表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「結婚しよう。」  作者: まひる
第十章
483/516

6.逃げろっ【2】

 空中にいた俺は(タイ)した防御も出来ず、とにかく両腕で顔を覆っていた。


 …生きては、いる。


 詰めていた息を吐き出すが、全身が溶けそうな程に熱かった。完全に結界を壊されたのである。十枚もの障壁を、たったの一撃でだ。


 俺は腕を下ろしながら、自身の身体を確認する。結界に守られたからか、軽い火傷程度で済んでいた。


 だが、魔力が残り(ワズ)かだ。目眩(メマイ)がする為、空中浮遊を継続出来ない。


 俺は落ちるのと大差ない速度で降り、到着する寸前に一瞬だけ落下を止めてから大地へ足をつけた。


 そして再び山を見上げたが、竜の方は火山を覗き込んだまま動かない。


 アレは本当に卵だったのだろうか。


 ベンダーツは無事だろうか。


 メル…。


 とりとめもなく溢れる思考。


 立っていられない程の疲労に、俺は崩れ落ちるようにその場に膝をついた。肩で息をしながら、身に付けていた宝石の一つを取り出す。


 まさか、ここまで苦戦するとは思っていなかった。何だ、あの魔物は。規格外だろ。


 …愚痴が出るならまだやれるな。


 俺は自分の思考に苦笑を浮かべ、そして宝石を噛み砕いた。


 ちなみに食べる為ではない。これは俺自身の魔力を込めた物であり、それを砕く事で内部に蓄積された魔力を再度己の力として吸収するのだ。


 …(シバラ)く休めば、この目眩(メマイ)(オサ)まる。


 問題は、魔力が回復しても打つ手があまりないという事だ。アレは強すぎる。


 竜へ視線を向けるが、先程と変わらず火山を覗き込んだままだった。


 余裕だな、全く。俺の魔力が回復した事くらい感付いているだろうに。人間の俺ですら、あの竜が火山に降り立ってから回復していっている事に気付いているのだ。


 さて、いつまでも休んではいられないな。完全回復されれば、また同じ事を繰り返さなくてはならない。


 俺は軽く頭を振るって、(ワズ)かに残る目眩(メマイ)を誤魔化す。立ち上がりながら確認した天の剣は、魔法で包んでいた為か刃毀(ハコボ)れ一つしていなかった。


 まだやれる。


 魔力を強制的に回復させたとは言え、俺は(ハタ)から見たら満身創痍(マンシンソウイ)だった。それでも今は休んでいる暇もなく、()して回復などを(オコナ)うゆとりもない。


 やるしかないんだ。


 俺は風の魔力を全身に(マト)った。天の剣に冷気を宿(ヤド)す。(シバラ)く休ませた為に、竜の(ウロコ)が修復してきているのだ。


 あの強さで自己修復とか、規格外にもほどがある。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ