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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 2学期
15/119

15 目撃

 


「おい、起きろ」

「うう……何だ……それにこれは、くそ、動かせない」

「ミツヤを犯人と断定したのはお前の過ちだ」

「まさか、お前が……くそっ、だからあんな激しい反応を」

「このまま死ぬのも何だろうし、遺言ぐらいは聞いてやる」

「誰、うぐ……」

「おいおい、誰か助けてくれと言うのを遺言にしたいのか。こんな場所に人が居るはずも無いだろうに、もっと建設的な言動にしろよな」

「お前、妙に手馴れているな」

「それで、遺言を聞かせてくれ」

「くそぅ、どうあっても殺すつもりか。刑事を殺したら罪が重いぐらいは知っているんだろうな」

「ふふん、当然だろうが」

「くそぅ……どうしても無理か」

「諦めるんだな。それで、遺言は? 」

「もう少し待ってくれ」

「嫌だね。だってその手に乗ると緊急配備されちまうだろ」

「何だと……」

「発信機、押したの、知らないと思ったか」

「くそぅぅぅぅ……」

「それが遺言か、さようなら」

「待て、待って……むーむー」


 急がないと拙いな。


 あれから7分……本部に緊急連絡が行ったとして、ここに来るのに30分とは掛かるまい。

 口を塞いで噛み付いてまたもや飲み尽くす。

 血は垂れてないはずだが……林の中に引きずり込む。

 軽く絞る感じで吸い尽くし、でかい岩を転がしてその下に埋めておく。

 数トンはありそうな岩だけど、簡単に動いたな。

 さてこの警察手帳をどうするかが問題だ。

 手袋ごしだから指紋は問題無いとして、そこらに捨てる訳にもいかん。


 後はこの発信機だ。


 GPS発信機の場合、ここで壊したら犯行現場と宣伝するようなものだ。

 さあ、このまま隣町まで運んで後、適当な場所で壊して捨てるしかあるまい。

 処分用の靴もいよいよおさらばになる時が来たな。


 そのまま山を下り、下ったところで靴を交換。

 予備の靴、2足目といくか。

 現場の土の付いた靴をビニール袋に入れて、県道と思しき道を隣の町まで走る。

 もう全速全速、それしか考えてない。


 途中で学校を発見し、塀を軽く飛び越えて焼却炉。

 処分する靴を投入し、ラストの靴に履き替えて履いている靴も捨てる。

 さあ、逃げろや逃げろだ。


 おや、ここって女子高か。


 よしよし、ならば女子寮に発信機を投入してやろう。

 待てよ、屋上まで飛び上がれないか?

 全力でジャンプすると、何とか手が届く。


 うへぇ、化け物だな、こりゃ。


 4階建ての寮の屋上に手が届くとか、あり得ないだろ。

 そのまま屋上によじ登り、そこらに発信機を転がしておく。

 やれやれ、後はこいつを……うげ、見られた。


「ごめんね」

「え、何、君」

「さようなら」


 屋上で何をしていたのかは知らんが、見られたからには仕方が無い。

 そこらに落ちていたロープで首を絞めて殺し、靴を脱がして揃えて置く。

 その上に警察手帳を置いて、ロープの端を固定して、そいつを静かに階下に垂らす。

 これで自殺の偽装になるとは思うが、どうなるかな。

 しっかし、これ、飛び降りで死なないよな。


 えいやっ……うほ、やれやれ、ちょっと怖かったけど、思ったよりは楽だったな。


 さて、後は帰るだけだ。

 あーあ、オレも凶悪犯になっちまったな。

 別の学校で残りの靴とリュックを焼却炉に投入し、持っていたベンジンをぶちまけて火を付ける。

 それに使ったマッチも捨て、手袋も投入しておく。


 残ったのは靴底の模様の違う靴。


 さて、自宅まで、ちょいと遠回りして帰りますかね。

 あの山を迂回するように、大回りして帰る。

 ちょうどサイクリングコースがある、河川敷を経由するコース。

 まだまだ時刻は早いからと、河川敷という事もあって全力で疾走する。


 風がやけに強いな。


 ふと横を見ると、車を追い越しているぞ。

 おいおい、こんな早朝の時刻の車って、70キロぐらい出してないか?

 それを抜く? あり得ないだろ。


 それでも時間との勝負だと、更に速度を上げていく。

 汗だくになりはしたものの、見覚えのある町並みが見えてくる。

 そのまま近所まで走り、ペースを落として家に辿り付く。


 はぁぁ、アクシデントがあったけど、何とか終わったか。


 致命的なアクシデントだったけどな。

 余計な殺しと証拠隠滅が加わったけど、結果オーライと言えなくもない。

 ただ、無差別が加わったけど、どのみち殺しは殺し、関係無いか。


 ごめんな、名も知らぬ女の子。



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