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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 3学期
54/119

54 引越

 


 冬休みも終わり、始業式の数日後、いきなりテストが始まる。

 オレはまたしてもカンニング宣言をやり、学年1桁の賭けになる。

 オレはともかくミツヤの宣言に、やっぱり今までやってたんだろうと言われている。

 そこでミツヤはオレに教えたんだと吹聴し、オレもそれに乗って2人でワンツーフィニッシュをやるんだと息巻いている。

 さすがにそこまで言われると、告げ口外交が始まる訳だけど、教師は舞台裏を知っている訳で、話は受け付けても先には進まない。


 そもそも冷静に考えて、学年1位とか、誰の答案を見れば可能だと思うのか。

 そんな奴が居るのなら、そいつこそが学年1位のはずだろうに。

 だからそっくり真似ても精々、トップタイになるだけだろうから、単独トップにはなり得ない。

 だけどオレ達に答案を見せるなと言うのが合言葉のようにクラスに浸透し、見られたら罰金とまで言い出した。

 ミツヤも経験をした事で少し成熟したのか、クラスを外から見るような感じになっている。


 やはり大阪の夜の出来事は、ミツヤの成長に貢献したようだ。


 後は進学の家からの支援と、家から独立した暮らしの事、それら色々な未来への希望が余裕となり、変なプライドが消えた為だろう。

 何を言われてもサラリと流すようになっていて、言うほうも肩透かしを食らっているようだ。

 まあなぁ、このクラスで経験者ってそう多くは無かろうし、まさかミツヤが既にとは思っても無かろう。

 金銭的にもいきなり余裕になったし……実はミツヤにも都市銀口座を開設させ、オレの口座から少し流す事になったのだ。

 同じデビットカードになるはずで、必要はそれから購入って事になる。

 本当はネトギンに流そうかと思ったが、それは進学後の楽しみにしてある。

 だからそれも意欲になっているようで、オレも負けてはいられない。


「受かれば10億、即時振込みだ」

「うほー、燃えるぜぇぇ」

「地味にするならいくらでも振り込むさ」

「ああ、ガッコでは地味に、家では派手に、だろ」

「染まるなよ」

「金は道具ってか、ああ、肝に銘じるぜ」

「学生マンションと言っても、2部屋とリビング付きのにするぞ」

「それって普通のマンションじゃね? 」

「石田から家政婦とか来させられないか? 」

「分家なら可能だろうけど、3男で来てくれるかどうかはちょっとな」

「言ってみろよ、ダメ元だ」

「お前、もしかして親父に何かやったのか」

「うちの関連だ。お袋の旧姓、実は石田だ」

「マジかよっ」

「だから従弟だな、クククッ」

「そんなの知らなかったぜ」

「オレも最近知った」

「何だよ、転校生だから無関係だと思ってたのに」

「孫悟空だな、クククッ」

「くそぅ、釈迦の手の平かよ、参ったな」

「何ならよ、分家の貧乏学生誘致して、家事の代わりに学費支援とかやれるぞ」

「それならな、従姉に聞いてみるぜ。実はオレに勉強教えてくれてる人なんだけどよ、やっぱり家からの支援が無くてきつそうでよ」

「お、お前の彼女か」

「いや、そこまでの事もねぇんだけどよ、まあ、好意は持ってるさ」

「頼むからあんまりイチャラブはしてくれるなよ」

「するかよっ、そんな事。てかあいつ、腐女子だからな、好みはちょっと合わねぇのさ」

「もしかして、オレ達の事を想像して楽しむ手合いか」

「お前、その手の知識もあるのかよ」

「あれだろ、タチとかネコとか」

「マジかよっ」


 そういや遺跡の資料……あれ、翻訳したら受けるかも。

 あったよな、変な小話集とか。

 当時はゴミになるかも知れないと、【倉庫マジックボックス】の肥やしのつもりでそのままだけど、あれを出しても良いかもな。


「趣味じゃないが、知識はあるぞ。なんせ図書館のヌシだ」

「だからな、想像だけに留めさせるから、何とか助けてやってくれよ」

「名前を変えるなら別に、薄い本にしても構わんぞ」

「ああ、喜ぶだろうな、そういうの聞くと」

「そうか、やはり即売会のメンバーか」

「年に2回は大騒ぎしているさ。オレは付いていけないが」

「そう言う事ならもう少しでかいマンションにするか。時期になったら集まれる場所の提供も面白そうだし」

「とんでもなく大騒ぎになるんだぞ。本当に良いのか? 」

「オレとお前の個室の他に、そいつの部屋とリビングと、ダイニングを足して風呂も豪華に部屋も余裕を持たせて」

「なんか億ションになりそうだけどよ」

「よーし、親父に買わせよう。50億ぐらいの豪華なマンション」

「そういうのを聞くと、まるで親が金持ちみたいだよな」

「ある物は使わんとな。稼ぐだけ得意でアパート住まいってのも侘しいだろ」

「ああそれは侘しいな。預金が大量にあって貧乏暮らしとか、金の亡者みたいだし」

「うげぇ、使う、使うぞ」

「くっくっくっ」


 そんな訳で親に打診して、豪華なマンションの購入に切り替える。

 親父もそう言う事ならと、同じマンションの別階に住まう事にするそうで、どうにも近いのが便利なのかどうなのか。

 親達は5階でオレ達は1階の広いスペースを確保。

 5階は5億だが、1階は45億だそうで、本当に合わせて50億のマンションになった。

 申告系は全て顧問に任せるとして、手続きは速やかに進み、引越しも順調に進んでいる。

 後は合格するだけだけど、落ちたら県立のほうになりそうで、そうなっても関連への抑えは可能だとミツヤには話している。


 どちらにしても県内は確定のようで、親も近くの高校に安心しているようだ。


 それと言うのもオレの偏差値45は苛め対策だと話し、期末の結果を見せた事で変わったのだ。

 推奨83の進学校を目標とし、滑り止めを70の県立にする事で話はまとまり、今はその方針の元、勉学に励んでいる事になっている。

 分家の従姉との話は事の外、大歓迎されたらしく、そちらも引っ越しの準備が始まっているとか。

 そうして時期の騒ぎの集まりも可能って事で、家事全般は任せても良いらしい。

 料理が得意でお菓子作りもやるとかで、台所用品もあれこれ購入する事になりそうだ。

 異性という事でうちの親が少し気にしたが、同じ石田の従姉という話を聞いてそれも収まった。


 親戚の子達なら安心と思ってのことだろう。


 実は1階には個室が5つあり、オレとミツヤとその従姉……石田佳代子さんと言うのだが……彼女の部屋となる。

 なので後2部屋あるので、他にも貧乏学生が居たら誘致の予定だ。

 どうにも分家に他にも居そうで、その従姉のほうからあちこちに打診するらしい。

 親戚なら特に問題は無いと言ってあるので、それも一助になるなら余計にちょっかいも消えるだろうと思っての事だ。

 シナリオ関連に絡まず、その近くで平穏に暮らす為には、そういうサポートのような立ち位置が恐らく理想のはずだ。

 金銭面とその他大勢の支援をしてやれば、あちらはシナリオに専念出来る訳だし、ギブアンドテイクでやっていけるだろう。

 ただな、あんまり騒ぐのは困るから、その点だけ控え目にしてもらわんとな。


 まあ、その時は他に避難すれば良いだけだが。


 なので一計を案じ、セーフハウスを作る事にした。

 知るのは顧問の斉藤さんだけにして、彼の名義でマンションの1部屋。

 小さなマンションの1室を、購入だけどあくまでも彼の持ち物って立ち位置で、オレは使用者って事にする。

 その代わり、彼はマンションノータッチとなり、オレだけのプライベイトスペース……つまり、ビジネス関連はそこで専門にやると。

 それなら資金管理も楽だからと、彼も好都合らしい。

 この場合、オレが4階、彼が2階になる。

 つまり同じマンションの階数違いになる訳だ。

 そこで追加で1000億での生涯契約にと無理に言い、何とか承諾に至る。

 どうせ石田関連との調整もあるだろうし、何かと忙しくなると思うからだ。


「しかしの、次のも既にやっておるとはの」

「もうあれで株から手は引くからさ」

「そのほうがありがたいの。あれらも毎回騒動になるじゃろうし」

「ミツヤの従姉が成人だからさ、名義借りて公営賭博にするよ」

「それも程々にの」

「いやさ、金回りの説明が要るだろ。これこれこういう才能だからこんな暮らしになったんですって説明が」

「成程の、それならば納得するじゃろうの」

「ブログサイトも開催してさ、虚実織り交ぜて不定期更新の予定さ」

「それとなく知らしめる訳じゃの」

「それの抑えも頼むよ」

「じゃからの1000億かの」

「足りない? 」

「充分じゃて」

「とにかくさ、兆の単位はそちらに任せるからさ、あちらが困るようなら随時渡しても良いからさ」

「惜しくは無いのかの」

「回転寿司の皿さ、いくらでも来るのに独り占めする意味、無いよね」

「面白い例えじゃの」

「欲しいなら稼ぐだけさ。てかその過程が面白くてさ、結果はどうでも良いんだよ」

「それでかの」

「だから困って相談に行ったんだ。税金とか無ければ放置の予定だったし」

「稀有じゃの」

「のんびり暮らすのに兆の単位とか必要無いし」

「そう言う事ならそれなりにやっておくのでな、何も心配は要らぬぞぃ」

「頼むね」

「うむ」



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