第5話 フェイク
私はさっそく電話をかける。同時に結衣が、テレビをつけた。
「もしもし、そちらは琴羽警察署の方でしょうか?」
「うっ、やられた………」
きっとテレビの音だ。私は、まったく気にしない。
「大丈夫ですか?」
警察が私に質問してくる。続けて警察の声が聞こえた。
「警察、呼びましょうか?」
どうやら勘違いをしているらしい。というか、結衣テレビの音量小さくしろ!
普通のマナーだろ。お金持ちのご令嬢は、マナーを知らないらしい。
「あなたの家は、どこですか!?」
やばい、そろそろ警察が出動してしまう。私はようやく電話に出た。
「あぁ、大丈夫です」
私は唇をかみしめながら必死に笑いをこらえる。
「それより、ご用件は?」
あぁ、なんか忘れていた。まずは、そっちが大切だ。
「えぇと。前、職業掲示板の方で警官の方を募集してるのを拝見しました」
「そういうことなら、責任者に代わります」
さっさと代われ、この税金汚職野郎。どうせ、うちらの税金を給料にしてるんだろうが。
「えぇ、こんにちは」
愚痴をこぼしている間に代表のものが来たらしい。
「こんにちは」
「どういうご用件でしょうか?」
人が代わっても脳の構造はさっきの奴と。お前は、アウストラロピテクス(猿人)か。
さっきの奴になにも聞いてないのか?
とりあえず考え方を切り替える。
「あの……就職の方なんですか」
「あぁ、はいはい」
しゃべり方にしては、少し頼りない。さすが田舎の警察署の奴だ。
「でー、履歴書と面接行えば刑事のほうになれるのでしょうか」
「もちろんです!面接いつこれますか?」
やけにテンションが高い。ついていけない。
「では、明後日で」
「あぁ、明日ですね」
なんか、勘違いしているらしい。さすが猿人、いや原始人だ。考え方が違う。
「はっ?はぁ」
私は、微妙な反応しかできなかった。
「では明日よろしくお願いします、室井さん」
ようやく電話が切れた。
それにしても妙な奴だ。なぜか私の名前を知っている。
世の中に不思議な奴がいるもんだ。
私は深くため息をついた。
「ワンワン!」
こういう時に犬が吠えると、むかつく。それに大丈夫なのかこの仕事。
さっき電話に出た奴がのちに上司になる奴だろう。
どうしたらなれるのだ、あんな奴が責任者に。
「ワンワン!」
まだ吠えるか、この犬め。
私は冷蔵庫に保存されている、犬の食料となる骨を取りに行った。
「こんなものがうまいのか?」
私が最近、一番疑問に思う点だ。
犬に、餌をやると食べなかった。
包装されている袋の裏側をみると
「これを、冷蔵庫に保存しないでください」
先言え、この野郎。私は骨を電子レンジに持っていき温めた。
「バーーン!」
妙な爆発音が聞こえた。それは、電子レンジの方からだった。
「あぁ、爆発しちゃったか」
とうとう、自分もマイペースになった。
すると結衣が飛び出してきた。
「何が、あったのよ」
どうやら少しキレている。
まぁ当然か。私の言い訳が始まった。
「まぁ、いろいろとあってね。大丈夫、電子レンジは壊れてないから」
「はぁ……、壊れたら弁償ね」
あんた金あるだろうが。私はボッソとつぶやいた。
「冗談、冗談よ」
「えっ?」
私は彼女の演技にだまされたらしい。私の心の中の不安が気持ちをあおったらしい。
「別に壊れたら、私が払うわ」
さすが金持ちだ。そんなことば私には、言えない。
そう言って結衣は犬を散歩に連れて行った。
やけにおなかがすいた。今何時?と思い時計を見ると7時だった。
「おい結衣、晩飯は!?」
私はそう言って、走り出した。