56 模試
昨日、栄養補給をしたので気力充溢なオレ。
ミツヤには飴をたくさん食べるように指示をして、容器に追加で入れてやった。
瓶にも限りがあるので、100個入りのビニールの袋になっている。
そのうちあれも何か考える予定だけど、今はまだ瓶容器で何とかするつもりだ。
ポシェットみたいな容器にして、200個ぐらい保持出来れば良いんだけどね。
そういや、七つ道具みたいなのが手に入ったが、あれも色々と面白い道具だ。
カギ開けとかが特に色々あるみたいで、針金も妙に硬いピアノ線か何かのようだ。
他にも使い方も分からないような道具もあり、肥やしになるかも知れない。
後は意外と電動工具なんかも使うのな。
ドリルとか明かりとか、充電で色々やれるらしく、そういうのも買っておこうかと思える。
充電冷蔵庫とか、充電池ある限り使えるって事だから、大量に持っておけば便利かも。
まあ、生活魔法で良いけどね。
それはともかく、模試なんだけど、やはり高校の問題は簡単だった。
あれはやはり、大学入試の問題だったようで、オレが間違えただけの話だった。
ただな、模試の運営委員に【暗示】を使う羽目になったのがヤバかった。
騒ぐなよな、たかが模試で満点ぐらいで。
やれやれ、うっかり全身全霊とか、やったらヤバいな。
まあこれでも生存始めて数千年だし、当たり前と言えば当たり前なんだけどさ。
そんな事は忘れていようと。
「勝った」
「お前、ヤバいだろ」
「頑張れミツヤ」
「参ったな、逆になっちまったぜ」
「学校には内緒だぞ」
「言えるかよ、あそこの模試、かなりレベル高いのに、満点とか大騒ぎになっちまうぞ」
「事務局には口止めをした」
「止まると良いけどな」
「そこは顧問弁護士さ。漏らしたら起訴って言ってやった」
「くっくっくっ、万能だな」
「この国の奴らは裁判を嫌がるからな、それですぐに止まるさ」
「外国じゃ通じない手だな」
「だからラッキーと」
「はぁぁ、オレは必死でやらんとな」
「従姉に頼ろう」
「お前、教えてくれよ」
「すまん、オレは教えるのは苦手だ」
「ああ、天才肌ってやつか。感覚派ってやつだな」
「よく分からんが、パッと見て、つらつらと読んで、こうババッと記憶して」
「ああ、はいはい、間違いないって」
モンスター情報とか国の情報とか、毎回覚え直すうちにそうなっちまったんだ。
1つのブロックで覚えて、不要になったらそれを捨てる感覚で忘れて、新しい情報に交換するって言うかな。
歳の事とか忘れているつもりだけど、そういうのは経験になっててよ、今じゃもう当たり前にやれてんだ。
だから入試関連の情報もまとめて覚えて、不要になったら記憶の片隅に置いておくんだ。
そうしたら他の色々を覚えているうちに、自然に消えているからさ。
だからもう、かつての最初の人生の事とか、あんまり覚えてないんだよ。
親の事とか存在ぐらいしか分からんし、親戚とかサッパリ覚えてないし。
住んでた場所とかもサッパリだし、学校の名前とか全然だ。
そもそも、どんな名前の刑務所だったかなんてのすら分からないし、何処の県だったのかも分からない。
もう淡い淡い過去の記憶の欠片として、まるで他人事のようにかすかに残っているだけだ。
だからもしかしたらここがそうなのかも知れないが、そんな事はどうでもいい。
忘れてくれるならそのほうが良いからだ。
だって永久にあちこち巡って、そのたびに新鮮な体験が出来るって事だから。
早くミツヤにもこの心境になって欲しいが、これはまだまだ先の話だろう。
だから今は他の事は忘れて、今を楽しむだけだ。
多少、やりたい放題になるのは仕方が無いが、これも借り受けた特典の恩恵。
あるものは使う主義だから、遠慮はしないさ。
まあ、取り上げられたら諦めて、やるだけやって消えるのもいい。
だからあるうちに楽しめればそれでいい。
さて、親父の魔王の名前、何て言ったかな。
弟は何て名だったかな……忘れたなぁ。
「お、当たりだ、もう1本」
「お前、またかよ。とんでもねぇ勘だぜ」
「これが当たりそうだ」
「よし、寄こせ」
「あっ」
「くっくっくっ、もーらいっと」
「ちぇぇ……えーとな、うんと、そうだなぁ……よし、これだ」
「おい、お前、あんまり当たりを引くなよな」
「そんなの偶然だろ」
「いやいや、お前が買った後、だーれも当たらんと言われてんだ。この駄菓子キラーが」
「駄菓子キラーって、あははははっ」
「変な二つ名、付けるなよな」
「あはははははっ」
頼むから変なの広めるなよな。




