49 両親
飴を食い始めてからミツヤの調子が良くなり、どうやら切らしていた関係での大食いだったのだと知った。
自覚させるのは簡単だけど、人間の感性で耐えられる話じゃないだけに、知らないままのほうが幸せかも知れん。
ただな、ミツヤの親とは対決せねばなるまい。
知らないままに過ごさせるなど、許される事じゃ無いからだ。
自覚してそれを望んで飲むという意思、これの無いままにってな、ちょっと琴線に触れると言うかな。
仮初にも親ならそんな、人形扱いはさすがによ。
そんな訳で新年のリフレッシュは終了し、旅館の人達の恐縮っぽい雰囲気の中、オレ達は地元に帰る事になる。
うちの親達はまだ七尾の旅館らしく、すっかり新婚に戻った気分になっているらしい。
もしかしたら下が出来るかも知れんが、それならそれで構わんよ。
ちょっと年がいってるが、【治療】だろうと【回復】だろうと【復活】だろうと任せとけ。
オレは攻撃魔法は少ないけど、その手の魔法には事欠かかん。
まあ、生活魔法や精神系、それに色々な魔法の開発や合成なんかが得意だけどな。
あんまり自慢にはならない話だけど。
「それはなんだね」
「親子の縁切りの書類や。そいつにサインしたらこれ渡すでな」
「いきなりだね。それでそれはなんだい」
「ほんの5億や」
「んな、なんだと」
「それで縁が切れるんや。どや、満足やろ」
「どうやって作った、そんな金」
「関係あるか? ええ、堕とされし者さんよ」
「ぐ……やっぱりお前、超越者か。何のつもりだ」
「管理殺しって二つ名、忘れてるぞ」
「なん、だと」
「今、上に誰も居ないだろ。オレが食った」
「そ……そんな」
「おら、サインして金を受け取って、あいつと切れろ」
「は、はい」
「何のつもりか知らんが、下を染めて楽しいか? 」
「いえ、そんなつもりでは。あれは事故で」
「すっかり吸血鬼の素質にして、事故で済ますつもりか」
「俯瞰さんは仕方がないと仰られて、そのまま継続にしてたんですが」
「淡い記憶にするから、手を出すなよ」
「分かりました。後は宜しくお願いします」
「仮初でも親子か」
「情はありますよ」
「そうか、まあいい。それならそれでな。とにかく、高校はオレと一緒に暮らす事になるから、中卒で家から抜け」
「分かりました」
「役割はあえて聞かんが、やっぱりグレムリンとかレミングとかシルフの関連なんだろうな」
「まあそうですね」
「精々、絡まないように伝えておけ。絡んだら処分する」
「分かりました」
「あいつは東なら構わんと言ったんだ。だから多少は諦めろよ」
「それなら仕方が無いですね」
「シナリオ上で困ったらカンパしてやるから、どうしてもきついなら言え」
「助かります。なかなか稼ぎも思うようにならず」
「5億で足りるか」
「何とかですかね」
「追加でもう少し渡しておく。だからくれぐれも手を出させるなよ」
「助かります」
そんな訳でミカン箱を10個置き、手切れ金という名目で……やれやれ、事故かよ。
どんな事故かは知らんが、あれは元にはなかなか戻れない体質だ。
そう言う事なら連れて出るしかあるまいな。
残しても役柄に押し込められるか、やり直しにさせられるだけだろう。
そんな人形扱いにされるぐらいなら、これから先もオレの相棒として、世界巡りも楽しいかも知れん。
学生体験が終わったら、2人で剣と魔法の世界にでも行ってみるか。
オレも魔法の研鑽をもっとやりたくなっているし、あいつにも経験させてやりたいし。
ただな、あんまり変な管理は止めておいてくれよ。
そりゃ食うのは良いが、後のあのクレームの人。
ありゃ物凄い感じを受けたぞ。
とぼけて対応したけど、勝てる気は全くしなかった。
あっちがその気になったら多分、オレは一瞬で消されるだろう。
そんな感じがしたな。
特権みたいなのを借りているからこそ、こういう体験もやれるんだな。
誰が貸してくれたかは知らんが、有効に活用させてもらうぞ。
(あっさり50億とはまた……しかしありがたい。これで何とかなる……全く、シナリオは良いが、資金は自前で何とかしろと言われても困るんだよな。だから色々と手を回して……なのにそれも巧く行かなくなるし……けどこれで継続も可能だな……ミツヤか……後々、資金稼ぎの関連に投入しようかとも思ったが、50億なら問題無い。だからな、もう関係無いから平穏に暮らすんだぞ。こちらの関連は到底、平穏って訳にはいかんのだから……そしてな、可能ならずっと一緒に連れて行ってもらえ。そうすればそのうち、登れるかも知れん。そうなれば未来は明るいからな……自分達は罪を犯してこうなっているが、お前は真似するんじゃないぞ、いいな)




