表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「結婚しよう。」  作者: まひる
第九章
441/516

7.共にありたい【5】

「ほ、誉められても何も出ないですよ?」


 普段誉められ慣れていないので、私は怖々と返してみます。


「…プッ。」


 吹き出されました。でも、ベンダーツさんの笑顔も珍しいです。


 あ、そうでもなかったですね。この人は笑い始めたら止まらないのでした。それに何か手伝うと言う申し出に対し、話を逸らされた気がするのは何故でしょうか。


 私は少しだけ不満を乗せた表情をヴォルに向けました。


「メルは何かしたいのか。」


「はい…。魔物との戦いは全くダメですけど、何かお役に立ちたいのです。…ダメですか?」


 何だか、こんなに必死になっているのが悲しくなって来ました。


 何しろ特にこれといって特技がなく、大きな声で宣言出来ないのですから。


「問題ない。メルはメルのしたいようにやれば良い。俺はメルと共にあれば良い。」


 ヴォルは淡々と告げました。


 何を迷っている、と言うような言葉でした。


 したい事…ですか。


 私は自分が勝手に動くと、周りに迷惑を掛けると思って躊躇(チュウチョ)します。あれこれ考えている内にその機会を(ノガ)し、結局何も出来ずに終わるのでした。


「でも…、迷惑になったり…。」


「俺はメルと共にありたい。メルの行動で起こる事柄は全て受け入れる。先を見越して恐怖しても何も生まれない。…俺はメルを縛り付けたくはない。」


 最後、(わず)かに痛そうに(ユガ)められた瞳を見てドキリとしました。


 私がヴォルを苦しめています。


「何もしなくて良いと仰ったのはヴォルティ様です。メルシャ様は言葉通り受け止め過ぎですし、ヴォルティ様は言葉が足りな過ぎです。見事に互いが縛り付けあっていらっしゃいますよ。仲が宜しいのは結構ですが、一個人としての思考も必要ですからね。」


 溜め息をつきそうなベンダーツさんですが、言われている事は分かりました。


 私達を一番近くで見ているのですから、言われている事は間違ってはいない筈です。


「私、頑張って探します。何が出来るか分かりませんが、何もしないで(オビ)えている事がないようにします。」


 両手を拳に変え、私は意気込んで宣言しました。


「あぁ。」


「私は見守らせて頂きます。」


 二人の温かい視線を受け、気持ちだけはとても強くなった私です。


 でもここ、船の中でした。興奮していて気付かなかったですけど、まだこの時は動いていなかったんですよね。


 これから五日程かけた船旅が始まります。忘れていましたけど、大陸間の移動は非常に体力を使うものでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ