表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 夏休み
10/119

10 解雇

 


 数日後、父親が昼間から自宅に居る。


「ただいまぁ……あれ、父さんどうしたの」

「ちょっとな……」

「お仕事、もしかしてまた転勤でこっちに? 」

「いや、まあ、そのな……」

「クビになったんですって」

「おい、お前……」

「この子ももう中学3年生。昔で言うなら元服の年よ」

「そうか、もうそんなになったのか」

「だから全てを話しましょう、あなた」

「……そう、だな……」


 そんなに不景気なはずはないのに、どうやら父親の会社が危なくなったらしい。

 その対策として役付きのクビ切りで凌ごうと言う事になり、事業縮小と共に父親の出張所は閉鎖され、支店長と父親は解雇される事になったらしい。

 父親はどうやら副支店長だったらしく、本来の退職金の2倍額で頼むと、社長に頭を下げられて納得してしまったとの事。

 支店長は食い下がったが、今では本店で給与も下がり、飼い殺しみたいになっているという。

 途中で抜けられてまだしも幸運だったと言うのが父親の言葉。


 仕事内容を聞いてみたのだが、どうにも今の時代に合ってないような仕事で、逆によく今までやってこれたなと感心してしまった。

 大体、好景気で事業拡大はいいが、それに合わせるとかあり得ないぞ。

 オレのような素人が考えても危険な投資だと思うのに、どうしてやっちゃったのかなって感じなのだ。

 だから景気が元に戻ればやっていけなくなったって、至極当たり前の話のようなんだが、オレが変なのか?

 経営の事なんかは知らんが、それでよく……今まで潰れなかったな。


 それはともかく、父親は38才でまだ働けると、次の仕事を探すらしい。

 母親はしばらくのんびりとしたほうがいいと理解がある。


 蓄えと退職金で今年一杯のんびりして、来年から仕事を探して4月の中途採用を目指すような事を言う。

 しかし、仕事内容から考えて、それなら自営業も不可能じゃ無さそうだ。

 企業としてやるから無理があるのであって、小さな店舗ならまだ成功の可能性は高い。

 なのでそれを父親に話し、確かにその手もあるなと言い、母親もそれなら手伝えそうだわねと話に乗る。

 ともかく、今年一杯はのんびりする予定なので、それも考えつつ過ごす事に決まったようだ。


 夏休みもあと少しとなった頃、ミツヤと共に今日は図書館でテスト勉強をやる。

 あいつは賢いので教わる気満々で行くのではあるが、借金の負い目なのがすぐに承諾してくれた。


 だからこういう関係は嫌だったんだけど。


 その時に残高0の郵便貯金と印鑑を返してもらった。

 どうやらあの金が予想以上に助かったらしく、アルバイトをすれば何とか高校に行けそうなのだと。

 親友に依存されるのも嫌なので、手持ちの金を見せない事にする。

 どんな奴でも大金を手にしたら、性格が変わると思うのだ。


 まあそんなオレも変わったんだしな。


 かつては1千万稼いで終わりにしようと思っていたが、今では1千億を元手に株取引だ。

 予定の1万倍に金が増えたのは予定外も甚だしいが、それをそのまま株取引というギャンブルに注ぎ込んだのも相当、金に対する姿勢が変わったか。

 そもそも、あんなに簡単に稼げるとか、想定外も甚だしい。

 だからまるでグルメになるように、自分の中の価値観が変わったのだろう。


 結局、宿題はミツヤにかなり助けてもらって何とか夕方には目処が付き、今日は悪かったと夕飯をおごる事にした。


「おいおい、こんな店、いいのかよ」

「たまにはいいんじゃない」

「お前もバイトしてんのか」

「いや、ちょっとした内職をな」

「どのぐらい儲けたんだ」

「50万」

「うおお、マジかよ」

「だから今日はおごりな」

「やった、ラッキー」


 常連がバレると拙いので、行ったのは高級レストラン。

 と言っても正装が必要なタイプではなく、あくまでも大衆向けの高級さなのだ。

 お勧めコースが1万円。

 行きつけの料亭と同じ価格のコースなので、それなりに期待はしていたのだが……ううむ。


 ミツヤはかなり喜んでいる様子。


 和洋折衷っぽいコースのようで、和の部分はかなり甘い。

 洋のほうは良く判らないが、とにかく和はイマイチ感一杯だった。

 それはともかく、ミツヤは満足したようで何よりだ。

 食後にゲーセンに行く事になり、スポンサーはオレと言う事で、閉店まで燃えまくったミツヤ。

 久しぶりに金を気にせず遊べたと、宿題のお礼のつもりなのにかなり感謝してくれた。

 また次の休みもアルバイトをするらしく、それを激励して別れた訳だ。


 ふう、久しぶりに遅くなったな。


 家に戻ると珍しいわねと、母親の一言で終わりのあっさりとしたもの。

 いつもは大抵夕飯には家に居て、そのまま夕食を食べて部屋でゴロゴロした後に寝る日常だったからだ。

 彼女はかなり放任に近く、なのにオレが不規則にならないせいか、最近では殆ど何も言って来ない。


 だからたまに遅くなってもあんな具合だ。


 父親はもう寝たらしく、温め直した夕食を食べてオレも寝る事にする。

 どうやら自営業のほうに気が向いたらしく、その実現に向けて色々と調査しているらしい。

 金が足りるのかと聞いてみたが、高校に行かせるぐらいは心配無いわよと、言われてしまってはそれで話が終わる。

 しかしそうなると県外の独り暮らしの計画は捨てるしかない。


 やはり同居で近くの高校の線は確実になるだろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ