9.無理はしないつもりだ【2】
「外界との隔離魔法なのが分かっての質問か?」
「隔離?あ、魔物の世界とを隔てたと言う意味ですね。」
「そうだ。内側から力を掛ければ隔離魔法が無効になる。」
無効って事は…、魔法が消えてしまう訳ですか。それは困りますね。
「すみません。魔法が消えてしまうのは困ります。」
そうですか、触っては駄目なのですね。間違って触ってしまわないように、私はなるべくその壁から離れます。その間にヴォルが魔法を使って料理をしていました。いつもながら、手際の良い調理です。
「ヴォル、肩は大丈夫なのですか?」
「問題ない。少し動かし辛いが、直に治る。」
「あの…、薬は塗らないのですか?」
一度戦闘直後に治療したきりでした。あの時、結構痛そうでしたよ。
「…問題ない。」
今、一瞬の間がありました。これって、問題ない訳じゃないのではないですか?
「ヴォル、私に嘘は言わないのですよね?」
「……。」
無言になりました。これ、嘘はついていないけどって事ですよ。
「薬、塗りましょう。」
「今は調理中だ。」
そうきましたか。
「では、食事の後なら宜しいですね。」
「……。」
ほら、何も言えなくなりました。けれども私、大分慣れてきましたね。無表情で淡々と話すヴォルの本心って、とても分かりにくいのです。でも一対一で接していれば、嫌でも色々見えてきますよ。
「ヴォル?」
「…分かった。」
あぁ、今とても嫌々返事をされたような気がします。でも本当なら、キチンとお医者さんに診てもらいたいくらいなのですから。
そしていつものように食事を終え、ヴォルの魔法で洗い物も終了しました。私ははぐらかされる前に、ズイッとヴォルに迫ります。
「ヴォル、薬です。」
「……。」
僅かに瞳に嫌気を映しながらも、渋々頷くヴォル。私も負けていませんよ?先程の薬草だって、キチンと覚えていますから。道具袋からあの時の薬草を取り出します。あ、ヴォルの瞳が僅かに揺らぎました。覚えていたのかって感じですか?いくらなんでも覚えていますよ、物凄く苦かったですし。…あ、またアレを味わうのですね。し、仕方ないですが。




