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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 冬休み
52/119

52 入院

 


「うお、お前、気が付いたか」

「何でオレ、こんなところに居るんだ」

「お前、寝たままでよ、起きなくて救急車を呼んでよ」

「熟睡してただけだ」

「検査でも意識が無いって言われててよ、オレはもう心配で心配で」

「済まんな、よし、退院だ」

「待てよ、もっとしっかり検査してもらったほうが良いぞ」

「問題無いさ。さあ、帰るぞ」


 失敗したなぁ……面白いからひたすらやってたら、2日が過ぎていたらしい。

 慌てて戻ったら入院中って……参ったなぁ。

 マグロ12枠、カツオ15枠、シマアジ8枠……絶対誰にも言えないぞ。

 てか、漁師さんごめん……獲れないとか言われそうで。

 近海に居た3種の魚達はあらかた【倉庫マジックボックス】に入ったんだ。


 だから悪いけど、遠洋漁業で何とかしてくれ。


 そんなこんなで入院費用を支払っていると、母親とバッタリ。

 心配して引きとめるけど単に留守にしてただけなので、もう平気だと言って何とか納得させて一緒に帰る事になる。


「あれ、支払いは? 」

「もう払ったよ」

「あんた、お金持ってたの? 」

「カード払い」

「それはそうと、本当に大丈夫なの? アンタ、小さい頃の事、思い出したわよ」

「その事なんだけどさ、オレ、何かの体質になってないか? 」

「えっ……それはね、そのね」


 やれやれ、オレとミツヤ、両方に関連する事故かよ。

 こりゃこっちの親も関係者の可能性が高いな。

 ただし、雰囲気は違う。

 となると使われている存在って事になるな。


「石田さんの関連での事故なんじゃないの? 」

「え、もしかして、聞いたの? 」

「ミツヤも変な体質になっているみたいだし」

「それで、あれはどうしてるの? 」

「生卵の大量摂取」

「それでやれるのね」

「後は面白い飴を見つけてさ、あれで何とかなってるよ」

「そんな飴があるのね」

「高いけど材料は知らない。だけどいけるから使ってる」

「それで問題は無いのね」

「だから今は元気だろ」

「それなら良いのよ。ホントにもう、あれはどうなるかと思って」

「小さい頃に飲んでた薬って、石田さん関連なのね」

「実はそうなのよ。だけどね、あれも安くはないから、10才からはくれなくなってね」


 つまり、知ってて放置してたって事のようだが、それを息子に教えないってのもおかしな話だよな。

 確かに普通ならおいそれとは言えない話だけど、それならそれでその対策とかも聞いてしかるべきだろう。

 それもしないって事は、もしかして……それにしても、血液製剤か何かなんだろうけど、そんな事になってたとはな。


「ああそれでさ、親父の名義で分譲マンション、買う手筈整えてくれない? 」

「えっ、それって」

「金は出すからさ」

「そんなに儲けたの? 」

「仕事も道楽気分で良いからさ、儲けとか考えずに気楽にやってよ」

「本当にそれで良いの? 」

「余裕余裕」

「なら、お父さんにも話すわよ」

「融資10億って言っといてくれる? 」

「え……」

「あれ、100億のほうが良かった? クククッ」

「はぁぁ、もうどれだけよ。母さん、理解が追い付かないわよ」

「とにかくさ、店の近くで分譲マンション買って、店は道楽気分で良いからさ」

「アンタから話してくれる? 母さんじゃ自信無いわ」

「今、家に? 」

「旅行終わって帰ったら、アンタが入院って聞いて、今ちょっとバタバタしててね」

「店はしばらく閉めたままで、まずは引越しからだね」

「本当に良いのね」

「旅行どうだった? 」

「楽しかったわ、ありがとうね」

「引っ越したいぐらいじゃなかった? 」

「ああ言うのはたまにだから良いのよ。住むとなると色々大変そうだし」

「それで、石田さんの仕事が、父さんの元の職場になるのかな」

「うん、だからね、あっちは籍が抜けたけど、やっぱり時々呼ばれるみたいでね、だから店も巧くいかなくてね」

「どうしてそこまで尽くすんだよ」

「母さんの旧姓は石田なのよ」

「はぁぁ、それでかよ」

「ミツヤ君とは従弟同士になるのかな」


 なんか色々とヤバかったな。


 妙に絡んでいるじゃねぇかよ。

 オレが入院でこんな話にしなかったら、ずっと関連のままかよ。

 どのみち50億でミツヤは切れたし、後は親も抜くか。

 追加でいくらか渡してやるから、両親関連も抜くんだぞ。

 裏の仕事かも知れんが、そんなのやらせる訳にもいかん。

 どうしても無理ならオレが別の存在……【人造ヒューマンクリエイト】をやってやらぁ。


 そうして親父とも話した結果、やはり時々仕事を頼まれていたらしく、それが無くなれば黒字も可能らしい。

 何か知らんが、費用自前でタダ働きとか、とんでもない事になっていたようで、職場でも安月給で色々使われていたらしい。

 ファンシーショップってのは表向きで、実際はちょっとヤバい仕事らしく、詳しくは教えてくれなかった。

 だから恐らく仕手の関連なんじゃないかと思っている。

 オレの中抜きがあちこちに波及したようで、大っぴらには言えないが、迷惑を掛けたようだ。

 だけどあっちは非合法、こっちは合法。悪いのはどちらだよって話だ。


 なので再度乗り込んで談判開始となる。


「え、まだ何か? 」

「うちの親も抜いてくれ」

「いや、しかしあれは」

「口座を教えろ、振り込んでやる」

「それは助かりますが、かなりですよ」

「5000億でいいか」

「な……そんなに」

「それで切れるか」

「はい、それだけあれば切れても問題ありません」

「よし、なら後で振り込むから、うち関連を切れ」

「分かりました」


 後はあれの確認しとくか。


「お前ら、仕手やってんだろ」

「そ、それは」

「この前の仕手、お前らだな。つまり、石田はシルフの関連か」

「どうしてそこまで、関係はしないはずじゃ」

「京都で言われたんだ。中抜き半分寄こせってよ」

「え……じゃああの中抜きの犯人はっ」

「あのな、仕手は非合法、中抜きは合法だ。それを犯人? ふざけてんじゃねぇぞ、コラ」

「済みません、つい」

「まあ、オレもさすがに26兆もの稼ぎになるとは思わなかったけどな」

「う……酷い、そんなにも」

「あらかた国債だ。欲しいならうちの顧問弁護士と相談して、そっちに渡すから困るなら言え」

「それは誰でしょう」

「斉藤弁護士って知ってるか」

「え、それ、うちの顧問ですけど」

「おっかしいな、じゃあ、聞いてみてくれ。中抜きの犯人と契約してないかって」

「分かりました」


 ううむ、斉藤さん、石田相手にとぼけていたのかな。

 なんか悪かったな、板挟みみたいにさせて。

 そう言う事ならそっくり渡しても良いから、好きなように処分させるか。

 どのみちシナリオ関連に使うなら、いくらあっても構わんのだろうし、オレはそんな大金どうでもいいし。


 あれ、電話、誰からだ……あ、斉藤さんか。


【もしもし、青山です……石田にバレたのかの……いや、うちの母さんの旧姓が石田……ううむ、そのような事になっておったとはの……親父が関連に邪魔されて、店が赤字で困ってて、だから国債の金、渡して良いからうちと切らせようかと……そうさの、それならの、いくらか渡せばいけるじゃろう……かなり苦しいのかな……あれが派手に響いたらしくての……板挟みごめんね……なんの、おぬしのほうは合法じゃからの、優先は当たり前じゃ……5兆いけるかな……そこまでは必要あるまいが、後々の影響力にはなろうの……手出しは困るから多く出して抑えたい……なればそうしとこうぞ……後は良いね……うむ、任せるが良い……ありがと、んじゃ……うむ】


 これで確実に止まるだろう。


(え、5兆……あやつの好意じゃからの、くれぐれも手を出すでないぞ……はい、そんなにもらえるならもう2度と手は出しませんよ……ほんにのぅ、余りに裏に染めるでないぞ……はい、どうにも苦しくてつい……西のほうも止めるんじゃぞ、裏ばかりでは庇えるものも庇えぬ。良いな……分かりました)


(これでワシの顧問料もまともに受けられようの。あれで補填したからさすがにきつかったぞぃ……それにしても、実に金離れが良いのぅ。ほんに好ましいぐらいじゃが、後々が楽しみな人材でもある。さての、後々どうなるかじゃが、そのままで伸びるのじゃぞ)



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