5.俺と一緒なら【4】
宿の下に降りた時は既に支払いを済ませてあったようで、ウマウマさんも私達を待っていました。やる事が早いですね。私が感心している間に、ヴォルはウマウマさんの背に荷物をくくりつけます。
「メル。」
「あ、はい。」
当たり前のように手を差し出され、先にウマウマさんの背に乗ったヴォルに抱き上げられます。でも何か、ヴォルが変です。私と目を合わさないと言いますか…、何なのですか?
サウルクの町を出て、暫く無言でバンガム平原を行きます。ウマウマさんの足音しかしない静かな旅です。と言っても普段話しているのは私なので、私が話さなければ無言です。質問にたいしての答えか、必要な事しかヴォルは話さないです。いつもはその無言も気にならないのですけど。何となく、今のヴォルは変です。
「あの…。」
とにかく話をしてみましょう。私は決意を固めると、後ろにいるヴォルへ僅かに振り向いて声を掛けます。
「何だ。」
…決意が崩れそうです。私はヴォルに抱き止められているので、後ろを思い切り振り返る事は出来ません。表情が見えないので…いえ、見たところで無表情なのでしょうけど。とにかく言葉が固いです。どうしたと言うのでしょうか。朝は普通だったのに…。
「あ、あの…。何か、怒ってます?」
訳が分かりません。私、何か粗相をしてしまったのでしょうか。気弱になってしまいます。
「怒ってなど…。」
止まりました。えぇっ?!やっぱり私、何かしたのでしょうか?
「すまない。」
へ?一人でドキマギしていましたが、突然後ろから謝罪の言葉が聞こえました。な、何でしょう。もしかして、やっぱり私はいらなくなったとか…ですか?
「少し…考え事をしていた。」
「考え事です…かっ?」
恐る恐る振り向こうとしましたが、その動きを肩を抱き締められる形で止められました。えぇっ?!どうしたのですか?!これではまるで、う、う、う、後ろから抱かれているみたいではないですかっ?!く、首筋にヴォルの息がかかります…。
「あああああ…あのっ?」
身体が硬直して、上手く言葉も話せません。
「少し…このまま…。」
「っ?!」
ヴォルが話す度、耳の後ろから首筋に掛けて吐息がかかります。何だか分からない、ゾクゾクする電気のようなものが背中を走りますよ。わ、私は何処かおかしいのでしょうか。
その間もウマウマさんは歩みを止める事はありませんでした。自分の背中に乗った人の緊張など、ウマウマさんには関係ないのでしょうか。
どれくらいそうしていたのかは分かりませんが、突然ヴォルが私から放れます。緊張のあまり呼吸もままならなかった私ですが、ヴォルが放れてしまうと一瞬寂しく…思いませんよっ。




