第7話 いよいよ……
どうやら無視されたらしい。それか、言葉に詰まった。それのどちらか。
結衣が扉を開けると、一人の男性が時計を見ていた。
「あのーーすいません・・・・」
「あぁ、やっと来ましたか40分待ちましたよ」
さすが田舎の警察署だ。暇さが半端ない。
「では、こちらへどうぞ。お連れ様は、こちらでお待ちください」
「じゃぁBye-Bye」
結衣が珍しく英語っぽい発音をした。
「じゃぁな」
この場面が二人の別れを告げるような感じがした。
そして責任者っぽい人に案内されたのは、センスのないいすが3つ置いてあった部屋だった。
壁の色はベージュで、表彰されたようなものもない。
そりゃそうだ。こんな所にたいした事件は起こらなさそうだ。
「では、こちらのいすにおかけください」
「ありがとうございます」
「履歴書のほうをご提示ください」
「これです」
「おぉ、登竜紋高校といえばなかなかなところでございますね」
「それはそれはありがとうございます」
私には、ただのお世辞しか聞こえない。
「では、見た目的にも大丈夫そうなので入所決定です」
おいおい見た目的ってなんなんだよ。
あんたらそれでも警察か?
「とりあえず、ここにサインを。はんこでもかまいません」
「知ってます」
「なにか、のべられましたか?」
「い・いえ」
まさかそんな言葉が反射的に出るとは、思わなかった。
思わず笑いそうになり、唇が切れそうになるほど噛みしめた。
「ごっ結婚などされているのですか?」
くそくだらない質問を。何が言いたい、まったく意図が読めない。
「いいえ」
とりあえず適当に答える。
「同棲されているのですか?」
なんて質問をするんだいったい。おもいっきりプライパーシーを侵害してる。
「いいえ」
私は嘘をついた。嘘をつくしかなかった。
「それでは、今回の面接を終わりにいたします」
やけに早い15分しか経ってない。早く帰りたいのであろうか。
私は責任者に礼をしてから、入口にまっている結衣のもとにいった。
不思議なことに結衣は茜色をした、空を眺めていた。
「なにしてるん?」
「みたらわかるでしょ。空、眺めてんの」
いやそれぐらい分かっています。
「なんで、見てんの?」
「なんかね、私の昔の記憶を思い出してみたから」
「どんな思いで?」
「それは、今話せないね。さっそろそろ帰ろっか」
「電車賃は、だれが出すの?」
「なーに言ってんの。あんたに決まってるでしょ」
軽くでこピンを一発食らった。
「そうそう、今日ぐらい外食いかない?」
いきなりのお誘いに私は戸惑った。
でも、たまには外食も悪くない。私は結衣にOKサインをおくる。
結衣は、珍しく笑って返してくれた。
しばらくして電車が来た。なぜか特急電車だ。
「いいでしょたまには」
なんか今日は、かなり羽振りがいい。第一この電車は、特急券が必要だ。
「だれが、出すの?」
貧乏な私には、この質問は、とても大切だ。
「私でいいわよ。せっかく就職先決まったんだしね」
そういわれるとおごってもらうのが当然のような気もする。
電車にのると居心地が良かった。この電車は岡山まで行くらしい。
私たちが下りる8倍近い距離がある。
私がその車窓を眺めると、家が塵のように消え去っていく。
人も同じように。
私の心境は、どうなっているんだろう?
自分でも疑問に思う点だ。
こいつのことが好きか、好きじゃないか。
「まもなく枚方〜〜。津谷本線が乗り換えです。ご乗車ありがとうございました」
自分に質問をしていると目的駅に着いていた。
横を見ると結衣が寝ていた。全くきずかなかった。
「おい、起きろよ」
「ふぁ!?」
日本語が理解できない。寝起きはみんなこんなものか。
「さぁ降りるぞ」
「分かってますよ」
結衣は笑顔で下車した。その笑いが私には分らなかった。
「さぁ。どっか行こうか?もちろんあなたの出世払いでね」
「しゃぁないな、今日だけな」
「じゃぁファミレスでも行こうか」
デートの割には話がしょぼい。というかデートじゃない。
「何、食べるの?」
「うちは、スパゲティーでいい」
「普通ー・・」
「いいのそれで」
「案外普通もいいかもね」
あきらか結衣が頑張って話を合わせている。わかりやすすぎだ。
私は、久し振りに携帯をみた。
何件かのメールが着信していた。
しかも非通知で「誘拐!!」と書いてあった。
もしかして・・あの・・・過保護な結衣の姉が情報を流してたりして・・
だが、あんまり人を疑うのは、良くない。
そういえば前に一度同棲しているのがバレそうになったことがある。やっぱりこれは、誰か が情報を回しているとしか思ない。しかも悪質にだ。私には、あいつしか考えれない。
「おまたせしました」
私の料理が来た。チーズの匂いが意外ときつい。
「いただきます!」
私は少し大きめの声でいった。
結衣が笑っている。なんとなく私も笑った。
なんとなくだったので面白くなかった。
しばらくすると結衣の料理も来た。
あきらか結衣のほうが高そうである。
これでは、「人間平等」という言葉も嘘になる。
平等じゃないほうが私的には、ゲームをしている感じでおもしろい。
「あのさぁ・・・・・」
結衣が話してきた。
私のフォークをいったん皿の上におく。
「好きな人いた?」
予想外な質問。私は、のどが詰まった。
「ごめん。いきなりでさ」
「うーんとな……いる…かな」
「だれ?」
反射的に聞かれた。ここで「結衣」とは答えにくい。
「冗談、冗談」
ふー危ない。背中には汗がびっしょりだ。
まさか、結衣がこんなこと聞くなんて驚いた。
ここは、この謎を知るために聞いておくのも悪くない。
「なぜ、そんなこと聞くん?」
「いやいや、別にね。別に……」
どうやら謎は、解決しなかったらしい。
「フフッ」
私は、明るく笑ってみせた。
「フフフフッ」
彼女ものってくれた。
でも正直二人の関係は、あんまり長続きしそうでないきもする。
こういうのは、確実ではない。
でも私はできるだけ長いこと二人の関係を続けいていきたい。
それが今の夢だ………