≪Ⅴ≫俺と一緒なら【1】
≪Ⅴ≫俺と一緒なら
あの後、片付けを終えたヴォルと共に宿に戻りました。私は酷く恥ずかしかったですけど、何故かヴォルの肩に頭を乗せて寝ていたのです。起こして下されば良いのに…って、勝手に寝ておいてなんですけど。
「少し出てくる。夕食は宿の食堂だ。先に食べていてくれ。」
「はい。行ってらっしゃい、ヴォル。」
お仕事が終わって戻ってきた訳ではなかったのですね。何日か滞在するって言われてましたから、お仕事の合間に私の事を気に掛けてくださったのでしょう。やはり冒険者として旅をしているのですから、ギルドに登録しない訳にはいかないですものね。どんなお仕事をしているかは分かりませんが、ヴォルは強いですから何でも出来そうな気がします。
さて、私はまた記録でも続けましょう。あの湖、本当に綺麗でした。私は思い出しながら、メタリニ湖の事を書き記します。透明度や空の青が映し出されているかのような青が、瞳を閉じてもまだはっきりと思い浮かびます。と同時に、あの時の恥ずかしさを思い出してしまいました。う~、下着が透けてるって…。
暫く机に伏せていた私でしたが、いつまでもクヨクヨなんてしていられません。ヴォルは夕食を先に食べていても良いと言われていましたが、朝食も一人で食べました。ずっとヴォルと共に食事をしていたので、一人でのご飯はとても味気ないものだと気付いてしまったのです。
「村にいた時は、一人が当たり前だったのに…。」
思わず口から出てしまいました。でもこれって、私の我が儘ですよね。ヴォルはお仕事をしているのに、私が一人は嫌だからってねだるのはおかしいですね。最近見なかった過去の夢を見た事で、私の中の罪悪感が大きく目覚めてしまいました。
「もっと…一人で何でも出来るようにならなくてはなりませんね。」
誰に言うでもなく呟きます。寂しいとか、思ってはいけません。これは私の罪なのですから。
「…メル?」
机に伏せるように眠っているメル。ギルドから戻ってきてすぐ宿の主人に問い掛けたが、メルがまだ食事をとっていないとの事だった。あれから随分時間が経っている。そう思って部屋に来てみれば、書き物の途中のまま机で寝ていた。
「過去?…罪…。」
メルは考え事をそのまま書き記してしまうようだ。だがしかし、これは何だ。大きく何度も丸で囲まれた“罪”。そして頬に残る流した涙の跡。
「メルシャ。」
起きるかと思いながらも、メルの頬に触れてみた。起きない。俺は装備を解き、眠っているメルを抱き上げてベッドに移動させる。そしていつものように、自分の腕に抱き留めて眠った。




