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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 冬休み
43/119

43 寿司

 


 どうやら親類の寿司屋のようだけど、それなりの店のようでまずは一安心。

 あんまり黄色い店は嫌だけど、青っぽいからまあいい。

 問題は味だけどな。


「どないしたん」

「この2人な、客やさかい」

「アンタ、何ぞ脅されてん違うんかいな? 」

「ああ、あれはな、補導対策や。あいつらな、中坊やさかい」

「ちょいとアンタら、親の許可はあるんやろうね」

「自前の金やし、親にはフルムーンの旅をプレゼントしてある。今頃は北陸を水入らずやろ。他にも店出す金も融資してるし、年度末には確定申告や」

「それ、ほんまの話なん? ちょっと信じられへんのやけんど」

「それはな、この運ちゃんの博打の結果で分かる話や」

「ちょいとアンタ、まだやってんのかいな」

「今はもう軽い趣味や」

「で、なんぼ入れたん」

「ほんまは3千円のつもりやったけど、3万な」

「あんまりはあかんて言うたやろ」

「いや、あんまり自信あり気に言うさかいな、ついな」

「穴が3つの予想や。推定450万。良かったな、運ちゃん」

「それが当たるようなら」

「ふふん、いきなり信じてくれた運ちゃんにはサービスやけど、疑いから来るようなのはパスや。諦めてや。これ、意外と疲れるんやから」

「はぁぁ、仕方ないわね」

「これ、なんて魚? 」

「ミツヤはマイペースやな」


 それなりの味を楽しみ、料金を払って店を出る。

 1人2500円とはまた安いけど、万札で釣りはパスした。


「もったいないなぁ、もらえば良いのによ」

「サイフが重くなるだろ。この財布、万札しか入れる予定は無いんだよ」

「お前、最近、本当に変わったな」

「旅の恥は掻き捨てやろ。地元の事は今は忘れてくれ」

「それも成り切りかよ」

「釣りが欲しいなら好きに取れ、オレはパスするから」

「おし、ならオレがもらうぜ」

「ほれ、この財布もやるから」

「またこの財布かよ、どんだけ持ってんだよ」

「さて、次の財布と」

「どんだけ買ったんだよ」

「クククッ」


 残り8494枚とはちょっと言えんな。

 それもこれも全て、あそこの非合法博打の儲けだ。

 ミツヤの先輩がどうなったのかは知らんが、まだまだたっぷりあるからな。

 それが無くなっても端数の1億5千万もあるし、何より5億の箱が1198箱だ。


 使わないと減らないんだよ。


 寿司屋の後で水族館と言うのも何とも言えないが、水族館の後で寿司屋よりはましなはずだ。

 だってさ、そんな予定があったら、泳いでいる魚が寿司に見えてくるだろ、クククッ。

 タクシーは堀沿いから橋を通り、海沿いに抜けて高速の下を通って南下、そして水族館に到着する。

 3人分の料金を払えば、お釣りをミツヤが受け取る。

 そしてそのまま運ちゃんの案内のままに進めば、若い女と会話に……


「不倫や」

「アホ抜かすな、こいつはワイの娘や」

「トンビがタカや」

「じゃかましいわ」


(補導対策?……なんやもうトラブルがあったらしぃての、着替えて今はこうなんやて……それ、大丈夫なん?……マッポのお墨付きやて……そんならええけど……まあ、今日と明日、付き添って観光案内してやる事になってんでの、済まんの……はぁぁ、仕方ないか……そん代わり、もしかしたらお年玉に色が付くかも知れへんでの……え、何かあるん?……もしかしたらや……期待しとくけんね……ああ、もしかしたらな……母さんには伝えとくね……正月、水入らずにするさかい……うん、それでええよ)


 ううむ、何か予定があったのかな。

 悪かったかな、今日と明日の案内頼んで。

 でも明日は昼までだから、昼からならまだ。

 てか、帰りの新幹線は良いが、予定を延ばしても良いんだよな。

 どうせ両親はまだまだ旅の途中だし。

 まあ、戻ってから逆の方向って手もあるし。


 その時はその時で良いか。


 それは良いが、どうにも気もそぞろと言うべきか。

 オレ達は魚を見て楽しんでいるが、どうにも挙動不審な運ちゃん。

 これはもしかして……クククッ。


「運ちゃん、住之江行きたいんやろ」

「うっく、やけどな、大金勝負やさかいな」

「宝くじのつもりでのんびり構えとったらええんや」

「そんな確率あかんやろ」

「しゃあないなぁ……ほなな、ここ出たらそっちも案内や」

「その見てくれでいける思うが、違反は違反やさかいな」

「知らんかったっちゅう事で」

「あかんて、事業所にはもう話付いてるさかいな」

「ああ、未成年の保護者代わりに2日間って言ぅてくれたんやね」

「そうせなあかんやろ。これも大人の義務や」

「理想の大人やね」

「褒めてもなんも出ぇへんで」

「ほな晩飯は食道楽、3名様ご案内や」

「なあ、その話やけどな」

「皆まで言うな、連れて来い、家族も一緒や」

「ええんやな」

「なんぞ約束あったんやろ。拘束するからには融通も利かせたる」

「実はな、今日は結婚記念日でな」

「マジかよ。そんな日に流してたのかよ」

「昼で上がってのんびりの予定やったんや」

「ほんまにええ人やな。よし、何でも好きなもん食うてええさかいな」

「出来たらの、ワイの招待にしたいんやが」

「配当金で支払えば、後で補填したるさかい」

「ほんまに当たるんやな」

「ああ、ほんまや」

「よっしゃ、ならそれでいこか」


(チョーノーリョクっちゅうやつかいのぅ……ホンマにそんな力、あったらとんでもねぇ事になりそやな。まあ、ワイには過ぎた力やけど、恩恵はありがたい話や。やから頼むで)



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