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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 冬休み
40/119

40 嵐山

 

 

 嫌だけど紙に書いてある住所まで、タクシーに乗って行くしかない。

 近くかと思えばしばらく走るようで、どうにも様相がおかしいような。


「まだ遠いんかいな」

「嵐山やからもうチョイ先やな」

「ほうか、近く言う話やったけど」

「後15分ぐらいやな」

「まあええ、頼むわ」

「へぇ」


 ううむ、おっかしいな。


 何かと間違えられているんじゃないのかな。

 まあ、タクシーで京都観光みたいなものだし、これはこれで。

 しばらく走った後で、妙にでかい屋敷の前で止まり、ここだと言われても困るんだけどな。

 釣りはいらんと万札を渡し、タクシーを降りたんだけど本当にここか?


「なあ、これ、ヤバくないかよ」

「しゃあないやろ、来いっちゅうんやさかい。入るで」

「うう、思い込み、成り切り」

「ごめんやっしゃ」

「へーい、なんぞ用かいな」

「これ、貰うたんやけど、ここに来ぃて」

「ちぃと待ってんか」

「へぇ」


 おっかしいな、何だって言うんだ。

 しばらく待っていると、案内人がやって来る。

 そのまま案内されて屋敷の中に……どうなってんだ?


「おお、ようやっと逢えましたなぁ」

「なんぞ用やろか」

「あんさんやろ、この前の中抜き」

「どないして特定したんや」

「やっぱりかいな」

「サイトかいな」

「まあそんなとこや。ほんでな、あれ、どないかならんかいな」

「あらかた国債にして、残りは税金や」

「そないね」

「なんぼや」

「そやね、半分も貰うとこか」

「うちの顧問と相談してくれるか」

「顧問とは」

「専属の弁護士や」

「それはまた」

「年齢で甘ぅ見たんかいな。それやったらあかんやろ。こっちゃ法律の専門家従えてるさかい」

「こら参ったのぅ」

「シルフかいな」

「ッ……」

「やっぱりな」

「そっちは何ね」


 こらあかん、シナリオど真ん中や。

 くそぅ、どうにかせんとあかーん。

 つい、調子に乗って、あの組織名を。

 まさかこんなところにも……弱ったな、どうしよう。


「どないね」

「素人苛められたら困るな」

「今更そないな事、通ると思うてんのかいな」

「ドンパチになったら後悔すんのはそっちやで。引けるうちに引いとき」

「その迫力、経験者やな」

「どないや、今、止まらんかったらもう無理やで」

「底冷えがするのぅ、とんでもねぇのぅ、あんさん」

「後に補填はしたる、やから今は止まりぃ」

「どれぐらいや。うちもあれはかなりやさかいな」

「またやってるやろ、それ、そっくり渡したる」

「あれにも噛んでんのかいな」

「8300で一気やから登ってるやろ」

「とんでもねぇのぅ」

「まあ、また来年でええな」

「ええやろ」


 よーし、止まったな。


 ミツヤさえ逃がしたらこっちのもんさ。

 ここいら辺り、焦土にしたる。

 1人残らず殺してやるからな、覚悟しとけよ。

 言ったはずだ、関わったら消すと。


 わざわざ意識を上に投影してんのに、絡めるそちらが悪いんだぞ。

 それも込みなら好きに暴れるだけだ。

 さて、確かに攻撃魔法のネタは少ないが、【暴風テンペスト】が良いか? それとも【竜巻トルネード】か? 【乱風ダウンバースト】でもいいぞ。

 混合エネルギー使用の風魔法なら、大抵の存在は粉砕する事になるぞ。

 貰った情報の中に、浮遊素子とやらがあるが、それになるだろうな。


 ええと、確か、貰った情報の中にこんなのがあったな。

『下の世界体験勝手』これ、貸してくれているらしいんだ。


 それを踏まえて手を出せよ。


(う……そ、そんな)



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