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「結婚しよう。」  作者: まひる
第二章
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6.俺はメルを手放せない【5】

 それからヴォルがいつものように食事を作ってくれました。お腹があまり空いていないと言った私の為に、軽くスープを作ってくれたので助かります。本当に私、至れり尽くせりですね。ヴォルのアウトドアな生活力にも驚かされっぱなしですが。


 お腹が満たされると、ウトウトと睡魔がやって来ます。私は本能で生きているようです。考え込んでも結局は本能に勝てないなんて、人としてどうかと思いますがこれが私なのですね。諦めましょう。悲しくなります。


「寝る。」


「あ、はい。」


 片付けを終えたヴォルが、いつものように寝具を一つ広げます。片付けすら手伝わない私にも、ヴォルは優しいですね。先に横になったヴォルが、当たり前のように私に手を差し伸べてきます。本当に私、抱き枕としてしか役に立っていません。それとも、抱き枕としても役に立っていないのかも。


 背中から伝わる熱を感じながら、抱き枕としての存在価値を考えます。確かにサイズとしては、ヴォルの腕の中にスッポリ収まる小型軽量です。…軽量に疑問を抱かないで下さいね?それでも、抱き心地には自信がありません。何て言っても、ボンキュッボンな体型ではないのですから。


「ヴォル?」


「…何だ。」


 寝てしまっているかもと、ソッと声を掛けてみました。返答が返ってきて少し安心しました。


「私、抱き枕としては…役に立っています?」


 これって、それ以外ではどうにもならないと自分で言っているようなものですが。


「…あぁ。」


 一言、ですね。これでは肯定かどうかが分かりかねます…。


「メルがいないと眠れない。」


「っ?!」


 その言葉に思わず息を呑んでしまいました。何と言うか、珍しくストレートなお言葉ですね。深い意味はなくても、必要とされている事に心がギュッとなりました。役に立てているようです。嬉しいです。


 …あ、ヴォルの呼吸が穏やかになりました。眠ってしまったのでしょうか。後ろから抱き締められているので振り返れませんが、何となくそう思います。先程のお言葉は眠かったから、ですかね?でも、嬉しかったのでそれで良いです。少しでもヴォルに必要とされているのなら、それは私の存在価値なのでしょう。


 元々村の食事処でも大して役に立てていませんでしたから、今ヴォルに必要とされているのなら喜ぶべき事。私は…我が儘は言えないのです。言ってはいけないのです。必要とされているのなら、それで良いではないですか。



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