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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 冬休み
44/119

44 会食

 


「今日はゴチになります、オヤッさん」

「おう、任しとかんかい」

「よっ、太っ腹」

「ドンと来んかい。ほな行くで」


 結局、配当金を受け取った運ちゃんは、事業所の人に謝礼金1割を渡した後、意気揚々と家族と合流。

 オレ達はそのおごりという事で……それと言うのも、謝礼だと本当におごる話になっちまったんだ。

 だから後の補填は不要と言われ、オレ達は素直に甘える事になった。

 本当は家族水入らずだったが、こういうのも良いかもと娘も満更でも無さそうで、ミツヤに誘導したい気になる。

 水族館勤務と言っても今年の春からの新入社員で、高卒だから年も近い。


 金のわらじだから特に問題はあるまい。


 大体、平均寿命は女のほうが長いんだから、年上の女房にしないと自分が先に逝く事になる。

 共に白髪の生えるまでがやりたいなら、目先の欲望は止めておいたほうがいいだろう。

 旦那亡き後、海外旅行に遊行三昧って、安楽な老後になるだけだ。

 まあ、この国はその手の趣味の人達が多いらしいから、年下を好むらしいがな。

 8才ぐらいの平均寿命の差があって、8才年下なら16年の差だ。


 自分が死んだ後、16年間の安楽生活をプレゼントするつもりなら何も言わないがな。

 なんて事をつらつらと考えているうちに、運ちゃんお勧めと言うか、これは予約かな?

 キャンセルする前に助かったとか言ってるが、そんな事ならもっと早く言えよな。


(けど凄いもんやな。ホンマにチョーノーリョクかいな。3レース合計で480万やて、魂消たわ。謝礼50万も魂消たやろけど、これでワイも余裕が出来た。ありがとな……けどなんやな。あんなん見てもうたら、もうレースやる気ィのぅなったわい……ワイが買うても当たる気ィせぇへんさかい、もう止めようかいなぁ……せやね、ええ機会や)


「甘酒で乾杯や」

「うえっ、いーだろ、これぐらい」

「我慢しぃ、後5年や」

「ホンマに15なんやね。見えへんよ」

「仕事持ってるさかいな」

「アルバイトとは違うん? 」

「まあ、似たようなもんかな。ただ、雇い主はおらへんけど」

「え? なして? 」

「株式投機やさかいな」

「はぁぁ、なんや凄いねんなぁ」

「こいつは弁護士志望らしいし、将来の顧問弁護士に期待や」

「そないに賢いんやね」

「うっく、まあ、ぼちぼちや」

「よっ、ゆーとーぜー」

「そこまでじゃねぇよ」

「またまたぁ。偏差値いくつだよ」

「そりゃ80台だけどよ」

「うわぁ、マジ秀才やね」

「オレは45な」

「あらら、大違いやね」

「こいつ、ガッコの勉強せんと、儲けの事ばっかりやってたみたいでさ」

「まあ、勉強はミツヤに任せるさ。オレは稼ぐほうだ」

「顧問弁護士かぁ、遠いぜ」

「頼むぜ、相棒」

「おっしゃ、ちょいと狙ってみるか」

「いよっ、日本一」

「桃太郎かよ」

「あはははっ」


 予約の料亭の料理はまずまずで、ミツヤもオレもたっぷりと飲み食い……ミツヤは甘酒、オレはお茶。


「お茶飲みなんやね」

「風味が好きやから」

「抹茶もいけるん? 」

「シャカシャカ、クルクル、結構なお手前でと」

「あら、知ってるのね」

「それなりやな」

「コージ、ちょっとだけ、な」

「将来の弁護士が違反は止めとき」

「あはは、本当にそうだわね」

「正月なら良いよな」

「そういや、延長が可能になったんやけど、ミツヤさえ良いなら正月、どっか行くか? このまま」

「そっちの親、旅行どうなってんねん」

「北陸10日の旅やさかいな、戻るのは4日の夜や」

「そんならな、うちに電話しとくから、どっか行こうや」

「今度は中華街かよ」

「横浜はヤバいぜ」

「そうかなぁ」

「ならよ、静岡にしようぜ」

「そらまた何でや」

「富士山の近くで初日の出とかどうだ」

「ウナギやな」

「うっく」

「あははっ」


 和気あいあいと会食は進み、ひとまず運ちゃんと別れてまた明日の朝、ホテルでの待ち合わせになる。

 夜遊びは控え目にしろとの忠告は受けるも、ミツヤは既にその気だ。

 軽い暗示で荷物は共に【倉庫マジックボックス】の中。

 また後で渡してやるから、今は忘れていろ。


 あれ、そういや……ミツヤの両親ってどんな奴だっけ?


 今ふと気になったが、おっかしいな、どうにも記憶が無いぞ。

 まさか本当にアレの関連なのかよ。

 そいつは親だけだろうな。

 こいつの雰囲気はそんな特殊な感じはしない。

 上関連はどうにも雰囲気が違うと言うか……オーラがマダラと言うかストライプと言おうか……だから違うはずだけど。


 両親は分からんな。


 その場合、仮初の親って事も考えられるな。

 なるべくそういう事態は困るんだが、天涯孤独に仮初の親とか、ありそうで怖いな。

 ただの度忘れであって欲しいと願うばかりだが、どうにもな。

 まあ、今はそういうのは忘れていようか。

 それにしても、ミツヤは張り切っているな。

 オレはこうしてのんびりと、女の愚痴を聞いているだけなんだが。


「そろそろ時間やろ、ほれ、ボーナスや」

「なんや悪いねぇ」

「付き合いやから来たが、許婚に知られたらヤバいさかいな。そん時は証言頼むで」

「あはは、今から敷かれてんのかいな。ええよ」

「ほなまたな」

「ありがとな」


(えー、いーなー……終わったら食べに行くわよ……おごりよね……まあ、屋台ならね……ラッキー)


 入る時に2人で10万、中で10万、先に出て10万と。これで余計な口は止まるだろ。

 止まらなければ心臓の鼓動が止まるだけだし、そいつはオレが止める事になるな。

 あれから殺ってないが、どうにも……いかんいかん、そういうのは忘れてないと。

 けどなぁ、モンスターの居ない世界でのハントの欲求ってのには困るよな。

 マンハントする訳にもいかない世界だし、盗賊にも人権のある世界だし。


 今は鎮めておくしかないってか。


 でもまた、どっかで……まあ、手榴弾で発散にならなくも無かったし、あれで多少は効いたしな。

 まだ来るようなら今度はもっと容赦無く、気の済むまで相手をしてもらうだけだ。

 例えば、前から来るようなチンピラとかさ、いいカモだよな、クククッ。

 あれ、目を逸らすのか、残念だな、ちょうど良いと思ったのに、クククッ。


(なんや、今の悪寒……あいつ、ヤバいんかいな……危な)


 なんやねん、会う奴会う奴、目ぇ逸らすんかいな。

 獲物がおらへんなぁ……残念やなぁ……今夜のメインディッシュ、確保は無理かいな。

 ミツヤ寝かせてまた来てみるかいな。

 鎮める為にはやっぱ、生贄が必要やろ。


(拙いな、あっちもこっちも予感って感じで送ってるが、頼むから静かにしてくれよな・・しっかしあの管理も間抜けだったな。手を出すなとあれ程、言ったと言うのに。次はどんな新米が来るのやら)



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