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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 2学期
17/119

17 投棄

 


 下着ドロの男に捜査が流れたせいか、周辺から刑事の姿が消えた。

 思わぬアクシデントと思ったが、あれは予想以上に効果があった。

 あいつには余罪がかなりあり、中には婦女暴行もあったらしい。

 つまり、別件で起訴される寸前のような状態だったようで、覚悟の自殺と思われいてそこに偽装の疑いは無い。

 まあなぁ、誰が4階の屋上まで飛び上がれるよ。


 これも想定外って事なんだろう。


      ☆ 


「あれ、本当に宝くじかしら」

「どうしてそう思うんだ」

「だってね、ご近所の奥さんが500万円当たった時でも、周囲からバレたって聞くし」

「それは旦那とか子供からバレたんだろう」

「そうかも知れないけど、そんな大金を換金していたら、絶対に誰かに知られると思わない? 」

「まあ、言われてみればそうだなぁ」

「でも、コーちゃんがそんな嘘を付くとか思いたくないし」

「これは僕の想像だけどね」

「え、何か判るの? 」

「いや、証拠は何も無い。ただの想像だよ」

「それでもいいから聞かせて」

「これは僕の若気の至りの話なんだけどね、中学でも身体が大きかった事もあって、先輩に連れられて競馬に行った事があるんだよ」

「え、じゃあ、もしかして」

「この市には競輪場があるよね」

「ああ、それで、それなら」

「多分、興味だと思うんだ。僕もそうだったからね。そこで偶然に大穴でも当てて、僕達が心配するから宝くじだと言ったんじゃないかと思うんだ」

「だったらこのまま騙されてあげましょうよ」

「うん、それが良いと思うんだ。大人になったらきっと、当時の事を話してくれるから」

「判ったわ、あなた」

「あいつはそこらの子とは違う。大金を得ても不良になったりはしない」

「そうよね、今まで気が付かなかったぐらいですもの」

「だから心配ないさ」


 やれやれ、親にバレちまったか。

 だが、盗聴器はバレてないみたいだな。

 本人が居ない時の内緒話なんでのはな、クラスで体験済みなのだよ。

 だからダイニングのコンセントは盗聴器内蔵になっている。

 通販で39800円って高いのか安いのかよく分からないけど、それなりに音は拾えている。

 それはともかく、黙認のつもりならそれで良いだろう。

 商売が巧くいかないようなら追加で貸してやるからよ。


 本当はあげても良いんだけどな。


 だけど、そうなると依存になりそうでどうにもな。

 親に依存されて暮らすなど、どんな人生だよと言いたくなる。

 だからあくまでも融資であり、返却されるのを待つことになる。

 それに、あげたの場合は贈与税も掛かるしな。

 全く、他人の金の動きにイチイチ税金掛けやがってからに。


 もらって掛け、売って掛け、買って掛け、貯めて掛けってか。

 何度も何度も同じ金に対して税金を掛けやがってよ、いい加減にしろってんだ。

 そのうちサラリーマンにでもなれば、天引きしといて更にいくらでも引くんだろ。

 なら最初からスッパリと引いて、後は非課税にしろってんだ。


 まあいい、オレはそんな生活は嫌だから、何とかするつもりでいるけどな。

 取られる以上に稼ぎ、後は弁護士に任せてやればいい。

 あいつらはそれが仕事なんだし、良いようにしてくれるだろう。


 体育祭でのオレ達は、赤勝て白勝てと応援だけで終わった。

 あんなのはやりたい奴だけがやればいいんであって、嫌な者に強制参加とか冗談じゃない。

 だから殊更に辞退しまくったんだ。

 まあ、友達は少ないし、普段から仲間外れみたいなオレだから、推薦とかも殆ど無かったし。

 元苛めっ子が推薦とか言いやがるから、全力で辞退したのは言うまでもない。


 そいつは後で軽く……クククッ。


 自転車のハンドルがねじれていたのは誰のせいでしょう、クククッ。

 ざまあみろってんだ。

 まだ何かするようなら、ダンプが踏んだみたいにクシャクシャに丸めてやるさ。

 あれ、あいつ、何かまだ用でもあるのかな?


「おい、お前」

「何か用か」

「最近、態度がでかいじゃねぇかよ。今日はあいつもいねぇし、ちょっと来い」

「もういい加減にしてくれんか」

「あんだと、コラ」

「さすがにもう限界なんだ。お前を殺したくない、止まってくれ」

「ふふん、何だそれは。そんなんでオレが止まると思ってんのかよ」

「なら、仕方が無いな。どこにでも連れて行け」

「ふん、思い知らせてやる」


 自転車の事でイラついて? オレを痛め付けて発散ですか。

 校舎の裏の? 体育倉庫の脇の? ふーん、こんな場所があったのか。

 そこの空き缶、もしてしてヤニの関連かな? まあ、関係無いけど。


 おいおい、これって何の穴だ。


「ここなら泣こうが叫ぼうが誰も助けには来ねぇからな」

「なら、お前を殺しても誰も来ないか」

「まだ言うのかよ、おらおらおら……ぐぇぇ」


 あ、うっかり首を折っちまったな。

 やれやれ、手加減が難しいんだから手を出すなよな。

 殺したくないと言ったのに、聞かないんだからな、全くもう。

 外に一度出し、中に頭から投棄する。

 ありゃ元の汲み取りの穴だ。

 すっかり乾燥して匂いも無かったが、足を踏み外したらヤバい場所だ。

 あいつは穴の中に誤って落ちて、首の骨を折って死んだと。


 まあいい、とっとと帰るか。


 オレは関係ねぇからな。

 うっかり飲んだりしたら、猟奇殺人のほうに分類されそうだし、ここはそのまま放置だ。

 しっかし、最近どうにも近くで殺しが発生するな。

 手加減を巧く覚えないと、またぞろ殺っちまうぞ。


 翌日からそいつは行方不明となり、捜査員の手によって遺体が発見される。

 穴の中に誤って転落し、首の骨を折って死亡したという結論になったようだ。

 その穴の中にはタバコの吸殻が散乱していて、不良達の溜まり場と判明し、学校の手によって塞がれた。

 あいつも不良仲間だった事もあり、一時は他の奴らへの疑惑もあったようだが、そのまま自損で終わったようだ。


 ミツヤは相変わらず変な持論を展開していたが、あんまり自ら疑惑を招くような事は言うなよな。



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