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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 3学期
56/119

56 模試

 


 昨日、栄養補給をしたので気力充溢なオレ。


 ミツヤには飴をたくさん食べるように指示をして、容器に追加で入れてやった。

 瓶にも限りがあるので、100個入りのビニールの袋になっている。

 そのうちあれも何か考える予定だけど、今はまだ瓶容器で何とかするつもりだ。

 ポシェットみたいな容器にして、200個ぐらい保持出来れば良いんだけどね。


 そういや、七つ道具みたいなのが手に入ったが、あれも色々と面白い道具だ。

 カギ開けとかが特に色々あるみたいで、針金も妙に硬いピアノ線か何かのようだ。

 他にも使い方も分からないような道具もあり、肥やしになるかも知れない。


 後は意外と電動工具なんかも使うのな。


 ドリルとか明かりとか、充電で色々やれるらしく、そういうのも買っておこうかと思える。

 充電冷蔵庫とか、充電池ある限り使えるって事だから、大量に持っておけば便利かも。


 まあ、生活魔法で良いけどね。


 それはともかく、模試なんだけど、やはり高校の問題は簡単だった。

 あれはやはり、大学入試の問題だったようで、オレが間違えただけの話だった。

 ただな、模試の運営委員に【暗示インプリント】を使う羽目になったのがヤバかった。


 騒ぐなよな、たかが模試で満点ぐらいで。


 やれやれ、うっかり全身全霊とか、やったらヤバいな。

 まあこれでも生存始めて数千年だし、当たり前と言えば当たり前なんだけどさ。


 そんな事は忘れていようと。


「勝った」

「お前、ヤバいだろ」

「頑張れミツヤ」

「参ったな、逆になっちまったぜ」

「学校には内緒だぞ」

「言えるかよ、あそこの模試、かなりレベル高いのに、満点とか大騒ぎになっちまうぞ」

「事務局には口止めをした」

「止まると良いけどな」

「そこは顧問弁護士さ。漏らしたら起訴って言ってやった」

「くっくっくっ、万能だな」

「この国の奴らは裁判を嫌がるからな、それですぐに止まるさ」

「外国じゃ通じない手だな」

「だからラッキーと」

「はぁぁ、オレは必死でやらんとな」

「従姉に頼ろう」

「お前、教えてくれよ」

「すまん、オレは教えるのは苦手だ」

「ああ、天才肌ってやつか。感覚派ってやつだな」

「よく分からんが、パッと見て、つらつらと読んで、こうババッと記憶して」

「ああ、はいはい、間違いないって」


 モンスター情報とか国の情報とか、毎回覚え直すうちにそうなっちまったんだ。

 1つのブロックで覚えて、不要になったらそれを捨てる感覚で忘れて、新しい情報に交換するって言うかな。

 歳の事とか忘れているつもりだけど、そういうのは経験になっててよ、今じゃもう当たり前にやれてんだ。

 だから入試関連の情報もまとめて覚えて、不要になったら記憶の片隅に置いておくんだ。

 そうしたら他の色々を覚えているうちに、自然に消えているからさ。

 だからもう、かつての最初の人生の事とか、あんまり覚えてないんだよ。

 親の事とか存在ぐらいしか分からんし、親戚とかサッパリ覚えてないし。

 住んでた場所とかもサッパリだし、学校の名前とか全然だ。

 そもそも、どんな名前の刑務所だったかなんてのすら分からないし、何処の県だったのかも分からない。

 もう淡い淡い過去の記憶の欠片として、まるで他人事のようにかすかに残っているだけだ。


 だからもしかしたらここがそうなのかも知れないが、そんな事はどうでもいい。

 忘れてくれるならそのほうが良いからだ。

 だって永久にあちこち巡って、そのたびに新鮮な体験が出来るって事だから。

 早くミツヤにもこの心境になって欲しいが、これはまだまだ先の話だろう。

 だから今は他の事は忘れて、今を楽しむだけだ。

 多少、やりたい放題になるのは仕方が無いが、これも借り受けた特典の恩恵。


 あるものは使う主義だから、遠慮はしないさ。


 まあ、取り上げられたら諦めて、やるだけやって消えるのもいい。

 だからあるうちに楽しめればそれでいい。

 さて、親父の魔王の名前、何て言ったかな。

 弟は何て名だったかな……忘れたなぁ。


「お、当たりだ、もう1本」

「お前、またかよ。とんでもねぇ勘だぜ」

「これが当たりそうだ」

「よし、寄こせ」

「あっ」

「くっくっくっ、もーらいっと」

「ちぇぇ……えーとな、うんと、そうだなぁ……よし、これだ」

「おい、お前、あんまり当たりを引くなよな」

「そんなの偶然だろ」

「いやいや、お前が買った後、だーれも当たらんと言われてんだ。この駄菓子キラーが」

「駄菓子キラーって、あははははっ」

「変な二つ名、付けるなよな」

「あはははははっ」


 頼むから変なの広めるなよな。



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