第3話 窮地に
「ガー」自動ドアが開く。そうだった無理やり結衣に連れられてきた。
ある意味誘拐だ。
「いらっしゃいませ!」
店員の声が響く。あきらか「なんか買って帰れよ」みたいな口調だ。
「ねぇ、早く来て!!」
結衣が力強い声で言った。
「なんか、すごくない?」
はぁ?何がだ。周りを見渡しても冷蔵庫しかない。
私は、適当な反応を見せた。
「あぁ、確かに」
「なにがか分かってんの?」
痛いところをつかれた。どうする俺。どうする。
「大丈夫?」
「大丈夫だ」
「それよりどれがいい?」
なんとかその場面を過ごしたようだ。助かった。
最近の冷蔵庫は、結構、機能が発達している。私は最近の科学に関心する。
冷蔵庫は、主に両ドアが売れているようだ。しかも400リットルぐらいの。
価格は20万。科学についての関心は、帳消しだ。20万って私の月収ぐらいだ。
「おーい、大丈夫か?」
「あぁ……」
「今日は、重症だね」
「じゃあ私、決めていい?」
「分かった、任せよう。ただし変なもの買うんじゃね―よ」
「OK!」
結衣は、そう言って走っていった。まるで子供みたいだ。
ただ問題なのが、結衣の金銭感覚だ。私みたいに、10円単位までけっちたりしないだろう。
まさかと思うが20万の買ったりしないだろう。というかうちには、入らない。
「おーい、室井決めたよ!」
私は結衣の金銭感覚を見に行った。
「どうこれ?」
値段は、30万。しばいてやろうか。
「無理、無理!」
「でも購入権は、うちだよ!」
あっ、やられた。そこは、痛い。よし第2の言い訳発動!
「家に入らないじゃ?」
「あらかじめ、寸法計らしてもらった」
天才だこいつ。どこの大学行ってたんだ?それか、ただの几帳面さか。
「しゃぁない。買ってもいい」
「ありがと」
結衣はそう言って、レジに突っ走った。
「ブルブル」私の携帯が震えた。相手を確かめるためにみると松井からだ。
「はい、もしもし」
「おぅ!室井か!」
あんたが、かけたんだからそれぐらい分かっているだろう。
「あのさ、室井。お前の変な噂聞いちまってな」
「なんだよそれ」
「おまえさ、誘拐した?」
「はっ?」
というか何で知っている?まぁ誘拐じゃないけど。
「そんな訳ねぇだろう」
「やっぱりな、そんなの嘘に決まっているよな」
「普通に考えてそうだろ」
「じゃぁな今お取り込み中なんで、バイバイ室井」
「さいなら……」
大変なことになったな。どうやら結衣の過保護な姉が噂を広めているらしい。
「おまたせ」
「それじゃぁ帰ろう」
やけに口調が低くい。背中には汗が、びっしょりだ。
あいつことだからな、ならべく早めに手を打たないとヤバイ。
その日の夜は、寝付けなかった。
外の犬の遠吠えがよく聞こえる。