26 博打
たっぷり燃えた後、軽く何か食べて帰ろうって話になり、繁華街を歩いていると、ミツヤの知人と出会う。
かつて、この辺りで幅を利かせていたらしく、昔は本当に悪ガキだったのだと判明した。
昔と言っても中1の頃らしく、彼は先輩らしい。
今は中卒で働いているらしいけど、その職業が実に気になるところだ。
だってまるでチンピラそのものだし、こりゃ下手するとゲソ付きか。
黄色いオーラだから判らないけど、それはミツヤと話しているからそうなのかも知れない。
普段が赤っぽいオーラなら間違い無い。
オレは少し離れて会話に耳を傾ける。
どうやら夜の遊びのお誘いのようだ。
非合法のカジノとか、もろに広域系のお誘いだ。
ミツヤは金が無いと断るつもりだが、貸してやるからと誘いも甚だしい。
元手5万貸してやるから、儲けて増やして帰りには6万返したら、後の儲けは好きにしろと言う訳だ。
カラス金より酷い金利だな。
聞くところによると、夜借りて朝、カラスがカーと鳴いたら1割金利が付くとか。
その倍だからとんでもない金利なのも分かるだろう。
世には10日で1割、トイチすら裏金融と呼ばれていて、違法な金利と言われるぐらいなのに。
どうにも断り切れなくて、仕方が無く納得させられた形になってしまったミツヤに対し、金はオレが貸すからと告げる。
「おいおい、兄ちゃん、そんなにあるのかよ」
「1人5万の掛け金か、余裕だぜ」
「ほお、そいつは頼もしいぜ。おい、ミツヤ、良いダチ持ってんじゃねぇか」
「こいつは素人なんだ、今回限りでいいよな」
「ああ、これっきりな、いいだろう」
「お前、本当に大丈夫なのか? 」
「問題無いさ」
「なら、良いけどよ」
「ほれ、こいつを持っとけ」
「財布?……うお、10万あるぜ」
「そいつが軍資金だ」
「良いんだな」
「ここに同じ財布がもう1つ」
「はぁぁ、あんまし使い過ぎんなよ」
「使わないと減らないんだ。ガンガン減らしてくれ」
「おうっ、景気の良い話だな」
「稼ぎ場に連れてってくれるらしいし、儲けたら祝儀は出してやるさ」
「そうか、期待しているぜ」
おーおー、舐めまくっていますね。
だけど本当に祝儀は出してやるから心配するな。
ルーレットな、36倍で36倍で36倍か、クククッ。
どんだけ稼げるか試してみるのも一興。
【暗示】ある限り、いくら派手に稼いでも問題無いんだよ。
スキル最高、記憶最高、戻って最高、クククッ。
入場料1万円と言われ、オレが2万払って中に入る。
ミツヤはひとまずと5万をチップに交換し、オレは10万をチップにする。
真っ青な数字に1点掛け。
「おいおい、兄ちゃん、強気だな」
「金はまだあるから」
「どこぞのボンかいな。ワシゃそんな強気は無理じゃいの」
「ホイ来た」
「うおおお、とんでもないのぅ」
「36倍で360万獲得だな」
「大したもんじゃな」
「次はこいつだ」
「また1点かいの」
「よし、オレもそいつに乗るぜ」
「ふむ、ならばワシも乗ろうかいの」
カラコロ……
「ホイ来た」
「うおおお、当たったぜ」
「ううむ、これは儲けたの」
「360万の36倍、〆て1億2960万だぜ」
「とんでもないのぅ。おぬし、天才かの」
「博打の才能ってあるもんだろ、クククッ」
「ほんにのぅ。で、次はどれじゃ」
「00だ」
「ううむ、つまり、親の総取りかの」
「オレは精算」
「僅か2回とはの」
「精算お願い」
「あ、ああ……」
「兄ちゃん、ちょいとこっちに来てくれんかの」
「精算は? 」
「それはしようが、先にちょいとな」
「ならこのチップ、この袋に入れて持っていくぞ」
「心配は要らん。ちゃんと交換してやるから」
「証文書くか? 初対面で口約束とか、どんな間抜けだよ」
「おまはん、筋者かいな」
「素人だけど? 」
「ええから来いっちゅうとるんじゃ」
「先に精算や。終わったらどこにでも行ったるわい」
「ええやろ……おい、用意せぇ」
「へいっ」
さーて、周囲は真っ赤だな。




