9.無理はしないつもりだ【4】
ハッ。朝でした。私はいつの間にかヴォルを抱き締めるように眠っていたようです。辺りを見回して見ましたが、ウマウマさんがムシャムシャと足下の草を食べているだけでした。どうやらヴォルの意識がなくても、結界は維持されるようです。
「ヴォル?」
ソッとその額に触れました。良かったです、熱が下がっています。けれど、まだ無理は出来ないと思います。えっと、私に出来る事…ないでしょうか。立ち上がろうとして、不意に手首を掴まれました。
「…あの…。」
「何処へ行くんだ?」
ウッスラと開けられたヴォルの瞳。掠れた声。こんなに無防備なのに、やたら威圧感があるように思えるのは私の気のせいでしょうか。
「あ…えっと、何か出来ないかと思いまして…ですね?」
言い終わる頃には、私はいつの間にか再びヴォルの腕の中にいました。どうしてでしょう、私は何か出来ないかと言っただけですが。
「メルは俺の抱き枕、だろ?」
当たり前のように告げられました。そうですね、確かにそうなのですが。ん~、それで良いのでしょうか。
「あの…、ヴォル?」
「まだ休みたい。…駄目か?」
だ、駄目ではないですのですが…。何故でしょう、少しだけヴォルが可愛く見えます。甘えて…くれているのでしょうか。
私は頭をフルフル横に振ります。そしてそのまま後ろから抱き留められながら、背中から与えられるヴォルの体温に徐々に瞼が重くなってきました。
クゥ~。何かが鳴きました。そうです、私のお腹です。イヤ~、恥ずかしいですっ!どうしてこのタイミングなのですかっ?
「フッ…、腹が減ったな。」
笑われました。恥ずかしさで悶えていた私の耳元で、ヴォルの低い声が息と共に触れます。その瞬間、ゾクリと背筋を電気が走りました。び、びっくりしましたよっ。
息を呑んで硬直した私の頭を、ヴォルが優しく撫でてくれました。ゆっくり私の身体の力が抜けていきます。
「飯にするか。」
私の緊張が全て抜けきった頃、漸くヴォルが声を掛けてくれました。そうでした、私が空腹を訴えたのでしたよ。
「は、はいっ。」
ヴォルの負担にならないように、私は急いで身体を起こします。本当は、食事も私が用意出来たら良いのですが。




