉぉぉ」

「悪い、ちょっとした訳があってな」

「オレ、ヤバいんだから、頼む、受けないでくれ」

「答辞の辞退の切り札にしたいんだよ。だからな、辞退が無理なら県立に行くってさ」

「うっくっ、しかしな」

「僕が代わろうか? 3位だけど」

「お、ラッキー、頼むぜ」

「苦手なんだね、そういうの」

「しどろもどろになりそうで」

「あはは、意外だね。うん、僕は慣れてるから」

「小2で越して来たんでよ、幼馴染全滅だし、そういう許容は無いんだよ」

「ああそれでずっとだったんだ」

「でももういいや、義務教育も終わりだし。ここからは本気でやるさ」

「負けないよ」

「オレだって」

「オレも負けねぇぜ」

「くすくす、良いね、こういうの」

「家から通うのか? 」

「そのつもりだけど、もしかしたら下宿になるかもね」


「うちに下宿するか? 」

「お、それ良いかも」

「え、出来るのかい」

「部屋はまだ空いてるぞ」

「じゃあ親と相談してみるよ。それで家賃はどれぐらいかな」

「タダ」

「え、それはさすがに」

「てか、小遣いやら食事代は自前で揃えろよ」

「それは当たり前だけど、家賃は要らないの? 」

「それは無しだ」

「ならありがたいよ。実はそれがネックでね」

「ミツヤ、家庭教師が増えて助かったな」

「くっくっくっ、3位ならありがたいぜ」

「オレはどうにも教えるのが苦手でよ、ミツヤを頼むな」

「うん、そういう事なら喜んで」

「パッと見て、つらつらと読んで、ババッと記憶する。これで分かるか? 」

「あはは、それじゃ教えるのに向かないはずだ」

「そう思うだろ」

「うんうん、くくくく」

「でも、慣れたらこのほうが便利なんだけどな」

「あの記述の問題、どうやって解いたの? 」

「だからさ、頭の中に参考書を拵えるような感じでさ、それを見て答えを書くだけさ」

「うわ、それはまた凄いね」

「う……オレにはやれそうにねぇ」

「僕もちょっと無理かな」

「その参考書はしばらく寝かせておかないとな。まあ、授業で更新されるかも知れないけど」

「殆どパソコンの世界だね」

「ああ、そう言えばそんな感じだぜ」

「ミツヤに有線で送れる時代が来れば良いのにな」

「あはははっ、あのアニメみたいに? 」

「いいなそれ、勉強が楽になりそうだぜ」



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