47 疑惑
改〉タイトルミス修正
中に入るとミツヤの声が聞こえてくる。
やはり何かのトラブルのようだけど……ああ、金の話か。
「だから何度も言ってるだろ、あれは友達からもらったんだ」
「そないな都合の良い嘘、誰が信じると思てんねん。さ、言い、どっから持って来たんや」
「ワイが渡した金の何が不都合なんや。ええ、あんさん」
「コージ」
「なんならうちの顧問弁護士と話付けるか? 今から連絡してもええけど、濡れ衣やったら後の公判、期待して待っててや。東京やさかいな、列車代は自前やで」
「そんな事を言えば止まると思うたか、甘いわ。大阪モンを舐めたらしまいや。さあ、何処へなりとも電話してみんかい」
やれやれ、身の破滅を自ら招くか、ならそうすりゃいい。
【もしもし、斉藤さん? ああ、どうも。あのですね、今、大阪なんだけど、丸橋電化店って店の店員とのトラブルで、濡れ衣の窃盗容疑。ああ、うん、可能ならやるよ。金はどうせ余ってるし。うん、え? 話? まあいいけど、訓戒するより裁判にしたほうが、そっちの収入が多くなるんじゃない? 優しいねぇ。うん、あい、分かった。んじゃそれで】
「あんな、ここに電話しぃ」
「な、なんやて」
「ほらこの名刺、斉藤弁護士てなってるやろ。ここに電話したらうちの顧問が出るさかい。しっかり訓戒してくれるっちゅう話や。けどそれで納得せぇへんのやったら裁判にするでの、とにかく電話や」
「まさか、そんな」
「はよしぃ」
「あ、ああ」
【あの、丸橋の、えええ、あ、は、はい、す、済みません、いや、あのですね、若く見えて、その、大金なので、はい、はい、済みません】
やれやれ、これで解決やな。
顧問弁護士って色々と便利やな。
税金の処理のつもりだったけど、この年齢だから何かと役に立ってくれるな。
こりゃ契約料の値上げも考えに入れとこうかな。
けどなぁ、100億で生涯保障って言われたからなぁ、もう要らんと言われそうで……参ったな。
「さっきは済みませんでしたぁ」
「納得したな」
「はい、はい」
「ほな、ミツヤの買物、あんじょう頼んまっせ」
「はい、サービスさせていただきます」
「良かったな、ミツヤ」
「顧問弁護士ってな、便利だよな」
「そうやろ、ワイも今、それを実感してるとこや。税金対策のつもりで契約したけど、これからも色々と頼む事になりそうでな」
「そのうちオレがそうならねぇといけねぇんだよな」
「頼むで、相棒」
「はぁぁ、そんなにやれるかなぁ」
「ほれほれ、買物やろ。ついでに電話の新調もどうや。スマホたら言うの欲しがってなかったか」
「アレも良いのかよ」
「100万で足りんか? 」
「そのつもりかよ、おっしゃ」
「車で待ってるさかいな」
「おっし、すぐ行くからな」
「配送してもらえよ」
「あのな、それな、コージの家で良いか」
「親に言われるんか」
「旅行の事もやけどな、実は初日の出を見るってな、貧乏旅行って言ってあるんだ。だから土産も本当は拙いんだけどな」
「分かった。うちに送りィ」
「悪いな、うちの親、頭が固くてよ」
「心配無い」
そうかそうか、そう言う事なら勝負やな。
どのみち上の関連やろうから、その辺りを突いてやれば問題無いやろ。
どないもこないもあかん言うたら、【枯渇】して【吸収】して【暗示】でしまいや。
管理殺しの超越者っちゅうて脅したろ、クククッ。
はぁぁ、いかんいかん。
下の体験中は上の事を忘れるつもりが……スキルを使う関係があるからつい、意識が上になっちまうんだな。
それを気を付けんとな。
あんまり上の力で下を突く訳にはいかん。
だからそういうのは今は忘れて……はぁぁ、ビギナーは色々と浅いねぇ。
もっと修練やな。
何か知らんが、殆ど卸価格にしてくれたらしく、ホクホクのミツヤ。
しかもあれ、店長らしくて、オーナーに大目玉になるから内緒にしてくれと頼まれたらしい。
その口止め料も込みのサービスらしく、そう言う事ならもうその話は終わりになりそうだ。
運ちゃんもトラブル即解決の顧問弁護士の話に食い付き、事業所で話題にして相談するらしい。
ドライバー全員で分担金にすれば可能そうで、後々のトラブルの保険って話で、オレ達の事をそれとなく話すとか。
まあ、身元が分かるような話にはしないと確約してくれるので、体験談としてなら問題あるまい。
ボートの稼ぎの話は事業所経由なので、初回の契約金を被る事になりそうやけど、それでいけたら安心やと。
「色々世話になったなぁ、またこっち来たら頼むでな」
「それはこちらの台詞や。あれはほんまに助かったでの」
「土産もたっぷりや。さあ、帰るで、ミツヤ」
「浜松、忘れてねぇか」
「ああ、ウナギやったな」
「はっはっはっ、楽しそうでなによりや。ほなまたな、気ィ付けて帰りィ」
「ありがとね、山根さん」
「おっちゃん、ありがとよ」
「おうっ、またな」




