40 嵐山
嫌だけど紙に書いてある住所まで、タクシーに乗って行くしかない。
近くかと思えばしばらく走るようで、どうにも様相がおかしいような。
「まだ遠いんかいな」
「嵐山やからもうチョイ先やな」
「ほうか、近く言う話やったけど」
「後15分ぐらいやな」
「まあええ、頼むわ」
「へぇ」
ううむ、おっかしいな。
何かと間違えられているんじゃないのかな。
まあ、タクシーで京都観光みたいなものだし、これはこれで。
しばらく走った後で、妙にでかい屋敷の前で止まり、ここだと言われても困るんだけどな。
釣りはいらんと万札を渡し、タクシーを降りたんだけど本当にここか?
「なあ、これ、ヤバくないかよ」
「しゃあないやろ、来いっちゅうんやさかい。入るで」
「うう、思い込み、成り切り」
「ごめんやっしゃ」
「へーい、なんぞ用かいな」
「これ、貰うたんやけど、ここに来ぃて」
「ちぃと待ってんか」
「へぇ」
おっかしいな、何だって言うんだ。
しばらく待っていると、案内人がやって来る。
そのまま案内されて屋敷の中に……どうなってんだ?
「おお、ようやっと逢えましたなぁ」
「なんぞ用やろか」
「あんさんやろ、この前の中抜き」
「どないして特定したんや」
「やっぱりかいな」
「サイトかいな」
「まあそんなとこや。ほんでな、あれ、どないかならんかいな」
「あらかた国債にして、残りは税金や」
「そないね」
「なんぼや」
「そやね、半分も貰うとこか」
「うちの顧問と相談してくれるか」
「顧問とは」
「専属の弁護士や」
「それはまた」
「年齢で甘ぅ見たんかいな。それやったらあかんやろ。こっちゃ法律の専門家従えてるさかい」
「こら参ったのぅ」
「シルフかいな」
「ッ……」
「やっぱりな」
「そっちは何ね」
こらあかん、シナリオど真ん中や。
くそぅ、どうにかせんとあかーん。
つい、調子に乗って、あの組織名を。
まさかこんなところにも……弱ったな、どうしよう。
「どないね」
「素人苛められたら困るな」
「今更そないな事、通ると思うてんのかいな」
「ドンパチになったら後悔すんのはそっちやで。引けるうちに引いとき」
「その迫力、経験者やな」
「どないや、今、止まらんかったらもう無理やで」
「底冷えがするのぅ、とんでもねぇのぅ、あんさん」
「後に補填はしたる、やから今は止まりぃ」
「どれぐらいや。うちもあれはかなりやさかいな」
「またやってるやろ、それ、そっくり渡したる」
「あれにも噛んでんのかいな」
「8300で一気やから登ってるやろ」
「とんでもねぇのぅ」
「まあ、また来年でええな」
「ええやろ」
よーし、止まったな。
ミツヤさえ逃がしたらこっちのもんさ。
ここいら辺り、焦土にしたる。
1人残らず殺してやるからな、覚悟しとけよ。
言ったはずだ、関わったら消すと。
わざわざ意識を上に投影してんのに、絡めるそちらが悪いんだぞ。
それも込みなら好きに暴れるだけだ。
さて、確かに攻撃魔法のネタは少ないが、【暴風】が良いか? それとも【竜巻】か? 【乱風】でもいいぞ。
混合エネルギー使用の風魔法なら、大抵の存在は粉砕する事になるぞ。
貰った情報の中に、浮遊素子とやらがあるが、それになるだろうな。
ええと、確か、貰った情報の中にこんなのがあったな。
『下の世界体験勝手』これ、貸してくれているらしいんだ。
それを踏まえて手を出せよ。
(う……そ、そんな)




