32 温泉
「これだけでメシの代わりになるな」
「おう、オレもう弁当要らねぇぜ」
「オレもこれでいいや」
「それ、何処で売ってたのかね、やけに美味しそうだが」
「駅前の屋台」
「ううむ、それは残念だね」
「高かったから止めようかと思ったけど、匂いに負けた」
「やはり1000円ぐらいかね」
「その倍」
「ううむ……だが、しかし、それだけの大きさの肉が5つか。まあ、屋台なら妥当か」
「そのうち群馬名物になるかも」
「ははは、なるといいね。うん、情報ありがとう」
「どう致しまして」
本当なら補導対策で裏の奴らの格好にしようかと思ったけど、【暗示】があるならそんなの不要。
職質は逸らしてやれば良いだけだ。
連行すら近隣の奴らに流してやれば、関係無い奴を連れて行く。
その後でそいつがどうなるかなんて、知った事では無いさ。
誤認逮捕で免職になろうと、オレには全く関係無いさ。
もっとも、そういう事態にするつもりはない。
もう、食料は自前でやれるんだから。
さて、今夜にでもまた少し飲んでおくか。
どうにもあれが無いとな。
まあいい、今はこの飴で……うん、美味い。
「お、アレ食ってんのか。よし、オレも……うん、うめぇ」
知らずに食うが美味いか。
つまり、こいつも血を美味く感じるんだな。
同類となると、最悪、堕とされた罪人なのか。
はぁぁ、そんな舞台裏、知りたくないな。
だから飲まなくて良いようにそいつをやるからな。
オレの体験が終わるまで、そいつで凌げばいいさ。
今はこの世界の中で遊んでいるから……これはフタだな。
しっかし退屈だよな、列車の移動ってな。
それでも何とか到着し、タクシーでまずはホテルに移動。
ガキ2人に少し黄色いオーラだが、代理店差し回しのチケットでクリア。
こういう時にはやはり、代理店の名前が効くな。
「市内観光も良いけどよ、風呂入ろうぜ、ミツヤ」
「まだ時間あるだろ、街行こうぜ」
「温泉浸かってのんびりしてよ、明日から観光で良いだろ」
「まあなぁ、寒いからそのほうが良いか」
「寒がりミツヤが外に出るとか、また珍しいぜ」
「いやな、最近、調子が良くてな」
「そりゃ良かったな」
「今も妙に身体がポカポカするんだぜ」
「もっと飴食え」
「あれってそんな効果なのかよ」
「おうっ、滋養強壮効果のある飴だぜ」
「おし、食っとこう」
ジャムの空き瓶に詰めて渡したから、当分あるだろ。
無くなったら言え、いくらでもやるからよ。
言いたくないなら言わなくて良い。
そんなの普通の奴には到底、話せる内容じゃねぇしな。
秘密を抱えて生きるのも大変だろうけど、話したくないなら詮索はしない。
そこまで深く関わると、後々……ああ、これもフタだ。
「タビユケバァァァ」
「うわぁぁ、お前、歌うなぁぁ」
「ううむ、そんなに外れてるかな」
「近所迷惑だぜ」
「参ったなぁ」
「ダイコンおろしをゴリゴリと、たっぷり作りたいんだけど。今はダイコン安くない。だーからあんまりつくーれない。たけぇたけぇダイコンたけぇ、かーしてやーる」
「あれっ、これって」
「ダイコン高ぇ、の歌だ」
「ダイコン代貸すの歌だろ」
「なんだ、知ってたのかよ」
「観るのは嫌いじゃないよ」
「まあなぁ、けど、年末だからもうオフだからよ、それがちょいと残念だよな」
「また、シーズンの時に来れば良いじゃない」
「また良いのかよ」
「余裕だぜ」
「そりゃ楽しみだな」
「いい湯だなん」
「ああ、気持ち良いな」
のんびり浸かると気持ちが良い。
身体がじんわりして、ふわ~とした気分になり……
頭がボーっとして……少しのぼせたか。
「はぁぁ、ふわふわするぅ」
「のぼせたのかよ」
「かもなぁ、はぁぁぁ」
「部屋に戻ろうぜ」
「あ、仲居さん」
「はい、何でしょう」
「キキョウの間なんだけど、ソフトジュースでお願い」
「ああ、未成年ね、分かったわ」
「いくら旅でも違反は違反」
「感心な子ね、はいはい」
「おい、ちょっとぐらい良いだろ」
「こいつにお猪口1杯分」
「あはは」
「そんだけかよ」
「今はもう元服とか無いしさ、時代の流れだよ」
「まあそうよねぇ、昔ならもう成人なのね」
「ああ、働いているしな。3月には確定申告の身だ」
「あら、そうなの? 」
「高校は自分の金で行く」
「凄いわね」
「そういう訳で、この旅は慰安旅行みたいなものさ」
「そうだったのねぇ」
「てな訳で、伝言お願い」
「うんうん、伝えとくからね」
黄色には対策で青くなるってか。




