４.この感覚は【２】
「別に構わない。その分の攻撃力は俺達が持っている。」
「…俺達、ね。まぁ、良いけどさ。」
自然と言葉にされたそれに、ベンダーツさんは必死に笑みを隠しています。
嬉しいのなら、そう言えば良いのですよ。素直でないと、ヴォルに言えた側ではないですね。
「あ、あの赤い島ですか？」
不意に聞こえた爆発音に視線を寄せられ、私は真っ赤に染まった島を発見しました。
島といってもそれの真ん中辺りにある山は赤く燃えたぎり、赤茶けた小さな大地を僅かに抱える程しか保有していません。
「何、これ。生まれたばかりの島みたいだね。」
ベンダーツさんの言うように、中央の山から溢れる赤い炎が海に触れる度に黒い大地に変わって育っていっているようでした。
「魔力があの山から溢れている。」
ヴォルにしか分からない、魔力の感覚です。
「あれ？」
火山を見ていた私は、何故かその中に一層光る赤を見つけました。
「どうした、メル。」
着陸の為に徐々に高度を落としていたヴォルでしたが、私の小さな戸惑いに気付いてしまったようです。
「あ…、いえ。気のせい、ですよ。あの火の山の中に、何かがいる訳ないですものね。」
アハハ…と乾いた笑いをして見せた私に、ヴォルとベンダーツさんの視線が集まりました。
「…まさかとは思いたいんだけどさぁ。」
「見た事のない魔物か。」
二人が目を見合わせます。
何だか、良い予感がしないのですけど。
「とにかく、馬車を下ろして拠点を作らないとなぁ。」
「承知。」
未だに空中にいる私達です。
どうやら近付くだけでは攻撃をしてこないようですが、いつまでもヴォルの魔力を削って飛んでいる訳にもいきません。
空中浮遊がどれだけの魔力を消耗させるのかは分かりませんが、この後に魔物との遭遇が待ち構えているのであれば危険です。少しでも魔力を温存しなくてはなりません。
「ここなら熔岩も来ないだろうから、安心して荷物が置けるね。」
海に程近い赤茶けた大地に着陸した私達は、ヴォルの結界に守られながらもウマウマさんを休ませます。
自由になった二頭は、それぞれが思い思いの場所で足元の僅かな草を食んでいました。
慣れない…と言うか初めての筈の空中移動にも暴れないこの子達って、本当に太い神経をしていますね。
言葉で説明を受けている私でさえ、内心ドキドキのソワソワだったのですから。
やはり足元はしっかりとしていた方が安心しますよね。
