22 暗躍
深夜の山手の竹やぶの中。
担いできた警官を投げ下ろす。
まだ息があるようなので、事情を説明させよう。
「おい、起きろ」
「う……くそ、放せ」
「何処の組織の者だ。オレの家族に手を出すとは、良い度胸じゃねぇか」
「なっ、まさか、こんなガキが」
「このまま死ぬか、素直に話すか、2つに1つだ」
「警官を殺すと罪が重い事は……ちっ、知っての事か」
「それは発覚すればの事だろ。死体は組織が始末する。発覚は無いさ」
「シルフだ」
「対抗組織か、運が無かったな」
「待て、レミングなら移籍してもいい。だから殺さないでくれ」
「残念だよ」
「まさか、グレムリンなのか。あんなところがお前を? そんな……ぐっ、たの、ころ、いっ」
これはいかんな。
本物か中二病か分からんぞ。
まさかそんな組織がこの国にあるとも思えんが、現職の警官が死に瀕して嘘を吐くと言うのも考え難い。
かと言ってなぁ、何だよ、グレムリンとかレミングとかシルフとか、ファンタジー脳かよ。
もういい、飲んじまおう。
ああ、至福のこの時、堪らんな。
そこらの竹を引き抜いて穴に投棄して元に戻す。
確かに地下で繋がっている竹だけど、今のオレの力で引き抜けば、そこらの竹ごと抜けるもんだな。
さあ、死体を見つけるのが大変だぞ。
繋がっている根の下に埋めたから、そこらの竹を抜かないと取れないぞ。
さて、この200万は元はオレの金。
返してもらったからな、クククッ。
はああ、いい気持ちだねぇ。
自販機でジュースを買わないと……レモン味のこれこれ。
すっぺぇぇ……
あの私立探偵に追い付き、追加料金で調査を依頼。
グレムリンとレミングとシルフの事。
まあ、念の為ってところかな。
「あいつはどうなった」
「世界から消えた」
「そうか」
「足りるか? 」
「ああ、何とか調べてみよう」
「頼むな、では」
「戻れない、か」
「無理だな」
「そうか」
☆
翌日、まだ黄色い母親のオーラだが、連絡途絶で青くなってくれると良いんだがな。
しかし、万引きってどういう意味だ。
金が無い訳でもあるまいし。
いや、もしかして無いのか?
へそくりが無いのかも知れない。
素知らぬ振りして母親に、不足分の300万を渡しておく。
これで何とかなると言っていたけど、受け渡しの男はもうこの世に居ない。
連絡途絶でその金、どうするのかな。
まあ、オレはまた下ろして来るけど、足りなければまた貸してやるよ。
帰りに別支店でまた500万下ろす。
もう、自分で使う事にならないぞ。
とりあえず引き出しに入れておこう。
また足りないとか言うと困るしな。
口座残金1600万ほどか。
もう毎回銀行とか面倒でいかんな。
あーあ、こんな時にマジックボックスとかあると便利なのにな。
ファンタジー脳が移ったかな、クククッ。
でもなぁ、あると良いよなぁ。
こんなところ、人には見せられないけど、今は幸い部屋の中だ。
ああ、あると良いよな、マジックボックス……
せーの。
中二病のようですが。せーの……ううう、出ないよぅ。




