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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 2学期
29/119

29 実力

 


【青山、職員室に来い】


「あははは、いきなり呼び出し食らってやんの」

「ううむ、何の用だろう」

「カンニングに決まってんだろ」

「あれは実力」

「嘘を言いやがれ」

「まあいいよ」


 やれやれ、放送で呼び出すなよな。

 すっかりカンニングだと思われているじゃねぇか。

 わざとのカンニング宣言だと言うのに。

 あれで実力を隠したつもりだけど、ちょっとやり過ぎたかな。


「失礼します」

「お前、カンニングをしたらしいな」

「あのねぇ、言ったでしょ、苛められるって。だからあれは予防線なの。あれで皆はカンニングと思うからさ、苛めにならないと」

「ならあれがお前の本気だと言うのか」

「大体さ、オレ、クラスで1位だよ。誰の答案を見ればそれが可能なの? 」

「まあ……そう言われればそうだがな」

「先生だけに教えるけど、オレ、英語とドイツ語喋れるよ」

「おいおい、それはまた」

「フランス語もかなりなんだ。語学好きだし」

「ううむ、まさかお前がそこまでとはな」

「高校出たら留学とか考えてんだ」

「実力隠しもやり過ぎだぞ」

「苛めは本当に辛かったんだよ」

「そうか、見てやれなくて悪かったな」

「でも、後数ヶ月。もういいさ」

「この成績なら余裕だが、油断はするなよ」

「はい」


 さすがにな、トップの奴らのプライドを折る訳にはいくまい。

 あいつらは国立狙っている奴だしさ。

 だから少し手を抜いたってのに、おっかしいな。

 オール95点を狙ったのに、他の奴らは何してたんだ。

 8位ぐらいになると思ったのに、3位は少し高過ぎだぞ。


 トップグループの奴ら、意気消沈してないと良いんだが……悪かったな。


「コージ、お前、あれ、本気なのか? 」

「カンニング宣言、コンプリート」

「どうやったんだよ」

「済まない、それは誰にも言えないんだ」

「まさか受験でも使うつもりかよ」

「ああそうさ、近くの高校の為だ。オレは本気でカンニングをする」

「どんな方法かは知らないけどよ、オレもやりたいぜ」

「お前は余裕だろ」

「絶対って訳じゃないしよ」

「心配するな。万が一、お前が落ちたらオレはお前付いて行く」

「良いのかよ」

「大体、最初はお前が言ってたんだろうが。オレに付いて来るって」

「まあそうだけどよ」

「だから心配は要らないさ」

「ああ、オレも本気でやるさ」

「そんな事より、旅行を忘れんなよ」

「あ、そうだったな」


 そして恒例の買い食いを経て、交差点で別れて家に帰る。

 家に入ると何故か父さんが……何か用かな?


「お前、期末どうだったんだ」

「まあ、それなり? 」

「あの高校を受けるんだし、それなりじゃダメだろう」

「ダメなら県外だね」

「独り暮らしは何かとな」

「急にどうしたんだよ」

「いやな、店の件だけどな、どうにも巧くいかなくてな」

「それで? 」

「あの高校ならまだ授業料も安いが、県外だと下宿代も掛かるだろ」

「ああ、つまり、追加の融資が欲しいと」

「春になれば好転するはずなんだ。だからな、もう少し悪いが」

「ああ良いよ」

「悪いな」



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