2.命の浄化【2】
「顔が面白い。」
………はい?何やらとても失礼な言葉が聞こえましたが。そりゃ私はあなたと違って見目麗しい訳でもないですし、大勢に囲まれれば皆と一緒に見える程の容姿でしかありませんがっ。
「あなた、失礼です。」
本当はギャンギャンわめき散らしたいところですが、今の私の状況的に不利ですのでやめました。大体、支えてもらわなければウマウマさんから落ちます。自信を持って言えますから。
「メルはコロコロと表情が良く変わる。」
表情が?まぁ…ヴォルはあまり…と言うか、ほとんど変化は見えませんが。無駄に見目が良いから、無表情はちょっと。
「ヴォルは怖いです。」
素直に告げてみます。と言うか、誘拐犯でした。私、このままどうなるのでしょう。
「安心しろ。」
「な…っ!でしたら、私をマヌサワ村に帰して下さい。」
「拒否する。」
キーッ!!何ですか、この人はっ。私は勝手にお持ち帰りして良いものじゃありません!
「俺はお前に手を出さない。そしてお前を守る。」
支離滅裂です。私に安心を告げるなら、元の村に戻してくれなければ無理です。安心出来ません。しかも私を守るとか、意味不明です。
「私はっ!」
「静かに。」
突然言葉を制されました。何でしょう、少しばかりヴォルの声が固いです。と、状況の分からなかった私にも理解出来る物音が聞こえました。ズドン、ズドンって。危険なカホリがしまふ。カンじゃいました。
「デカイな。」
何がですか。聞きたくないですが、見たくもないですがっ。でもそう言う時ってのは、大概が叶いません。そもそも、ここは平原。身を隠すもののない低木草地帯です。そして私の視界に入ったソレは、人の二倍はあろうかと思われるトカゲでした。
「あ…あ…っ。」
言葉になりません。私は知識で知っていた魔物を、この時初めて見ました。六足の空色のトカゲは、口から三股に別れた緑の舌をチロチロと出しています。その目がこちらを見ました。赤いその縦に割れた瞳が、狙いを定めたかのようにキュッと細められます。もう死にそうです。
「ここで待ってろ。」
ポンと頭を優しく叩かれたかと思うと、ヴォルが私をウマウマさんに乗せたままヒラリと舞い降ります。