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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 夏休み
5/119

05 収益

 


 公衆便所に入り、着替えて出ると……お、居ましたね、クククッ。

 さあ、後は青年が頼りだぞ。


「やっぱりコージだったかよ」

「あれ、ミツヤ、こんな所で何してんの」

「とぼけんなよ、コージ」

「え、何の事? 」


 甘いなミツヤ……トイレの外で問答していると、スーツ姿の青年がトイレから出て来る。

 それを見たミツヤは挙動不審となり、オレとの会話が気もそぞろとなる。

 オレがひたすらにとぼけていると『悪かった、間違えた』と、そのまま別れて青年を尾行し始めた。

 そんなにそっくりって訳じゃないのに、ミツヤはあいつを追いかける。


 そんなミツヤを見て、少し罪悪感を感じた。


 悪いな、けどこれは最悪、命に関わるんだ。

 お前が知って、その対抗策があれば良いが、無ければ真剣にヤバいんだからな。

 こんな能力、裏の奴らに知られたら、軟禁されて飼い殺しにされるに決まっている。

 お前も知れば、お前の命を盾にしてくるかも知れない。

 だから知らないほうがお前の為なんだ。


 とは言うものの、どうにも後味が悪いが、仕方があるまい。

 さてと、服を元に戻す前に、金を全て抜かないとな。


 ラストと言う事で少し派手に稼いだが、郵便貯金にまた入れておかないと。

 それでも一気に入れると目立つので、机の鍵の掛かる引き出しの中にとりあえず全額入れておく。


 ふうっ、今日だけで280万かよ。

 確実な予測のギャンブルは儲かるなぁ。

 まあ、タマゴ代を入れてないんだけど。

 それにしても精神がかなり疲れたな。

 父さんの服のポケットを全て確認の後にこっそり元に戻し、冷蔵庫のタマゴを2個ゴクリとやった後にベッドで横になる。


 ふうっ、本当に疲れたけど……1日で280万円か。


 どうにもこれで生活出来そうな気がしてならない。

 そう言えば、ネットで券が買えるシステムがあったよな。

 今は未成年だからやれないけど、何とかあれがやれたら。


 となると家からの通いじゃ拙いな。


 県外の高校なら独り暮らしも可能だし、それならあのサイトもやれるかも知れない。

 だがなぁ、あれだけ教師に言っといて、今更変えますとは……まあいいか、あれは社会人になってからでも。

 かなり疲労を感じていたようで、風呂上りにそのまま寝てしまっていたようだ。


 母親が部屋に来て、熟睡しているのでそのままにして、起きたら朝の11時だと言われたものだ。

 かなりの精神疲労だったらしい。

 最初はここまで疲れる事も無かったのに、年々、これが辛くなる。

 タマゴで回復という方法も、確実では無いのかも知れない。


 最初にたまたまタマゴを食べて、症状が少し軽くなったから、それから生タマゴを飲むようになっただけで、あれが効果があると判った訳では決して無い。

 栄養ドリンクも試してみたし、野菜ジュースも試してみた。

 にんにくたっぷりのとんこつラーメンも試してみたし、つゆだく牛丼とかそれはもう色々な食品で試してみたのだ。


 その結果、生タマゴが一番成績が良かっただけの事だ。

 なんかもっと確実に回復する物を見つけないと、これで稼ぐのは辛くなるだろう。

 そう言えば、無精卵と有精卵。あれが……


 以前、有精卵を飲んだ時、その個数が少なかったような気がした。

 有精卵と無精卵の違い……それは生命の元があるかないか。

 生命が育つのに必要な栄養素を省いた物と言えばそれぐらいの違いしかない。


 まさかとは思うけど、命を摂取したら回復するのか。

 参ったな……そんな物、そう簡単に得られないぞ。

 さすがにおたまじゃくしの丸呑みとかやりたくもないし、かと言って他の生命とか無理に決まってる。

 そう言えば、白魚の踊り食いとかってのもあったな。

 生きていればアレでもやれない事もないのか。


 物は試しと、行き付けの料亭で聞いてみる。

 どうやら夏場は無理っぽい。

 また涼しくなったら可能と言われたので、秋から春で試してみるか。

 行き付けの料亭? いやぁ、ほんの軽い道楽のようなものかな。

 オレって和食が好きなんだけど、あの内職始めてから月に1度の贅沢ってのを始めたんだ。


 それが料亭通い。


 まあ、ツキイチで通いって程じゃないけど、一応は顔馴染みになったようだし。

 最初に相談したんだ。

 学生だから表は目立つ、何とかならないかって。

 そうしたら奥座敷を使わせてくれる事になり、裏口も教わったんだ。

 その手の訳ありさん御用達とかで、議員とかその手の人が使う方法なのかも知れない。

 さすがに毎日はやれないので、月に1回お願いしますと、美味しい料理を食べて帰ったものだ。


 それからあの店にはまっちまったんだ。


 あれが本当の和食って言うのかな、そんな気がしてさ。

 確かに親の料理も美味いけど、味の深みが違う感じなんだよな。

 やはりプロの味って言うか、だけどそれは贅沢だ。

 成人なら別としてまだ中学生な訳だし、可能不可能は別にしても、身の丈に合わないと思ったんだ。


 そりゃ生まれながらの上流階級とかなら別だろうけど、生まれも育ちも平々凡々なんだしさ、それなりの身の丈ってものがある。

 それは毎日、料亭で晩飯を食うとかって事じゃない。

 親と同居で晩飯を外で食うなんてのは、普通の平凡な学生のやる事じゃ無いと思ったからだ。


 まあ、はっきり言うなら、それだけの金を稼いで使えば、即座に発覚すると思っただけの事。

 地味に地味に使わないと、バレては元も子も無いのだから。



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