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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 2学期
14/119

14 対処

 


 そう言えばと、ミツヤは殺人事件の話を始め、犯人は猟奇的な殺人鬼で吸血鬼なんだと断言する。

 そんな話は洒落にならないから止めて欲しいのに、話題を変えようと思ってもミツヤが面白がって話を元に戻してくる。

 確かにオレは昔から、その手の話は嫌いって事になっているんだけど、オレは当事者だからヤバいんだって。

 何とか話を変えようとしているんだけど、からかわれているようで、どうにもこうにも。


 うわーうわーと騒いでいると、またしても刑事さんの登場だ。


 おかしいな、本気でオレをマークしているのか。

 さすがに3度の邂逅は不自然にも程がある。

 そう思っていたら話はミツヤのほうに振ってくる。

 2人に話し掛けてはいるんだけど、刑事さんの意識はミツヤのほうに向いているようだ。


 ミツヤはそんな事とはつゆ知らず、ミステリー物のつもりで持論を展開する。

 凶器である尖った針のようなもの……確かにミツヤもオレと同じ串を食っていた。

 オレは串を処分したが、ミツヤはそのまま道に捨てたらしい。

 捜査の途中でそれが見つかり、凶器と断定されたのかも知れない。

 確かに血管を食い破ったけど、喉まで貫通した痕跡は残っていたのだろう。


 だから千枚通しのような武器で攻撃した後、何らかの方法で血を抜いて猟奇殺人に見せかけたと。

 まあそういうのがミツヤの持論だったのだが、悪い事にそれが捜査の結論に近く、ミツヤへの疑いが濃くなったようだ。

 確かに少年の犯罪は隠すより顕示する傾向にある。

 ネットで犯行声明を出して捕まったり、思わせぶりな事をやって自滅したりと、そういう傾向がいくらか見られる。


 だからミツヤもその手の類なのかも知れないと、思われているのかも知れない。

 オレはミツヤの弁護に回り、性格や普段の行動から、そんな事はあり得ないと話す。

 ミステリー好きで推理はするけど、だからと言って犯人扱いとかあり得ないと刑事さんに詰め寄る。


「ああ、悪かったね。そんなつもりじゃないんだよ」

「とにかく、ミツヤはそんな事する奴じゃないっ」

「コージ……」

「ミツヤ、法律の勉強をしようよ。もし、言われても反撃できるように、裁判の準備をするんだ」

「いや、もう疑ってはいないから」

「当てになるもんか。大人ってすぐにそうやって誤魔化して、いきなり逮捕して拘留とかするに決まってる」

「やれやれ、参ったね」

「とにかく、ミツヤは無罪だ。いいね、ミツヤ」

「ああ、刑事訴訟法か、何とかしてやるさ」

「さすがにミステリー好き、そういう知識もあるんだね」

「実はよ、大学に行けたら法学部に行きたくてよ、将来は弁護士ってのがオレの進路だ」

「すげぇな、ミツヤ」

「おうよ、負けるかよ」


(どうだ、あの激しい反応。犯人はあいつで決まりだろ……ですが、激しい反応は彼の友人のほうですよ……確かにそうだが、志望が弁護士とかわざとらし過ぎるとは思わないか……確かにそれも考えられますが、そもそも動機はどうなんですか……そりゃ興味本位か何かだろ。今時のガキはそんな理由で簡単に殺しをやっちまう。恐ろしい世の中になったもんだ……ですが、被害者はゲソ付きですよ。その手の方向はどうなんですか……そっちも色々と調べているが、特にこれと言った容疑者も出なくてな……ともかく、相手は少年なんです。だからそっちが確定するまで手出しは無理ですよ……確かにそうだが、オレはあいつだと確定している……とにかく、もうこれ以上手出しては拙いです。上も良い顔はしてないんですから……ああ、判ったよ。手は出さんさ……捜査もこの辺りからは手を引きます……そいつも上からか……ええ、あれ以上刺激して本当に裁判とかにされたら、証拠が確定しないと進退にも関わる事になりますよ……そこまで上は……ええ、ですから手を引いてくれますね……ああ、仕方ねぇな)


(くそっ、あんな推理、自分の犯行をそれらしく語ったに違いないのに……どうして判らない……少年の犯行は顕示するものなんだ。だからああやって得意気に話すのがその証拠だ……なのに……くそ、これ以上やるとクビかよ……はぁぁ、みすみす犯人を逃す事になると言うのに)


 いかんな、思い込みの激しい刑事か。


 ミステリーの推理で犯人扱いとは、迷惑にも程があるぞ。

 確かにミツヤは関係無いが、ちょいと激しく反応しちまったから、オレにも容疑が来るかも知れん。

 となれば、これはもう処分するしかあるまいな。


 いや、別に食欲じゃないよ。


 はぁぁ、白々しいかなぁ。

 まあ、ここは一石二鳥って事で、はぁぁ、参ったな。

 それはともかく、ここはミツヤに疑いが行かないように、子供ではやれない事をすればいい。

 例えばあの山頂、あそこは車で行くしか方法が無い。

 確かにバスもありはするが、ターゲットを抱えたままバスに乗るなど、捕まえてくれと言っているのに等しい。


 殺れるはずだ……あの刑事のヤサを突き止め、計画を練る。

 見た目で推定した体重と同程度の荷物を担いだまま、3時に起きてフルマラソン開始。

 ここいらは早朝には全く人通りも無く、車も滅多に通らない。

 4時半に頂上に到着するが、少し汗ばんだぐらいで何とかなった。

 帰り道はゆっくりと帰り、6時過ぎに何とか到着。


 荷物を部屋に置いてそのまま時間まで腕立てやら腹筋やら。

 荷物とは辞書と百科事典とバーベルの錘の類。

 でかいリュックに満載にして担いだが、そこまで重さを感じなかったな。

 あれって何キロあったんだろう。

 バーベルの錘りだけで80キロはあったけど、あの刑事って100キロ超えてないよな。


 土曜日の夜、家を抜け出してあの刑事の家を張る。

 残業になったらしく、帰ったのは深夜の1時前。

 何やら酔っ払っているようで、後ろから鈍器の一殴りで簡単に無力化。

 そのままリュックに詰めてあの山頂に走る。


 途中で猿ぐつわと手足を縛り、山頂で問答開始だ。



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