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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 冬休み
39/119

39 懐石

 


 予約という事ですんなり通してくれたものの、何となく雰囲気が……ううむ、この格好のせいだな。

 さすがに舞台裏を明かす訳にはいかんが、あんまり変な雰囲気は困るぞ。

 折角の懐石料理なんだし、じっくり味わいたいんだからよ。


「ほお、これはまた」

「おいおい、良いのかよ、こんなとこ」

「予算の半分はここだ」

「うげ、マジかよ」

「オレは冬の京料理が食いたくて来たようなものだ。だからじっくり味わうからな」

「お前、そういや、料理に拘りがあるんだな」

「実はな、地元にも行きつけの料亭があってな」

「マジかぁ」

「月に1回の贅沢だけどな」

「今度、そこいいか」

「ああ、連れてってやるさ」

「いや、割り勘で良いからよ」

「ええて、気にすんなて」

「けどよぅ」

「1万のコースで割り勘か」

「嘘だろ」

「心配無いて、稼ぎは充分やから」

「どうにもそれがなぁ……本当はどれぐらいなんだよ。顧問弁護士とか言ってたろ」

「先に味わおうぜ」

「ああ、そうだったな」


 本館の座敷に案内され、座布団に座る。

 趣のある庭を眺めながら、先付から味わっていく。

 それは良いのだが、これは、何と言うか、参ったな。

 確かに行きつけのコースも美味いが、これはまた……はぁぁ、至福だ。


 ミツヤは普通に食ってるが、オレはじっくり味わいながら庭を眺めている。

 京都で暮らすのも悪くないと思わせるな。

 ふむ、そうだなぁ……もし、機会があればこういうところに通えるような場所に住むのも良いかも知れない。

 風呂の焚きつけになりそうだけど、あるものは使わないとな。


 しかし、今から京都の高校に変更する訳にもいかんし、どうすっかな。

 転校ってのもなんだし、卒業してから近くに住まうか。

 オレだけなら別に、【転移ワールドアクセス】ですぐだけどな。

 ふむ、常連になりたいと思わせる店だな。

 あっちの常連どうしよう、参ったな。


「おい、寒くないかよ」

「そうか? まあ、閉めても良いが、庭の景色がまた趣があって」

「頼む」

「あいよ」


 ううむ、まあいいか。

 それにしても美味いな、どれもこれも。

 てかもう食ったのかよ。


「えらく早いな」

「なんかよ、量が少ないからよ」

「味わって食うもんだぞ」

「美味かった」

「はぁぁ、まあいいけどな」

「これで、いくらなんだ」

「10万」

「嘘だろ」

「ああ、これも美味いな」

「ううう」


 42万8000ポイントのうち、ここで2人で20万ポイント使ってんだ。

 だから予算の半分は間違いない。

 はぁぁ、本当に美味いな。

 また予約して来るかな。

 ここいいな……ふうっ、美味かったな。


「はぁぁ、満足満足」

「2人で10万だよな」

「まあそう言う事にしておくか」

「マジかよ」

「記念にはなったろ」

「一生の記念だな」

「毎日食いたいとは思わんのか」

「1年でいくらだよ。そんなの無理に決まってるだろ」

「3650万か」

「なぁ、もう出ようぜ」

「これ飲んだらな」


 ミツヤには向かないのかな、こういうところ。

 よし、また来るか……気に入ったぜ、ここ。


 帰りに念の為に聞いてみると、やはり予約が必要だけど、今度からは直接電話で良いそうだ。

 もう一見じゃないからだろうけど、直電用にと名刺をくれた。

 ここに電話すれば良いらしい。

 よしよし、次は春休みかな、クククッ。


「うしっ、次行くぜ」

「次って何処だよ」

「あんさん」

「はぁぁ、そうだったぜ」

「逃げたらヒットマン」

「うげぇぇ」



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