2.メルは今のままで良い【5】
「あの…、セントラルって言葉が違いますか?」
「何故。」
あれ?逆に問い掛けられてしまいました。私、おかしな事を聞いていますか?
「…ヴォルと初めて会った時、言葉が違いました。」
「そうだな。」
何でもない風に答えるヴォルです。
「あの…、だからセントラルは言葉が違うのですか?」
「違わない。」
はい?
「俺が人と会話をしないからだ。」
言っている事が分かりません。人と会話をしなくて、誰と会話をするのでしょうか。
「あれは精霊言語だ。」
何でしょうか。ヴォルの言葉だからか、理解よりも先に納得してしまいます。でも精霊って、お話が出来るのですね。
「でも、勉強したと…ここの言葉をマスターしたとおっしゃっていたような覚えがありますけど。」
「確かだ。言葉には多少の差がある。地域によって異なる。」
あぁ、それなら分かります。高貴な人達は、私のいた村のような砕けた話し方はしないのでしょう。そう言えば、ヴォルも今より砕けた話し方をしていました。村を出てからすぐ、今と同じ様な口調になったと思いますが。これももう慣れましたけど。
「旅の間はどうしていたのですか?まさか、誰とも話さなかった訳ではないですよね。」
「このままだ。今と変わらない。」
って言う事は、この話し方がヴォルの通常なのですね。でも、余計に混乱してきます。
「では何故あの時、私に違う話し方を?」
「……。」
あ、答えたくありません?
「…女に話し掛けるのが嫌になってきていた。」
はい?だって、結婚相手を捜していたのですよね?
「女は…話し掛ければ態度を変えて媚びてくる。」
「初めは無関心を装っていても、ですか?」
「そうだ。だから酒場の男の話し方を真似てみた。」
何か、ヴォルも大変なのですね。
「精霊言語って何ですか?」
「魔法使用時に俺が使う言語だ。精霊は綺麗だが俺に媚びない。言葉に忠実だ。」
それって、人じゃないからなのではないでしょうか。媚びるって言葉は悪いですけど、ヴォルに自分の事を見てもらいたいとアピールしているだけですよね?
「ヴォルは女の人が嫌いなのですか?」
初めから女性軽視な発言が多かったですものね。不思議だったのですよ。何故自分に興味のない人を自分の妻にするのか。




