リック博士?とハルマきゅん6
今回は、コメディがない!シリアス一直線!!
「さて、仕事にでも行きますかね」
トーマスはシワが目立つ白衣を整えながら言った。彼もまた研究者の一人なのだ。
「そういえばさ、トーマスのロボットはいないの?見たことないんだけど……お友達になりたいなって」
ハルマの一言に彼は一瞬だけ酷く悲しい顔をしたように見えた。そして人を惹き付けるような笑顔に戻る。
「いなくなったんだよ……アイツはとっても賢いロボットだったんだ。俺があのときミスをしなければ会えたのかもな……いや、すでにもう、会っていたりして」
「えええっ!?ナニソレ知りたい!気になる!!」
「残念だが、今日は仕事なんだ、またあとで教えてやる」
トーマスはハルマの頭を軽く叩くと家から出ていってしまった。そこには、リックの姿が見当たらなかった。
「父さん、またいない」
リック博士の研究所の地下にはこじんまりとした部屋がある。リックはそこにいた。彼の頭には目に見える形で電流が流れている。汗と目眩が酷く、ふらふらとした足取りは見ているだけでも痛々しい。やっとの想いで彼は目的地へと辿り着く。
「Elen……やめてくれ……私は」
腕は、自分の意思とは反対によく動く。目の前には人間の少女の頭部だけが置いてあった。導線が何本も繋がっている。“ソレ”は、精巧な作りをした美しい顔をしていた。雪のように白く、長い髪、そして青空を象った無機質な瞳が静かに彼を見つめる。彼の手は自分の頭部を掴み、上にあげた。頭部はすんなりと抜けた。
「ハルマに何かしたら絶対に赦すものか、貴様……」
頭部だけのリックはよく喋る。彼がついていた首の上には少女の頭部がついている、よく見ると彼によく似ていた。
「ハルマに今まで何かしたことあったかしら?」
「無い……けど」
「疲れているのよ、フフッ……お休みなさいリック。美味しいお料理を食べるために……ね」
リック、と呼ばれた頭部はゆっくりと瞼を閉じる。少女のようなソレは横にあるコードと導線に繋がれた少女のような純真な体を見た。
「彼にあげてしまうのは勿体ないけれど、これは世界のため、私がやらないとですものね。嬉しいわ、貴方がハルマとともに育ってくれることが」
そう言い残して、少女は地下室を後にした。
「父さん、どこいってたの?トーマス行っちゃったよ?」
ハルマが後ろにやって来たリックに似たソレに話しかける。違う人物だと気がついていないようだ。
「すまないね、ハルマきゅん」
「きゅん、は要らないってば!」
「いいの!ハルマきゅん、今日は都会に出てみないかい?」
都会という一言にハルマの目は輝く。
「やったあ!父さん、どういう風の吹き回し?行きたい行きたい!」
「じゃあ、私は準備してくるから、ハルマきゅんも準備」
言い終わる前に彼の姿は既に無かった。
「鬼神の……いえ、リックの最後の晩餐の準備を始めないといけないわね」
少女の―――Elenの黒い笑みが、美しい笑い声が部屋に響く。
彼らもまた、研究所を出ていった。
良い文体だ……ヒャハハハハ!
いったい彼女は何なんだ!?そして、最後の晩餐の意味とは?ドキドキのロボット物語シリアス編―――始動。