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「結婚しよう。」  作者: まひる
第十章
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8.約束は守ろう【2】

「そう言えば、ヴォルとベンダーツさんは大丈夫でしょうか。」


 一頻(ヒトシキ)りウマウマさんを撫でて安心した後、私は火山があったと思われる方向へ視線を移します。


 ですが今そこには何もなく、ただ凹凸(オウトツ)の激しい大地が続いているだけでした。


「あ…、ヴォルっ!」


 視界に映った情景に息を呑みます。


 何故ならば、そこには大きな魔物に襲われているヴォルがいたのでした。


 その大きな魔物は翼を持った蜥蜴(トカゲ)のようで、赤か黒か分からない色をしています。それだけならまだしも、その踏みつけるようにして動かす足元は結界があるのです。


「ヴォルっ!」


 私は声が届く距離でもないのに叫んでいました。


 物凄く離れている筈で…普通に見える筈のない景色なのに、何故見えたかなど気にする余裕もなかったです。


『…メル…?』


 声が聞こえた気がしました。


 何故か頭の中に響いてきたように感じたのは、間違える筈もないヴォルの声です。


「ヴォルっ!」


 再度叫びました。


『…良かった。そうか…、約束は守ろう。』


 ホッとした吐息まで聞こえてきそうな、そんな優しいヴォルの声が頭の中に響きます。


 約束?


 それが何か分からずに首を傾げたのですが、何故か私の心の中で安心が沸いてきました。


 不思議です。


 そんな事を感じていた私ですが、突然の青い光に視界を奪われました。光の弾ける方向へ目を向けますが、あまりの光量にまともに目を開けている事が出来ません。


「な…、どうしたのですか?!」


 不安のあまり、声から感情が溢れました。


 目を開けていられない程の青いが光の弾けた場所は、先程ヴォルがいた方向の筈でした。


「ヴォルっ!…ヴォルっ!…ヴォルっ!」


 何か叫んでいないと、自分の不安に押し潰されてしまいそうです。


 視界を奪われた私が感じるのは、唯一肉体に触れているウマウマさんの体温でした。


「ウマウマさん…っ!」


 思わずすがり付いてしまいます。


 ウマウマさんは迷惑だったかもですが、大人しく私の腕に締め付けられていました。


 …大人ですよね、ウマウマさん。


 そしてその現象は、体感的に物凄く長く感じられました。いつまで続くのかとか、このまま元に戻らなかったらどうしようとか無駄に色々考えてしまいます。


  ヴォル…、怖いです。不安です。…泣いてしまいそうですよ。


 無駄に自分の心臓が跳ねていました。全力疾走しているかのようです。


 もう、息が…苦しいです。


 過度な不安は、自らの自発呼吸すらも奪うのだと知りました。


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