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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 冬休み
41/119

41 管理

魔皇子キレるの巻

 


 何とか乗り切ったが、ミツヤがすっかり怖じている。

 参ったな、折角の旅行なのに無粋な奴らだ。

 何が特定だ、上からの情報提供だろ、どうせ。

 こんな変装中なのに、特定もクソもあるかよ。


 覚えてろ、クソ管理が。


 外を歩きながらゆっくりと調整……少しずつ、少しずつ。

 こんな事はやりたくなかったってのに、よくもやってくれたな。

 ホテルに着く頃にはかなり緩和されたようだし、一晩寝たら何とかなるだろ。

 ミツヤは早々に布団を被って寝ちまう有様。


 こりゃ今日は観光にならないな。


 精神体で抜けて身は【倉庫マジックボックス

 何も言って来ないって事は、やっぱりまだ舐めまくってんだろ。

 そうだよな、下の存在は雑草か穀物扱いなんだろうし。

 たった150年の研鑽だが、下積みは2000年以上はあるんだよ。


 その粋を見せてやるから覚悟しやがれ。


転移ワールドアクセス】……【枯渇ダメージインパクト】【吸収バキューム


 《ぐぁぁぁぁ、いきなり何をする……それはこちらのセリフだ……何の事だ》


枯渇ダメージインパクト】【吸収バキューム


 《ぐぅぅぅ、どうして反転同期が効かない》


 完全混合じゃない、半熟とでも言うべき、魔力多めの不安定混合とでも言うべきエネルギー使用のスキルだ。

 そんなのまともに反転出来ると思うなよ。

 さあ、逝け【枯渇ダメージインパクト】んで【吸収バキューム

 ほお、まだ残るかよ。

枯渇ダメージインパクト】【吸収バキューム

 なかなかしつこいな。

 《待ってくれ、もう手は出さないから……なら最初から出すなよな……悪かった、だからもう》

 そんな真っ赤なオーラで言われてもな。

枯渇ダメージインパクト】【枯渇ダメージインパクト】【枯渇ダメージインパクト


 ふん、消えちまったな。


 《困りましたね……意趣返しだ……そうですか……借り物の下の世界体験勝手、無効なのか?……彼と知り合いなのですか?……オレは知らんが、向こうは知っているらしい……そうですか……知っているなら聞いておいてくれ……分かりました……じゃあな》


 ああ、疲れたぁ……【吸収バキューム】はぁぁ、凄い充足感だな。よし、【転移ワールドアクセス


 身を出して潜り込み、服を脱いで布団に入る。

 ああ、もう精神疲労が限界だな。

 疲れたぁ……もう、寝るぅぅ……はぁぁ……


 ★


(やれやれ、彼の弟子とはまた……ですが、貸してあると言われればどうしようもありませんね……仕方が無いですね、新たな管理の策定をしましょうか。それにしても、どうして慣例の通りにやれないんですかねぇ……出るまで放置して出たら修正するように伝えてありますのに、途中でちょっかいを出すなど……だから自業自得ですね)


 ★


 早朝に目覚めて布団の中で手榴弾を出して、昨日の奴の雰囲気の下にピンを抜いて【転送カーゴマジック

探査オールレンジソナー】で見ると大変な騒ぎになってるけど、オレはこんなに離れたホテルの中だ。

 いきなり寝ている目の前に手榴弾が出現し、顔に落ちて目が覚めて、慌てて布団を被せても爆発で大怪我か。

 まだ生きているだけ運が良いが、ちゃんと人間の法律で特定してくれよな、クククッ。

 そうしないと今度は病室に【転送カーゴマジック】させる事になる。

 観光の途中で呼び付けて、裏の話をするなど無粋も極まる。

 堅気のミツヤに聞かせる話じゃないだろうに、だからその意趣返しだ。

倉庫マジックボックス】にはもっと危険な代物も入ってるんだ。

 欲しいならいくらでもやるから、自滅したいならいくらでもちょっかい掛けて来るといい。


 オレは別に困らんよ。


 困るのはオレにちょっかい掛けた相手のほうだけだ。

 てか、邪魔なアイテムが減るから逆にありがたいぐらいだ。

 使いもしないってのに、まだまだ武器弾薬に粉の類も多いんだ。

 そうだな、見舞いに粉でも進呈しようか? クククッ。

 以前のあちこちの世界で、事務所からパクった粉が大量にあるんだよ。

 まあ、中身は確かめてないから、もしかすると粉砂糖かも知れんがね。


 あれ、こっちに向けて車に乗って何をするつもりだ?


 てか何でこのホテルを知っているんだよ。

 どうなってんだ? なんで場所が特定されているんだ。

 まさかあの代理店経由とか? それでバレているんじゃないだろうな。

 ああ、早朝から飛ばすから職務質問食らってら。

 よしよし、トランクに拳銃を【転送カーゴマジック】だ。

 さあ、見つかって騒ぎになりやがれ。


(これは何や……な、わては知らん……おい、こいつらを逮捕だ……はっ)


 やれやれ、こりゃとっとと出るか。

 どうにも京都は、メシは美味いが住むには不適か。

 残念だな、移住しようと思ったのに、あんな変な組織とか邪魔だぜ。


 何がシルフだよ。


 訳の分からん事を言いやがってからに。

 中抜きになったのは、それだけ甘いって事だろうが。

 大体、仕手ってな非合法だ。

 オレはただ、買いたい株を買って売りたい時期に売っただけだ。

 合法で売り買いしたオレに、何の咎があるかってなもんだ。

 それを横取りされたからと、寄こせってのは都合が良すぎる話だ。

 嫌なら他人が介入出来ない金策をすればいいだけの事なのに、それをせずに言われても困るだけだ。


 どんなシナリオかは知らんが、オレに絡めば無茶苦茶になる。

 だから嫌なら絡んで来るなと、オレが言いたいのはそれだけだ。

 さて、ミツヤを起こしてメシ食って、早々に大阪に移動しますかね。


「おい、朝だぞ」

「うーん、後5分」

「あっ、裸の女が」

「うえっ、何処だ」

「発声練習終わり」

「くそ、てめぇ」

「メシ行くぞ、さあ、服を着ろ」

「またその格好かよ」

「行こうぜ、兄弟」

「へいへい」

「もしかして、溜まってんのか? 」

「うえっ、何だよそれ」

「大阪で行くか? その手の店? 」

「い……いやぁ、オレは別に、そのな、特にな」

「なら、オレだけ行くか」

「待て待て、行くならオレも行くぞ」

「かなり乗り気だな、クククッ」

「そりゃそうだろ」



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