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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 2学期
13/119

13 変化

 


 買い物でどうしても近くを通らないといけない事になり、回り道も嫌なので近くを通る。

 刑事と思しき人が通行中の人達に声を掛けている。

 地面にわざとらしく板が敷き詰めてあり、いかにも足跡を調べていますと言いたげだ。

 しまったな、もう少しほとぼりを冷ませば良かったか。

 だけど切らした物は買わなくてはならない。

 仕方が無く話をする事にする。


 まさかUターンとかするはずもないよね。


「ちょっといいかい」

「何かあったんですか」

「実はね、この近くで殺人事件があってね」

「うぇぇぇ……」

「ははっ、ごめんごめん、怖がらせちゃったかな」

「あの、それで、犯人は……」

「それがね、まだなんだ」

「うぇぇぇ……」

「怪しい人を見なかったかい」

「怪しいって言われても」

「そうだよね。今日はごめんね」

「買い物が怖くなりました」

「本当にごめんね」


(どうだった……相手は子供ですよ。それに怖がらせちゃったし……そんなに怯えていたのか……そりゃいきなり殺人事件とか言えば大抵は驚きますよ……まあそうだなぁ……それで、他には何か出て無いんですか……それがな、元々人通りの少ない路地裏と言うか、滅多に人の通らない路地でな……それで足跡は……比べてはみたんだが、あの子の靴とは模様が違う……ちょっとわざとらしい方法でしたけど、気付いてないようでした……そりゃそうだろ、気付かないように足跡を調べる新兵器なんだ。バレては困るさ……便利になったものですね……そうだな)


 やはりあの板はそういう意味だったんだな。

 道に板を敷き詰めてあるのからそう思ったが、靴底の模様を調べる為にしてはちょっとわざとらし過ぎないか?

 警察も色々と工夫が足りないような気がするが、気のせいかねぇ。


 肩を丸めて店まで行き、必要な品を買い求める。

 帰りは少し遠回りして家に向かえば、またしても刑事さんの登場だ。

 顔を見てまた話し掛けて来たので、怖いから遠回りしたのだと答えると、またしても謝罪の言葉を受け取った。


 ううむ、拙かったかな。


 まあ、特定されたら素直に白状するしかあるまいが、バレない限りは自白はしないぞ。

 さすがに過剰防衛では収まりが付かないからな。

 しかし、捜査が始まったとなると、早朝マラソンは拙いか。

 仕方が無いので5時起きにして部屋で腕立てと腹筋を普段より多めにする事でお茶を濁す。

 普段は50回ずつだけど、これからはやれるだけだ。


 母親の気配と共に部屋を出る。


 時刻は7時50分。母親はこれからこれなら楽だわと言われ、なるべくそうするよと答えておいた。

 確かに普段は二度寝っぽい芝居で乗り切っているが、早朝マラソンを休止にした以上、時間の調整は問題無い。

 だけど、何百回やっても疲れないのはどうなっているんだろう。

 今朝なんて腕立て500回の後に腹筋500回やって、スクワットを500回やってまた腕立て。

 それを繰り返して時間までやったと言うのに、軽い汗をかいたぐらいで疲れとかは殆ど感じないのだ。


 シャワーと洗顔を済ました後、朝食を食べて家を出る。

 ああ、今日は体力測定だったな。

 秋の運動会に向けての測定で、成績の良い者は競技の内定とか何とか。

 毎年無難に乗り切っていたが、今回は特に注意しなくてはなるまい。

 うっかりと本気でやったら拙いはずだ。

 それにしても、あれからオレの身体が変化しちまったのか、今までとは身体の具合が違うのだ。

 それこそ一流のアスリートの身体になったしまったような、いやそれを遥かに凌駕しちまったような。

 100メートル走……ゆっくりと走り出したのに周囲を置いてしまう感覚。


 ヤバいからわざと転げて最下位。


 そうしてのろのろと起き上がり、追い抜かないように付いていく。

 やれやれ、何とかなったな。

 それにしても足の傷。

 もうかさぶたになってる。

 やけに傷の治りが早いんだが、これも体質変化の影響か。


「お前、転げなかったら良い記録出てたかも知れんぞ」

「はは、まさか。オレなんて鈍足ですよ」

「いやいや、そんな事は無いぞ」

「とにかく、記録はあれでいいんですよね」

「まあ、転げたのは自己責任だしな」


 記録上はクラスで下から数えたほうが早い位の成績を確保し、垂直飛び対策に足を挫いた事にしようと、軽く足を引きずって歩く。

 そんなオレに教師はすぐに気付き、保健室で見て貰えと記録はパスした。

 あれで体育祭のデータには入るまい。

 どのみち、毎年オレは平均以下の成績を出していて、競技に参加した事は無い。

 だから急に好成績になるとか普通はあり得ないので、教師はオレ抜きで組み立てるに違いない。

 大体、帰宅部に期待するほうが間違っている。

 クラブの連中の晴れ舞台のようなものなのに、普段から全くそんな活動をしてない奴を参加させるなど、あり得ないだろうと思っているのだ。

 ミツヤも巧く切り抜けたらしく、帰り道ではしっかり手を抜いたと笑っている。

 そんなオレはかなり必死で手を抜いたのだが、お互い応援のみで何とかなりそうだなと、買い食いしながらそんな話をする。


 今日はゲソ串だ。



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