51 遊泳
どうやら模試は1月下旬にあるらしく、ミツヤは申し込みをネットでやるとか。
オレのPCでやってくれるらしく、部屋であれこれと……うげ、それを開くんじゃない。
「これ、暗証番号、何番だよ」
「それを開くな」
「くっくっくっ、お前も好きだな」
「違う、そういうやつじゃない」
「だったら良いだろ」
「仕事の関係だ」
「興味あるな」
「今は模試だろ、ほれ、申し込みしてくれ」
「ネットバンクあるんだろ、振込みそれで良いよな」
「えっとな、バンク関連は、こっちのこれだ。で、ナンバーは5963、ご苦労さんだ」
「安易だな、くっくっくっ……うお、お前、5社も入ってんのかよ」
「えとな、これだこれ、他は開くな」
「きっと他は大金が、くっくっくっ」
「食指を伸ばすな。仕事の金だぞ」
「うおお、お前、これ、23億も入ってるじゃねぇかよ」
「良いから振込みしろ」
「他のバンクが気になるぜ」
「振込みはこの口座で全てまかなう。他はビジネス関連だ」
「本当にリッチにやってんだな」
「だから気にするなと言っただろ」
「ああ、そうするさ……よし、これでいい」
「よし、後はこの端数を振り込み予約……と」
「何処に送るんだ」
「プライベイトの都市銀口座」
「端数と言ってもお前、9000万って端数じゃないだろ」
「よし、これでまた色々と買物が、クククッ」
「なんかよぅ、金銭感覚が変わりそうだぜ」
「変えるな、目立つ」
「お、おう」
それで発覚してヤバくなるんだから、頼むから変えてくれるなよ。
確かにオレも色々買ってはいるが、ちゃんと【暗示】で消している。
そういうのがやれるのならいくらでも荒くていいが、やれない以上は目立つからな。
確かにオレが毎回消してやっても良いが、それには裏事情を説明する必要がある。
だけど、まだそういうのが話せない以上、自力でやってもらうしかない。
今までそんなものを使った形跡が無いって事は使えないって事だろうから、荒くなれば目立つって事になる。
まあ、一端だけ見せたけど、ちょいと反応がでかいな。
どうすっかな……ビジネス見せたらヤバそうなんだが、株式投機、見せるの止めたほうが良いのかな。
せめて、もう少し……成人までか? 頼むぞ、変わってくれるなよ。
「それはそうと、三学期のテスト、競争するか」
「おっしゃ、負けねぇぜ」
「またカンニング作戦とか言って、1位を目指す」
「オレもそれ言っとこう。あれ、騒ぎ対策だろ」
「おうよ、あれでうやむやになるだろ」
「それでかよ、他の奴ら、センコーにバレないカンニングの方法をやってると思ってるぜ」
「そう思わせておけばいいさ、卒業するまでな」
「よし、オレもその作戦に乗った」
そんな訳で、オレとミツヤは表向き、カンニングをすると宣言する事になる。
そんなのを勝手に信じるのは自由だが、下手に告げ口すると起訴の対象になるだけだ。
名誉毀損ってな、それも範疇だろうし、訓戒ぐらいなら頼めばしてくれるはずだし、そうなりゃそいつの家での信用が無くなると。
そこで逆恨みで動くなら、入試どころじゃなくなってオレの獲物になっちま……げふんげふん。
いや、受験生が減って倍率が……はふうっ。
すぐにそっちのほうに発想が向いちまうって事は、やっぱりオレ、戦いに飢えているような気がしてならないな。
困ったな、さすがに西にはもう行かない事になっているし、平穏に過ごすならそんなヤバい話は拙いとなると国外で暴れて来るって手もあるけど、それも何だよな。
いくら国外でもあんまり猟奇殺人はヤバいし、となると【倉庫】に入れておくしかない。
ううむ、どうすっかな。
いっその事、東のでかい大陸で暴れるって手もありはするが、丸い星での東の確約なんだし、ずっと行けば大阪も東だし、いざとなれば、クククッ。
そうだなぁ……このままだとそのうち爆発しそうだし、ちょっと軽く暴れて来るかな。
以前使った忍者服、あれを活用するか。
ジャパニーズニンジャとか言われるかな?
ミツヤはゲーセンに行くと言って家を出る。
オレは眠いからとパスしてベッドの中。
忍者服と思ったけど、精神体で行く事にした。
あれも慣れないといけないし、現地で別の身体を使えば良いと。
そこで思ったのが元の身体。
あれなら銀髪に紅眼だし、日本人とは思われまい。
ついでにドイツ語を喋ってれば、北欧関連だと思われるかな。
さすがにトランシルヴァニアの言語とか知らないし、あれはそもそも黒海の近くの国だ。
トルコ語もまだまだ取っ掛かりすらやってないし、今のメインはイタリア語だ。
でもそのうちルーマニアの言語もやってみたいものだな。
そうしたら吸血鬼ごっこもやれるように、クククッ。
そんな訳で、オレは精神体で移動を開始した。
意志のままにいくらでも速く移動出来るし、風の抵抗も皆無だし。
これ、意外と便利だな。
しっかし、ひたすら海ばかりと言うのも退屈だな。
あれ、これ、もしかして海中もいけるのか。
お、お、お、行ける行ける……面白ぇぇ……高速海中遊泳だな。
うひょ~こりゃいいや。
高速で泳ぐ魚を追い抜く気分最高だぜ。
てかこれ、つまみ食いがやれたりして。
あ、失速した……そうだよな、魚の命を食えば死ぬよな。
あーあ、あの魚、いきなり死んじまったな。
よし、【倉庫】に入れとこう。
後で食えるかも知れないし。
精神体で命食いながら漁業とか、癖になりそうで怖いな。
待てよ、人間相手より面白いかも。
第一、これなら騒ぎにはならないって事だしな。
食えそうな魚なら、料亭持込とかで……良いかも。
魚には悪いが、ここはオレの在庫になってくれ。
マグロは何処だぁぁぁ……
そんな訳で、予定はいきなり変更になり、マグロを求めて海中をうろつく事になる。
これってもしかして……【解体】して【倉庫】うほー、これ、便利かも。
でも、命を食うならやっぱり……【枯渇】して【吸収】だよな。
てことで、それしてバラしてって事なら……決まりだな。
けどこれ、今の気分には合わないと言うか、やっぱり先に狩るか。
【解体】はまた後で良いや。
マグロもえらい災難で、群れがいきなり消える訳だ。
やっているうちに、他の魚も狩るようになり、かつてやっていた手法を思い出す。
狩りの対象は違っても、やっている事は似たような事で、それが陸か海かの違いで命を消す行為は同じだ。
そんな訳で、近海に居たマグロとカツオとシマアジいう名前の魚は、漁師に獲られる前にかなり姿を消した。
そして夢中になってふと気付くと、身体がヤバい事に……




