52 入院
「うお、お前、気が付いたか」
「何でオレ、こんなところに居るんだ」
「お前、寝たままでよ、起きなくて救急車を呼んでよ」
「熟睡してただけだ」
「検査でも意識が無いって言われててよ、オレはもう心配で心配で」
「済まんな、よし、退院だ」
「待てよ、もっとしっかり検査してもらったほうが良いぞ」
「問題無いさ。さあ、帰るぞ」
失敗したなぁ……面白いからひたすらやってたら、2日が過ぎていたらしい。
慌てて戻ったら入院中って……参ったなぁ。
マグロ12枠、カツオ15枠、シマアジ8枠……絶対誰にも言えないぞ。
てか、漁師さんごめん……獲れないとか言われそうで。
近海に居た3種の魚達はあらかた【倉庫】に入ったんだ。
だから悪いけど、遠洋漁業で何とかしてくれ。
そんなこんなで入院費用を支払っていると、母親とバッタリ。
心配して引きとめるけど単に留守にしてただけなので、もう平気だと言って何とか納得させて一緒に帰る事になる。
「あれ、支払いは? 」
「もう払ったよ」
「あんた、お金持ってたの? 」
「カード払い」
「それはそうと、本当に大丈夫なの? アンタ、小さい頃の事、思い出したわよ」
「その事なんだけどさ、オレ、何かの体質になってないか? 」
「えっ……それはね、そのね」
やれやれ、オレとミツヤ、両方に関連する事故かよ。
こりゃこっちの親も関係者の可能性が高いな。
ただし、雰囲気は違う。
となると使われている存在って事になるな。
「石田さんの関連での事故なんじゃないの? 」
「え、もしかして、聞いたの? 」
「ミツヤも変な体質になっているみたいだし」
「それで、あれはどうしてるの? 」
「生卵の大量摂取」
「それでやれるのね」
「後は面白い飴を見つけてさ、あれで何とかなってるよ」
「そんな飴があるのね」
「高いけど材料は知らない。だけどいけるから使ってる」
「それで問題は無いのね」
「だから今は元気だろ」
「それなら良いのよ。ホントにもう、あれはどうなるかと思って」
「小さい頃に飲んでた薬って、石田さん関連なのね」
「実はそうなのよ。だけどね、あれも安くはないから、10才からはくれなくなってね」
つまり、知ってて放置してたって事のようだが、それを息子に教えないってのもおかしな話だよな。
確かに普通ならおいそれとは言えない話だけど、それならそれでその対策とかも聞いてしかるべきだろう。
それもしないって事は、もしかして……それにしても、血液製剤か何かなんだろうけど、そんな事になってたとはな。
「ああそれでさ、親父の名義で分譲マンション、買う手筈整えてくれない? 」
「えっ、それって」
「金は出すからさ」
「そんなに儲けたの? 」
「仕事も道楽気分で良いからさ、儲けとか考えずに気楽にやってよ」
「本当にそれで良いの? 」
「余裕余裕」
「なら、お父さんにも話すわよ」
「融資10億って言っといてくれる? 」
「え……」
「あれ、100億のほうが良かった? クククッ」
「はぁぁ、もうどれだけよ。母さん、理解が追い付かないわよ」
「とにかくさ、店の近くで分譲マンション買って、店は道楽気分で良いからさ」
「アンタから話してくれる? 母さんじゃ自信無いわ」
「今、家に? 」
「旅行終わって帰ったら、アンタが入院って聞いて、今ちょっとバタバタしててね」
「店はしばらく閉めたままで、まずは引越しからだね」
「本当に良いのね」
「旅行どうだった? 」
「楽しかったわ、ありがとうね」
「引っ越したいぐらいじゃなかった? 」
「ああ言うのはたまにだから良いのよ。住むとなると色々大変そうだし」
「それで、石田さんの仕事が、父さんの元の職場になるのかな」
「うん、だからね、あっちは籍が抜けたけど、やっぱり時々呼ばれるみたいでね、だから店も巧くいかなくてね」
「どうしてそこまで尽くすんだよ」
「母さんの旧姓は石田なのよ」
「はぁぁ、それでかよ」
「ミツヤ君とは従弟同士になるのかな」
なんか色々とヤバかったな。
妙に絡んでいるじゃねぇかよ。
オレが入院でこんな話にしなかったら、ずっと関連のままかよ。
どのみち50億でミツヤは切れたし、後は親も抜くか。
追加でいくらか渡してやるから、両親関連も抜くんだぞ。
裏の仕事かも知れんが、そんなのやらせる訳にもいかん。
どうしても無理ならオレが別の存在……【人造】をやってやらぁ。
そうして親父とも話した結果、やはり時々仕事を頼まれていたらしく、それが無くなれば黒字も可能らしい。
何か知らんが、費用自前でタダ働きとか、とんでもない事になっていたようで、職場でも安月給で色々使われていたらしい。
ファンシーショップってのは表向きで、実際はちょっとヤバい仕事らしく、詳しくは教えてくれなかった。
だから恐らく仕手の関連なんじゃないかと思っている。
オレの中抜きがあちこちに波及したようで、大っぴらには言えないが、迷惑を掛けたようだ。
だけどあっちは非合法、こっちは合法。悪いのはどちらだよって話だ。
なので再度乗り込んで談判開始となる。
「え、まだ何か? 」
「うちの親も抜いてくれ」
「いや、しかしあれは」
「口座を教えろ、振り込んでやる」
「それは助かりますが、かなりですよ」
「5000億でいいか」
「な……そんなに」
「それで切れるか」
「はい、それだけあれば切れても問題ありません」
「よし、なら後で振り込むから、うち関連を切れ」
「分かりました」
後はあれの確認しとくか。
「お前ら、仕手やってんだろ」
「そ、それは」
「この前の仕手、お前らだな。つまり、石田はシルフの関連か」
「どうしてそこまで、関係はしないはずじゃ」
「京都で言われたんだ。中抜き半分寄こせってよ」
「え……じゃああの中抜きの犯人はっ」
「あのな、仕手は非合法、中抜きは合法だ。それを犯人? ふざけてんじゃねぇぞ、コラ」
「済みません、つい」
「まあ、オレもさすがに26兆もの稼ぎになるとは思わなかったけどな」
「う……酷い、そんなにも」
「あらかた国債だ。欲しいならうちの顧問弁護士と相談して、そっちに渡すから困るなら言え」
「それは誰でしょう」
「斉藤弁護士って知ってるか」
「え、それ、うちの顧問ですけど」
「おっかしいな、じゃあ、聞いてみてくれ。中抜きの犯人と契約してないかって」
「分かりました」
ううむ、斉藤さん、石田相手にとぼけていたのかな。
なんか悪かったな、板挟みみたいにさせて。
そう言う事ならそっくり渡しても良いから、好きなように処分させるか。
どのみちシナリオ関連に使うなら、いくらあっても構わんのだろうし、オレはそんな大金どうでもいいし。
あれ、電話、誰からだ……あ、斉藤さんか。
【もしもし、青山です……石田にバレたのかの……いや、うちの母さんの旧姓が石田……ううむ、そのような事になっておったとはの……親父が関連に邪魔されて、店が赤字で困ってて、だから国債の金、渡して良いからうちと切らせようかと……そうさの、それならの、いくらか渡せばいけるじゃろう……かなり苦しいのかな……あれが派手に響いたらしくての……板挟みごめんね……なんの、おぬしのほうは合法じゃからの、優先は当たり前じゃ……5兆いけるかな……そこまでは必要あるまいが、後々の影響力にはなろうの……手出しは困るから多く出して抑えたい……なればそうしとこうぞ……後は良いね……うむ、任せるが良い……ありがと、んじゃ……うむ】
これで確実に止まるだろう。
(え、5兆……あやつの好意じゃからの、くれぐれも手を出すでないぞ……はい、そんなにもらえるならもう2度と手は出しませんよ……ほんにのぅ、余りに裏に染めるでないぞ……はい、どうにも苦しくてつい……西のほうも止めるんじゃぞ、裏ばかりでは庇えるものも庇えぬ。良いな……分かりました)
(これでワシの顧問料もまともに受けられようの。あれで補填したからさすがにきつかったぞぃ……それにしても、実に金離れが良いのぅ。ほんに好ましいぐらいじゃが、後々が楽しみな人材でもある。さての、後々どうなるかじゃが、そのままで伸びるのじゃぞ)




