37 補導
意味不明ながらも、適当に誤魔化して朝食に行く。
ちょっと早かったと、ミツヤと共に散歩と言ってそこらをうろつく。
途中、変な存在が近付くので、またもや【枯渇】と【吸収】のコンボで退治。
オレは充足感が得られるからありがたいけど、存在消しても良かったのかねぇ。
もし困るのなら接触を控えてくれるとありがたいんだが、手出ししといて文句を言われても困るよな。
上の奴らに通じるように、今は混ぜた力でやってんだ。
だからもし、上の関連でも存在が消えちまうから、嫌ならオレ達に関わるなよな。
あの星で、意識の底で、ひたすら検証しての研鑽の時間。
【表層】は同じ時の繰り返しだったけど、オレはもうひたすらの研鑽だったさ。
かれこれ……まああの星の時間で150年ぐらいだったかなぁ。
元の世界と比べれば知れた時間だけど、それでもかなりだと思うぞ。
よく考えてみれば、オレだけで串肉4枠か。
つまりあの星の関係者、オレ以外に99人居たのかよ。
150年で1人4枠の消費なら、1ページが無くなるのも分かるな。
結局あの星って何の為の星だったんだ? まさかオレみたいな存在の為の修練場か?
まあもう終わった事だけどな。
ミツヤと共に朝食を食べ、そのままチェックアウトしてタクシーに乗る。
ちょっと黄色いオーラが嫌だけど、駅まで運んでもらう。
どうにもよろしくない雰囲気を感じ、規定料金で駅前で降りる。
やれやれ、頼むから通報とかは無しにしてくれよな。
そう思ったのに、駅で切符をあれこれやっていると、近付いてくる公僕。
あの野郎、やっぱり通報しやがったか、参ったなぁ。
「ちょっと君達」【暗示誘導】
オレ達に話しかけたと思ったら、隣のおっさんに話しかける。
やれやれ、困ったもんだ。
ミツヤを促してこっそりとっとと……逃げろや逃げろ。
「ヤバいぜ、何だあれ」
「早くスーツを買おうぜ。幹部みたいな格好しないと補導されるぞ」
「そっか、その為もあるのかよ」
「ホテル系は代理店の名前でクリアしても、タクシーとかは無理だからな」
「あのタクシーかよ、くそったれ」
「京都に着いたらまずは服だ」
「おっしゃ」
そう思ったのに、列車の中で補導とか、どうなっているんだよ。
大体、オレ達は普通に観光しているだけなのに、補導する意味あるのかよ。
「しかしね、まだ中学生だろ、君達は」
「だから何」
「親御さんは承知しているのかね」
「今頃は北陸だ」
「子供だけで旅行に行かせて、自分達は別の場所か、何て親だ」
「行かせたのはオレだ。資金は全てオレ持ちだ」
「そんな事があるはずがないだろ、さあ、最寄の駅で降りるんだ」
「あんまりしつこいと、うちの顧問弁護士に連絡するぞ」
「何が顧問弁護士だ。あのね、そういうのは色々とお金が掛かるんだ。言うだけでは何もやれんのだよ」
「はぁぁ、もういい」
「いいね、京都で降りるんだ」
「はいはい」
どのみち京都までだから関係無いが、煩いから山口県から来たと思わせておいた訳で、京都でとんぼ帰りで山口に送り返すつもりでいるようだ。
さてと、顧問に連絡しとこうか。
(ううむ、それはいささか強引じゃの……どうにも民間の補導員のようで、連絡先もままならず……なればの、最寄の交番で相談するのじゃ……そこから電話したら対応してくれる?……無論じゃ……じゃあ、改めてそうするね……しかし、ワシも旅行したいのぅ……あれ、100億、抜いたんだよね……ううむ、まあそうじゃがの……しっかり抜いてよね……うむ、そうじゃの)
おっかしいな、生涯専属料で納得したはずなのに、まだ抜いてないのかよ。
いくら何でも色々手続きもあるんだし、しっかり抜いてくれないと。
さてと、京都に着いたら交番だったな。
大体、民間の補導員ってな、どういう意味だろう。
中学生見かけたらこんな横暴を勝手にやって良いって決まっているのか?
ストレス発散に言い掛かりをつけようって、ヤの付く自由業の奴らと変わらんような気もするが。
おっと、もうじきか、よしよし、交番で決着を着けてやるぞ。
駅で降りるとすっかり気分は警察官のようで、オレの腕を掴んで引っ張っていく。
最寄の交番に自ら行くか、ご苦労様だ。
「こいつら、中学生で旅行とか抜かすから補導しました」
「ああ、ご苦労様です」
「当務ご苦労様です。当方は自らの資金を用い、代理店経由での旅。それを一方的な拘束で困っています。既に顧問弁護士と相談し、こちらから再度連絡する事になっていますので、ご面倒と思いますが、こちらに連絡をお願いします」
「え……それは」
「こんな事ばかり言うんですよ。全く、クソ生意気な」
「こちらが顧問の名刺です。連絡お願いします」
「何処で拾ったのか知らんが、そんなのが通用すると思うな」
「まあまあ、後はこちらでやりますから」
「しっかり罪にしてやってください」
「一応、こちらに連絡先をお願いします。金一封の送付もありますので」
「いや、それが目当てという訳では……まあ、連絡先は書きますが」
やれやれ、金の為にやってんだな。
金の話で雰囲気がコロリと変わりやがったし。
その隙にもう1人の警官がうちの顧問に電話をしている。
これで何とかなるだろうけど、こいつを何とかしてくれよな。
「君、悪かったね、ああいう人も多くてね」
「じゃあもう良いんですね」
「うむ、確かに中学生だが、君は仕事を持っているそうだし、その資金の管理も頼んでいるそうじゃないか。そう言う事なら問題無いよ」
「彼はどうなりますか。錯誤とは言え、当方の言を全く信じず、暴言の数々。もし、行き過ぎと思われるなら、起訴しても良いですが」
「何とか穏便にしてくれるかね」
「分かりました。折角の旅行なので、このまま楽しみたいと思います」
「ああいう存在も、居ないと困る場合もあるんでね」
「はい、では」
「旅を楽しんでね」
「ありがとうございます」
やれやれ、さあ、行こうぜ。
「あ、お前ら、さては逃げて来たな」
はぁぁ、またかよ、この野郎。
仕方が無い、対抗させてもらうぞ。
腕を掴むから、それに対して関節技。
痛い痛いと煩いが、このままさっきの交番に……「あのー」
「こいつら逮捕してくれ、暴行の現行犯だぁ」
「あのな、アンタが現行犯だよ。オレはアンタの暴行に対して現行犯で逮捕したの、分かる? 現行犯の場合は民間人でもやれるの知らないの? 」
「何をされたんだい」
「逃げたと言われて腕を掴んできた。いきなりの拘束に対し、正当防衛を行使。暴言を受けたのでここに連れて来た」
「あのですね、この子はいいんですよ」
「まだ中学生だぞ、こいつらは」
「だからですね、この子は仕事を持ってまして、自分の稼ぎでの旅なんですよ。その事はこの子の顧問弁護士さんも証言してくれまして、当方としては止める理由は無いんですよ」
「そんなの嘘に決まってるだろ。ちょっと考えたら分かるはずだ」
「ひまわりと天秤をバカにすると、アンタ、起訴されるぞ」
「ほら、こんな生意気な事を」
「いや、それは本当だから」
「後はお願いします」
「ああ、分かったから行きなさい」
「ありがと、おまわりさん」
「何をする、横暴だぁぁ」




