第4話 新しい家族・新しい職業
「ワンワン!」
朝から犬の鳴き声が聞こえる。やかましい。
「ワンワン、ワンワン、ワンワン」
本当にしつこい。本当に犬か?
「ワンワン、ワンワン」
飼い主を探しに行くとするか。私は少し力強くドアを開けた。
するとそこには、ダンボールの中に子犬が入っていた。
ダンボールの前に1通の手紙が置いてあった。
手紙を読むため、いったん乱視用のめがねをはずす。
手紙にはこう書いてあった。
「いきなりすいません。私は香花という者です。
室井さんが、犬好きということを知りました。
なので捨て犬をあなたに受けとってもらえませんか?」
なんか妙な手紙だな。せめて自分の名前をあかしてもいいはずなんだが。
さらに、私の名前を知っている。
「なーにしてんの」
どうやら結衣が起きたらしい。今、9時だ。遅すぎる。
「ワン!」
いい加減に黙れ、この捨て犬。
「あっ!かわいい。これチワワじゃん」
なんじゃそりゃ。第1私は、犬に興味がない。犬好きと書いてあることが矛盾している。
「あのさ!この子新しい家族にしよう」
少しぐらい考えろ。第一食費は?犬小屋は?
「私は反対だな」
「大丈夫、大丈夫」
ほんとに結衣は、マイペースだ。
結衣がやってきて1ヶ月。仕事を辞任して1週間。
今までこんなに衝撃的なことはなかった。
しばらくして結衣は、私にはむかい。
「大丈夫、私が全部世話するから。散歩も」
「じゃぁいいか」
本当に私は、自分に甘い。なんでも自分の意見を通さない。
親に昔から言われてきたことだ。
それより、今大事なのは仕事だ。結衣の残り150万もそのうち消える。
人に頼ってばっかじゃいけない。
転職のことを考えながらパソコンをつける。
まずブックマークにされている「職業掲示板」のサイトを開ける。
今日は、珍しく10件ほどの紹介が入っていた。
一個ずつチェックしていく。
1つだけ妙な広告が入っていた。
「最近、刑事(警察)が不足しています。履歴書と面接をしててくれれば、
なれるかもしれません。もしもあなたが、正義を貫くひとなのであれば
ご連絡お願いします 電話番号 ○○ー△△△△ー□□□□
琴羽警察署」
不思議だな。そういう仕事は、掲示板に書き込むのか?
しかもいきなり刑事まで昇格だ。交番に勤務している人は我慢できなはずだ。
第1何処だ?琴羽って。
調べてみると面白いことが分かった。琴羽というのは、奈良らしい。
私が住んでいる大阪府枚方市から約100kmということぐらいだ。
酉服電車で枚方駅から概来駅まで行き取峪線で琴羽駅まで行く。
そこに琴羽警察署があるらしい。
周辺地図を調べると田舎だ。何もない。近くにしょぼい商店街があるだけだ。
「そりゃぁ、刑事さんとか不足するよな」
しばらくして私の心の中にある好奇心が目を覚ました。
よし早速電話だ。結衣の話の進展の速さがうつってしまった。
「ワンワン!!」
あっ犬に餌やるの忘れていた。というかそれは結衣の仕事だろ。まぁいいか。なんかうちまでのんきになっている。
気晴らしに近くにあるコンビ二に行って餌を買いにいった。
なぜかやけに高い。骨、20個入りでで500円。
これからは、犬を御犬様と呼ぶべきなのか。昔とは、社会の情勢が変わったらしい。
「ワンワン!!」
「美味しいか!」
私は、久しぶりに笑顔が戻った気がする。
「よし、やるぞ!」