50 新年
新年2日、オレとミツヤは今、オレの家でのんびりしている。
それと言うのも家での正月は辛気臭いと、ミツヤが嫌がったからだ。
どうやら上の兄達から色々言われるようで、そういうのが毎年だったらしい。
本当は中卒で仕事をしろと言われていたらしく、だから成績が良くても進学の支援は期待出来なかったとか。
まあ、どうにも資金ショートのようだし、資金対策に投入されるのがオチだったろうから、オレの金で止まったってとこだろう。
もしかしたら、あの仕手に絡んでいたのかも知れんが、そんなのは知るかよ。
だからまた困る事になるかも知れんが、いくらでも金を出して恩は着せてやる。
だから手は出すなよ。
それでも出すなら諦めてくれ。
オレも嫌いじゃないばかりか、好きな方向に……はぁぁ、はいはい、好物ですとも。
全く、とんだ人格破綻と認めるが、仕方が無いだろ、もうかれこれ長いんだし。
これもフタの予定だけど、思い返すと年寄り気分になるから嫌なんだ。
ああ、忘れた忘れた。
「盗んだカードで金を出すぅぅ……行き先は遊園地ぃぃ」
「なんちゅう替え歌や」
「くっくっくっ」
「行き先は監獄やろ」
「いやな、前に誰かが歌ってたんだ」
「もしかして、最後には銃が欲しいって歌か」
「お前も聞いたんだな」
「銃が欲しいかそらやるぞ、みんなで楽しく撃ちに来い」
「ハトかよ」
「トカレフならたくさん」
「嘘だろ」
「そこらの事務所にあるだろうな」
「びっくりしたぜ」
【倉庫】の中だけどな。
まあ、出す必要もあるまいし、そのうち潰して金属にして何かに活用すればいい。
ここでも出る前に回収作戦、やるかも知れないが、クククッ。
在庫を思わせて今、大皿に串肉を載せて……まあ、4本あれば余裕かな。
「ほれ、差し入れだ」
「うおお、やっぱりでけぇ肉だぜ」
「オークションで落札してな」
「色々やってんだな」
「うん、美味い」
「やっぱりこれ、マジ美味いぜ」
後28ページとは到底言えんな。
数百年の集大成とかさぁ、さすがにやり過ぎたな。
これを食い尽くす事がライフワークになりそうだぜ、クククッ。
「何か飲み物はねぇか」
「お、ちょっと待ってろ。果物ジュースがあったから」
「頼むな」
良いのかな、異世界の果物のジュースだけど。
まあ、別に構わんか。
あの獣人の町で売ってたのを大量に仕入れた品だ。
と言っても5枠ぐらいしかないが。
後は何故か、アンコまぶした団子があるんだよな。
大方、あの世界に行った日本人が開発したんだろう。
そいつは3枠しかないが、この世界ならたくさん買えるか。
そうだな、どうせだから稼いだ金で大量に仕入れるか。
その為には串肉をどうにかせんといかんが、まあ何とかするか。
「おっ、なんか、これ、何のジュースだよ」
「スイカだ」
「いや、確かにスイカみたいだけどよ、妙にあっさりとしているのに甘みがあってよ」
あれは何て果物だったかな。
ミカンみたいな形でスイカの味って言ってて……
ええと、えっ、うーん、いかん、思い出せん。
「スイカンだ」
「なんだそれ」
「いやな、形はミカンで味はスイカって聞いたんだ」
「そんなバイテクやってんのかよ」
「日本人は色々な物を作るのが得意だからな」
「ありそうで怖いぜ」
ああ、マイタンだ、そうだそうだ。
スイカンで思い出したな。
そういや、あれも買ったよな。
まあそのうち出しても良いが、何枠あったかな。
あんまし無いんだよな。
なんせ、もう串肉オンリーの生活だったから。
参ったなぁ……本当に。
「それはそうと、初詣どうする? 」
「静岡で行ったからもういい」
「ああ、そうだったな」
「地元の神社はちょっと行きたくないぜ」
「親戚連中に出会うのか」
「神主も居るからな、会えば色々言われるのさ」
「本当に色々と大変だな。となると、外のほうが良いのか」
「理想はな、けど、あの高校なら新設だし、そんなしがらみも無いしよ」
「県立だから分からんぜ」
「あれ、私立だろ」
「あれ? 近所のあの高校だろ? 」
「お前、もしかして、芸能科のあるほうの事を言ってんのか」
「あれ、だから校風が自由だからかと思ってた」
「あっちはヤバいんだって。確かに県立だけど、うちの関連が教師に何人か居るんだ」
「じゃあ近くと言っても少し離れてるな」
「だからだよ。この県は県だけど、外れのほうだから目指してたんだ」
「あんな進学校かよ。だったら偏差値80は要るだろ」
「だから言ってんのに」
「70の県立かと思ってた」
「あそこの理想は83だ」
「マジかよ」
「無理かもな。オレでもちょいときついと思っててよ。なのに……さすがに45はなぁ」
「ううむ、実はな、家での自己採点、偏差値77なんだよな」
「お前、どんだけ手を抜いてたんだよ」
「いや、だって、成績上げたら苛め再開になると思ってよ」
「しかしそれなら、少しやればいけるかも。希望が出て来たぜ」
「困ったら勘で勝負だ」
「それは万が一の保険にしとこうぜ」
「万能スキルだと思ってたのに」
「頼って外れるとヤバいだろ」
「期末3位の実績が」
「あれ、どこまで本気だよ」
「全身全霊」
「それで偏差値77は嘘だろ」
「自己採点だからな、はっきりとは分からん。確かに大学入試ではそうだったんだ」
「お前……オレ達が受けるのは高校入試だろうが」
「あ……それでかぁ」
「お前、オレより賢くないか」
「それで妙に難しいと思ったんだ。あんなの授業でやってないのにどうしてかなって、そうかぁ、大学入試の問題だったのか」
「図書館のヌシをやってるうちに、訳が分からなくなったんだな」
「そうかも、オレ、授業とか全く聞いて無いし」
「今度、一緒に模試受けるぞ」
「目指せトップ」
「ありそうで怖いぜ」




