≪Ⅹ≫期限が近かったからな【1】
「ジュドワ山脈を抜けるとマレワット湿地帯に入る。」
山を半分越えた辺りで、ヴォルが説明をしてくれます。一番の近道は縦断する事らしいのですが、私がいる為にかなり迂回をしてくれているとの事でした。すみません。寒さも山頂に近付く程強くなる魔物にも、私は全く対応出来ませんから。
「湿地帯には何がいるのですか?」
「大型の魔物は少ない。」
大型の魔物は、ですか。そうですよね、何処にでも魔物はいますよね。聞いてみて悲しくなりました。
「食料には困らない。」
「えっ?」
食べ物につられてしまいましたよ、私。だって食べ物、大切じゃないですか。
「温暖で湿度が高い土地ゆえに、植物が異常なまでに豊富だ。」
ウフフ、植物万歳です。野菜も果物も、大した加工なしに食べられるのが良いですよ。私はウマウマさんの背中で、一人にやけてしまいました。
「食べられない物もあるからな。」
「エエッ!」
ヴォルの言葉に驚きます。でも確かに、私はお店で売っている物しか知りません。本来の姿形は勿論、食べられない物の存在なんて知りませんでした。
「一人でつまみ食いはするな。」
「はい…。」
不満はあるものの、知識のない私が好きに採取したら大変だからでしょう。村にいた時、誰かが山菜狩りに出掛けて毒キノコを採って食べたとか言う事件がありました。あれは怖いですね。似た形をしていても、全くの別物って言いますから。
「メルは好き嫌いはないのか。」
「あ、はい。私、大抵の物は食べられますよ?食べる事、大好きです。」
「そうか。」
あ、少し瞳が柔らかくなりました。大丈夫です。ヴォルの作ってくれるご飯は、本当に何でも美味しいですから!
「ヴォルは好き嫌いがあるのですか?」
「……まぁな。」
「何ですか?野菜ですか?」
「…………そのうち教えてやる。」
言葉を誤魔化されましたが、そのうち教えてくれると言っていました。でも何か意外です。ヴォルにも苦手なものがあるのですね。
「魔物の気配だ。」
ムフフッと一人でにやけていたら、急に耳元でヴォルの低い声が聞こえました。そうですね、まだ山歩きの途中でした。




