エピローグ 4 end
これで終わりです。
さて、何を使うべきかな。
とりあえず【広域】は必要だろう。
【地域】じゃ少し範囲が足りない。
切り刻んで粉砕させるにはと……
(妙に重苦しい雰囲気になったが、詠唱は聞こえぬの。なれどその魔力の高まりは尋常ではあるまい。これはとんでもないの、下手をすれば確かに王都は……後は威力じゃの)
広範囲にエアカッターを発生させ、切り刻んだ後に巻き上げて叩き落してか。
まずは【風盾】で範囲指定して【広域】にすると。
その中に【風刃】を【広域】にして投入後、【暴風】でかき混ぜて【乱風】で叩き潰すか。
全て広域化の必要があるから、ちょっと余計に魔力を使いそうだな。
「それじゃあいくぜ。まずはこいつだ【広域風盾】」
「それは何じゃ」
「おいおい、範囲指定しないと拙いだろ。近くに村もあるしよ」
「なんと、シールドかの。しかもこの全域を覆う」
「次にこいつだ【広域暴風】」
「うぬぬぬ、これは……とんでもないが、これではモンスターが散らばるぞ」
「【広域乱風】」
「この風は……」
「【風盾】ほれ、これでいいな」
「ううむ、とんでもないのぅ」
「おお、粉砕しちまったな。どうだ、王都にも通用しそうだろ、クククッ」
「止め役か、確かに必要じゃの。放置すれば確かに国、いや、世界が危ういの」
(うおおお、またかよ。あいつ、どんだけ暴れてんだよ。この前も万単位で来たってのに……まあ、色々あったしよ、楽しめているならそれでいいさ)
「それにしてもおぬし、到底人間とは思えぬの」
「あれ? オレ、人間って言ったっけ? 」
「ううぬ、やはりかの」
「いやいや、うちのボスは温厚だからさ、こうやって好き勝手にさせてくれてんのよ。けどな、いくら温厚でも直属の部下を殺したら……分かるよな」
「そやつはおぬしより強いのかの」
「なんで弱い奴に従うんだ、あり得ないだろ」
「他に誰が知っておる」
「アンタだけ。だけど切り札にはならないよ。オレの名前、本当はその下に続きがあるんだ。キルト=キエル……何が消えるかはお楽しみ」
「話した相手全てかの」
「それだけで終われば良いんだけどね。まあそれはボスの判断で決まるさ。温厚なボスだから、もしかすると国1つで終わるかも知れないしさ」
「おぬしは人間をどう思うておる」
「うーん、どうって言われても困るな。あんた、牛をどう思ってる? 」
「家畜扱いかの」
「本当の事を言うとさ、牛もちゃんと会話しているんだよ。もちろんモンスターもな。それを退治するのを当たり前に思うとか、下等動物扱いしてんのは人間だ。だからオレも同様にする。オレはあんたら人間と同様の事をしているに過ぎんよ。だけどまだ、素材を採る為だけに人間を狩らないからましかな。知らないと思うからもう1つ教えるけど、若返りの薬と万能薬はその材料は人間なんだよ」
「なん、じゃと」
「どっかの王族が密かに製造しているんだけど、それをどう思うよ。罪人を有効活用しているつもりになっているんだけど、それでよく神聖帝国が名乗れるね」
「まさか、そこまでの」
「何時までも若々しいのは別に、神の恩恵でも何でも無いんだ。一族郎党って刑罰は、赤子でも逃れる事は出来ないんだけど、その赤子から若返りの薬だ」
「そのような忌まわしき話、信じれぬの」
「けどさ、禁書庫の中にあったんだよ、その製法が。しかも王宮の地下に製造の為の工房もあるし、職人も永久就職だ。今回の侯爵の処罰も一族郎党になるだろうけど、確かあそこには去年生まれた赤子が4人居たはずだ。これでまた若々しい奴らが増える事になりそうだな」
「つまりおぬしは禁書庫に潜り込み、更には王宮にも潜り込んだと言うのじゃな」
「事情通に話を聞いてさ、本当か嘘か確かめに行ったんだ。あいつ、驚いていたぜ」
「そやつは何者じゃ」
「ボスじゃないダンジョンマスターさ。ちょっとした知り合いでな」
「それでおぬしはそれを作ったのかの」
「山で赤子を殺す人間があちこちに居てな、口減らしって言うらしいが、死体の有効活用ぐらいは構わんだろ。どうせ朽ちるかモンスターの餌になるんだから」
「忌まわしい話よの」
「ああ、これも知らないと思うから教えるけど、人間が人間を食うのはタブーになってるけど、それをすると寿命が延びるんだよ。どっかの教皇はかれこれ、数百年生きているって話だけど、どうやっているんだろうね」
「もう聞きとうない、そのような話。ワシをたぶらかすつもりか、魔族めが」
「ああその魔族ってのも元々は人間でさ、魔力が強い一族を妬んで迫害したのが始まりなんだ。これはまた別のダンジョンマスターからの話な。あいつら不老不死だから意外と長生きな奴らも居てさ、当時の話って色々話してくれるんだ。それによると、魔法として確立させた事になっている、かつての魔法の創立者だけど、彼が実は迫害者でさ、技術だけ盗んで迫害し、栄光独り占めで歴史に残るって面白い話だよな」
「あり得ぬ、あり得ぬ、そのような話」
「あの魔力を調べる水晶だけど、あれって単なる強さを調べる効果しかないんだよ。あたかも魔族測定器っぽいけど、一定以上の魔力に反応して魔族扱いするだけの話でさ、だから生まれても殺されるんだ、魔法の才能に溢れた人間はさ。だから逆に言えば魔力を抑えるだけで誰でもそいつを逃れる事が出来る。オレが証人だろ」
「そのような事、あり得ぬ」
「魔族認定された奴、軒並み王宮が連れて行くだろ。中で解体して食われてんだよ。哀れな話だよな。魔力の強い人間を食らうと、それだけ魔力量が増える事になる。そしてそうなれば長生きにも繋がるってよ」
「そこまでにするがよい、魔族めが」
やれやれ、まだ魔族とか言ってるよ、このおっさん。
ギルマスに憑依して何してんのかと思ったけど、まだ通用するつもりで居るのかねぇ。
大体、オレの波から世界外の存在って分からないとか、どんだけ雑魚なんだよ、この俯瞰。
管理も止めないようだし、このまま食っちまっても良いのかねぇ、クククッ。
《対象の脅威を確認。排除プログラム起動1分前……対抗プログラム構築中》
(やれやれ、困りますね。何処から来たのかは知りませんが、通達するだけありがたいと思いなさい。ただね、あれは防げるような代物じゃないのですよ、超越者には。いかにもな反応をしましたが、それで留まると思うのは甘いですよ)
《次元断層構築・転移先を特異点に指定・発動10秒前……対象を特定・停止勧告》
(やれやれ、そんな言葉で止まると思うのですか、甘いですよ。そのまま特異点で時空粒子になってくださいな)
《対抗プログラム準備完了……3、2、1、発動……反転同期・次元転送・10倍返し・発動》
(な、何ですと、反転同期? 次元転送? そ、そんな、反転、反転、はん、う……)
ほおお、3回ぐらいは同期したか。だけど残りは無理だったみたいだな。まあ、次元が使えるなら戻って来れるだろうけど、残りの術式を解かないと暴発しちまうからな、うっかり戻ろうと思ったらそこでランダム転移になっちまうと。気付かなければ戻るまで6回の邪魔が入るんだけど、果たして何処で気付くかねぇ。
しかし、疲れたな……どっかでゆっくりと寝るか。
最近、色々と疲れさせられていたし、ここらで長期休暇も構うまい。
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世界は変わってもやる事は同じ。
彼は自由気ままに生きているようです。
今後、彼がどんな事をしでかすか、それはまた何時か語る事になると思います。
中途半端なようですけど、これでひとまず『魔皇子シリーズ』は終わりとなります。
駄文にお付き合いいただき、真にありがとうございました。
ありがとうございました。