8.すまない【5】
えっと、後はどうすれば良いのでしょう。薬草の知識はありません。名前が書いてあって用法用量が記してあれば、何とか迷いながらでも使えますが。ん~、私って旅のお供には向きませんね。
「…っ。」
その時、ヴォルの身体が僅かに動きました。もしやと思って顔を覗き込んでみると、うっすらと目が開いています。
「ヴォル?気が付きましたか?」
声を掛けてみます。こう言う時、意識の有無って大切ですよね。
「…メル…?」
「はい、私です。あの、とりあえず消毒してみたんですが…その後が分かりません。あの、指示を頂ければ…その、何とか出来ると思うのですが…。」
しどろもどろになってしまいます。だって、自信ないですから。
「…消毒…。」
ボンヤリと答えたかと思うと、ヴォルの視線がお酒に向きました。はい、すみません。飲めるお酒ですが、消毒の薬の換わりにさせて頂きました。
「薬草…あるから…。」
「や、薬草ですか?あの、すみません。どれか分からないのですが。」
幾つかある薬草を手に取ります。順番にヴォルの顔の前に出し、確認してもらいます。すみません、役にたたなくて。
「それ…、消炎…止血薬…っ。」
ヴォルが手を伸ばそうとして、息を呑んで顔を歪ませます。痛いのですねっ!?えっと…えっと、薬草は擂り潰さないといけないから…。周りを見ても何も使えそうな物がありません。し、仕方ないです。私は思い切りその葉っぱを口に入れました。うにゃ~、苦いです!でもでもっ。
涙目になりながらも、何とか薬草をペースト状にまで咀嚼しました。ベェッて自分の掌に出して、恐る恐るヴォルの傷口に塗ります。
「塗りますからね?少し我慢して下さいね?」
ペタペタと薬草を塗り広げ、布を細く裂いて肩に巻き付けます。こ、こんなので良いのでしょうか。ヴォルはとても静かです。痛くない…訳ないですよね。顔を覗き込んで分かります。額に汗を浮かべています。我慢しているんですよね。
「えっと、こんなので良いのでしょうか。」
「…っ、すまない。助かった、メル。」
お、お礼を言われてしまいました。きょ、恐縮です。自分では何も出来なかったのにです。




