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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 冬休み
42/119

42 城下

 


 まあ、ミツヤも男だし、その年齢だ。

 ちょうど激しい時期だろうし、欲しいならすればいいだけの事。

 そうだな、行きたいなら付き合うさ。

 まあオレの場合は時間まで話をするだけでいい。

 あの手の女はそういうので金になるのを喜ぶ事も多いらしいし、オレはそれで別に構わんよ。

 ただオレはそういう行為より、主食の摂取の快楽のほうが好きなだけだ。

 あれに勝る快楽は、ちょっと今のオレには想像が付かんな。

 近いのは昨日の昼飯だったけど、主食は次元の違う話だ。


 充足感のあれはまた別な話だけどな。


 あれは何て言うか、気力が増えるような感じであって、快感とはまた意味合いが違う。

 はっきり言ってあれだろ。

 魂を吸収して寿命が増える、てな感じの現象だろ。

 混ぜた力を抜いて抜いて存在を消し、バラした力をもらうスキルだ。

 ああそうか、【注入インジェクト】の快感ってな、あんな感じなのか。

 人間にはアレと同じ快感に感じるのか、成程な。

 かつて、その手の行為の経験は、数千年前しか無いぞ。

 まだオレが神様に嫌われていた頃、元の世界で何度かやったけど、そのたびに色々なトラブルに巻き込まれて、だからあれで余計に罪が重くなって……そうそう、あの神様ってか、あれも管理とやら言う存在だろ。

 あいつにこそ意趣返ししたいものだけど、どんな奴だったのかさっぱり分からん。


 残念だけど、諦めるしかないか。


 すんなりと京都駅から大阪に向かう。

 もう変なちょっかいは無いようで、ひとまずはクリアしたって事かな。

 梅田から京橋までタクシーで移動し、そのまま大阪城の観光に向かう。

 運ちゃんに聞いてみると、そうやな、たまには登るのもええか、てな訳で同行になる。

 実は補導対策での格好で、もう既にトラブルで交番で対処の終わった話をする。

 なのでいきなり青くなったオーラに気分を良くし、そのまま継続を願った訳だ。

 まあ、青っぽいオーラのタクシーに話しかけ、黄色っぽくなった後の話なので、元に戻ったってだけだけどな。

 今日と明日の2日の専属、観光案内もプラスして10万で快諾され、今こうして……


「はぁぁ、やっぱしんどいな」

「無理はあかんて」

「ほんま、慣れてんな、そん言葉。聞くだけやったらこっちゃのもんや」

「漫才で覚えました」

「はっはっはっ、成程や」

「まだかぁ、はぁぁ、疲れるぅ」

「ミツヤは運動不足やな。ワイは毎朝、ランニングで鍛えてるさかいな」

「うげ、そんなのやってたのかよ」

「苛められっ子がな、将来の仕返しを夢に見て、鍛えた後にプロボクサーって話、聞いた事無いんか」

「お、あるな、そういう話。そうかぁ、ほな、兄ちゃんもそのうちプロやな」

「この格好やったら違うプロになりそやな」

「そらあかんて」


 そんなこんな言いながらも登っていき、いよいよ城下が見えてくる。

 一望に出来るここは人気があるようだが、やはり冬は人も少ないようだ。

 やっぱり都会だな……でかい街だ、大阪は、やっぱり。

 でも、ちょっとゴミゴミして好きじゃない。

 オレは田舎向きかもなぁ……だって風光明媚なほうが好きだし。

 そうだな……将来的に住むならもっと、自然豊かな風景の中がいい。

 四季折々の風景を楽しめるような、そんな場所に住みたいものだ。


 そう考えるとこの国も捨てがたいが、どうにも政府の方針がなぁ。

 もっと毅然とした対応と、断固とした処置と、現実に即した方針でやってくれんもんかな。

 憲法の解釈で誤魔化すような、そんな玉虫色な対処とか、その場しのぎだと言われるだけだ。


 まあそんな事はどうでも良いけどな。


 オレはオレで楽しめればそれでいい。

 この国の未来がどうなろうと、オレには関係の無い話だ。

 邪魔をするなら排除するし、絡んでくるなら消すだけの事。

 嫌なら絡んで来なければ良いんだし、絡むから排除するだけの話だ。

 さてと、ミツヤも寒そうだし、そろそろ降りるとするか。


「甘酒飲みに行こうぜ」

「よし、乗った」

「そやな、久しぶりやな」


 降りるとなると真っ先に降りていくミツヤだが、膝の負担は下りのほうがでかい。

 腰砕けになりそうなミツヤは今、茶屋の店先で座り込んで……もう動けないなどとのたまっている。


「はぁぁ、もう足がぁぁ」

「元気無いな、若いもんが、もっとしゃっきりせぇ」

「そやで、こんくらいで」

「オレも運動せんとなぁ」

「よし、ガンガン鍛えたる」

「うげ、あんまりは、そのな」

「さあ、スパルタやぁ。くっくっくっ」

「ほんまに違うプロになりそやな」

「冗談やがな、堪忍やで」

「はっはっはっ」


 下に降りた頃にはすっかり疲れた様子のミツヤ。

 運ちゃんも疲れているようなので、早めの昼飯にする事にする。

 昼から水族館に連れてってもらう事とし、運ちゃんお勧めの寿司屋を頼む。


「そらええけど、予算はなんぼや」

「そやな、3人で10万ぐらいか」

「おいおい、本気かいな」

「心配無いて、予算はたっぷりやさかい」

「ほんまにそないに稼げるもんかいな」

「ならな、新聞持って来ィ。サービスで予想したるさかい。後で買うて大儲けしたらええ」

「そやなぁ、おし、ほんならな、こいつを頼むわ」

「運ちゃん、既に中毒かいな」

「ただの趣味や」


 住之江競艇か……ええと、お、これがでかそうだな。

 青、黄、赤が偶数、偶数、奇数と。

 これもそれなりかな? まあいいや。

 つらつらと3レース……午後の3つで良いか。

 書いて渡せばその気になるようで、無線で代理購入を頼むって、クククッ。


「ほお、無線ってな、そういう使い道なんやね」

「さすがに仕事中は買えへんでの、たんまに頼むんや」

「ほな、今夜は山分けで大騒ぎやろけど、明日の案内も頼むで」

「そないに自信あるんかいな」

「ほんまに千円ずつでええんかいな? 有り金勝負やと思うんやけど」

「さすがに大穴に有り金はないやろ」

「1万が100万になるっちゅぅのに、欲の無い事やな」

「そこまで言われたら気になるな。ほんまに自信あるんやな」

「買え買え、有り金で」

「よっしゃ、こうなったらトン掘に飛び込む思いで」

『あんな、さっきのな、万札ずつ頼むわ……おいおい、ええのんかい……1割でええな……了解や』

「ほんま頼むで、今月の小遣いやさかいな」

「新年は水入らずで豪華な正月楽しめばええ」

「そらありがたい話やけど、どうにも心配やな」

「まだかいな、寿司屋は」

「あいた、通り過ぎた。ちょい待ってや」

「ほんま頼むで」



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