リック博士とハルマきゅん04
新キャラ登場。
トーマス・アヴァンギャルド
トーマス=みんながよく知る発明家から
アヴァンギャルド=前衛美術。シュールレアリズムや抽象絵画を指す場合が多い。軍事用語である。「何か(旧世代に属する芸術、保守的な権威、資本主義体制など、様々なもの)への攻撃の先頭に立つ」という意味。(wiki参照)
「ハルマきゅぅん!シャワーあいたよ」
「んー……ンンッ!?」
ハルマの目の前にはリックに似ている人が立っていた。彼に似た白い髪、空色の瞳。違うのはその瞳が大きめで、ハルマより少し小さいところだ。
「靴と眼鏡忘れているよ?」
「えっ……あっ、いっけなーい!眼鏡眼鏡!!……アイタッ!」
おもいっきり壁に額をぶつけた音がした。
「父さん、無理しなくていいと思うんだけど……夜だし、人なんて滅多に……」
タイミングよく呼び鈴がならされた。中年期を迎えた男声の声も響く。
「はっ、トーマスが来るんだった」
リックは、ぼやけて歪んでいる世界をゆっくり見渡す。
「僕が行くから待ってて、動かないで」ハルマは、ソファーにリックを座らせて、玄関へ向かった。
「どちら様ですかー」
「トーマスだよ、トーマス・アヴァンギャルド」
「なーんだ、ただの反逆者か」
鍵を開けて、トーマスを中に入れる。ハルマはこの人物と面識があった。それはそのはず、トーマスは週一ペースでここに来るのだ。
「反逆者じゃねぇよ、ただ意見が会わねえだけだって。さっきペルセポネに誘われちまってよ、まあ、やらねえけどな」
「できる頭が足りてないんじゃない?」
「言うようになったじゃねーか、ポンコツロボットさんよぉ……それより、酒だ、酒。麦酒持ってきたぜ」
吹き抜けの廊下にリックは顔を出した。トーマスの姿を見ると、いっそう目を輝かせる。
「お酒ー」
トーマスは現在の彼を見てからかうように笑う。
「お子ちゃまは飲めねぇもんなぁ、Elenちゃんよう」
リックは子供じゃないもーんと袋に入っている缶ビールをとって、開けている。幼い容姿からは想像しにくい姿だった。
「あと、Elenっていうのやめて」
Elenというのは彼らが大学生の時に流行ったロックバンドのヴォーカルの名前だ。
「歌えよー」
「いーやっ!」
二人仲がいいのは嬉しいかったが、ハルマは少し寂しくなった。トーマスはリックの同級生である。彼はハルマが知らない過去の彼をよく知っている。リックは過去のことをあまり話してくれない。ハルマは真剣にトーマスの話を聞くのが好きだった。
「でも、ビール二缶目でコロッといっちゃうだろ?」
「いかないよ?大天才の私がビールごときに負けないからね」
と言いながら毎回、すぐに酔っぱらうのがリックだった。彼は生まれつき体が弱い。あまり耐えられるたちではなかった。
「ハルマはどう思うよ?コイツのこと大天才とか思ってるか?」
「頭には自称大天才って書き直してる。あと、コツさえわかればチョロい」
「え、それ酷い!!今までみんなしてだましてたんだね!?」
リックは半泣きになりながら抗議する。既に酒が回ってきているようだ。
「まだ飲むか?」リックはブンブンと首を振る。自分の程度をわきまえることができるようになったのだ。
「ハルマくんにわるいから……」
どちらかと言えば彼は今、物凄く眠いのだ。目は半開きになり、グラスを片手にうつらうつらしている。
「落とすなよー?」
「ん……」
「喋ることすらままならないわけ?自分の布団で寝てきなよ」
ハルマは急かしながらも彼が自分の部屋に戻るのを手伝っている。リックは視力の悪さと眠気と酒で歩くことすら難しかった。
「ロボットってこういうときに役立つんだな」
トーマスは麦酒を一口啜ってから言った。
「じゃあ、部屋まで持ってってよ!小さいとはいえ繊細な生き物には過わりないから」
「繊細な生き物ってお前なぁ……仮にも博士だろ、仮にも」
「いいの」
二人はこの寝ている困った子供に向けて微笑んだ。
今日は長い。けど、実は全く進んでないという事実であり、リック博士の意外な一面が。って話。