≪Ⅰ≫メルとなら構わない【1】
≪Ⅰ≫メルとなら構わない
湿地帯に入りました。ヴォルは回復が早いのか、既にウマウマさんを降りて歩いています。その方が早いとか言っていました。私は自分で歩くより、ウマウマさんに乗っている方が早いのですけれど。
この湿地帯は前にヴォルが言っていた通り、植物がとても元気に枝葉を伸ばしています。湿度も高く、何もしていなくても少し汗ばんできますよ。植物の葉陰にいるので太陽の日差しの影響を直接受ける訳ではないのに、ジワジワと滲み出してくる嫌な汗でした。でもふとヴォルを見ると、歩いているのにも関わらず全く汗をかいていませんでした。
「ヴォルは、暑くないのですか?」
「問題ない。」
チラリとこちらを振り返りますが、本当に涼しい顔をしています。私が汗をかいているのがおかしいのかと思える程でした。
「メルは暑いのか。」
「…はい。」
私がおかしいのでしょうか。質問を質問で返されてしまいましたが、本当にジットリと暑いのですよ。
「そうか。」
ヴォルはそれだけ答えると、口をつぐんでしまいました。あれ?私は何か間違ってしまいましたか?
「Kanojyo no kuukan wo …」
「ちょっと待って下さい。」
魔法を唱えようとしたヴォルに、咄嗟に
私は声をかけてしまいました。何をどうするといった具体案は全くなかったのですが、暑いと言った私の為だとすぐ魔法を使うヴォルに引け目を感じてしまったのです。
「魔法、使ってくださらなくても結構です。私、我慢しますから。」
ただでさえウマウマさんに乗って、私だけ楽をしているのです。その上魔法で気候の調節までして頂いては、足手まとい以外の何物でもないではないですか。
「メルは気にしなくても良い。俺は少しでも負担を減らしたい。」
どういう意味なのでしょう。強制的に婚約者にしてしまった負い目があるのでしょうか。
「負担だなんて、とんでもないです。私が逆にヴォルのお荷物になっている気がしてしまって…、苦しいのです。」
結局私は何も出来ないのです。料理も片付けも、勿論戦闘なんて無理ですが。俯いてしまった私の顎に、ヴォルの指先が触れました。
「え…。」
驚いて見上げた先に、ヴォルの青緑の瞳がありました。思ったより近い距離に驚きます。




